レンズの公式と作図:凸レンズと凹レンズ、実像と虚像
虫めがねをのぞくと文字が大きく見え、遠ざけると急に上下が逆さまになります。同じレンズでも、物体の位置によって見え方がまるで変わる。
分かれ目は焦点の内側か外側かです。位置と像の関係は 本の式にまとまり、作図でも確かめられる。
以下ではレンズが光を曲げる仕組みから始めて、作図に使う 本の光線、写像公式と符号の約束、物体の位置による像の変化、鏡の場合までを扱います。計算例には、像の位置と倍率を出す手順を置いた。
レンズが光を集める仕組み
レンズが光を曲げているのは屈折です。ガラスに入るときと出るときの 回、光は向きを変える。
凸レンズは中心が厚く、周辺が薄い。光軸から遠いところを通る光ほど、面が斜めになるので大きく曲げられる。
その結果、光軸に平行に入った光がすべて 点に集まる。中心に近い光はあまり曲がらず、遠い光は強く曲がるという差が、ちょうど釣り合う形になっている。
凹レンズは逆で、中心が薄く周辺が厚い。平行に入った光は広がる向きへ曲げられます。
焦点と焦点距離
光軸に平行な光が集まる点を焦点、レンズの中心から焦点までの距離を焦点距離といいます。記号は 。
凸レンズでは、実際に光が集まる点が焦点になる。紙を置けば、そこに小さな明るい点ができる。
凹レンズでは光が広がるので、集まる点はありません。広がった光を逆にたどると 点で交わり、そこを焦点とする。
焦点はレンズの両側に つずつあります。どちらの向きから光を入れても、焦点距離は同じ。
作図に使う 3 本の光線
像の位置は作図で求められる。物体の先端から出る光のうち、進み方がわかっている 本を選ぶ。
光軸に平行に入った光は、反対側の焦点を通る
レンズの中心を通る光は、そのまままっすぐ進む
手前の焦点を通ってきた光は、光軸に平行になって出る
本のうち 本を描けば、交点が像の位置になる。 本目は検算に使う。
中心を通る光がまっすぐ進むのは、その部分が薄い平行な板に近いためです。厚みがあれば少しずれますが、薄いレンズでは無視できる。

図では物体を の位置に置いています。像も反対側の にでき、大きさは物体と同じ。
実像と虚像
光が実際に集まってできる像を実像といいます。その位置にスクリーンを置けば、像が映る。
図の像は実像で、上下が逆さまになっている。左右も逆になるので、点対称に反転した形。
一方、光が集まらずに、逆にたどった先で交わって見える像を虚像といいます。スクリーンには映らず、レンズをのぞいたときにだけ見える。
虫めがねで見る拡大された文字が虚像です。紙を置いても、そこには何も映らない。
光が実際に集まる。スクリーンに映る。凸レンズでは倒立し、レンズの反対側にできる
光は集まらず、逆にたどった先で交わる。スクリーンに映らない。正立で、物体と同じ側にできる
写像公式
物体からレンズまでの距離を 、レンズから像までの距離を 、焦点距離を とします。 つの間には次の関係が成り立つ。
ドイツ語版 Wikipedia のレンズの式の項目も、物体距離 と像距離 と焦点距離 で同じ形の式を挙げている。
符号の約束を決めておく必要がある。実像なら 、虚像なら 。凸レンズは 、凹レンズは とする。
この約束のおかげで、場合分けをせずに計算できます。 の符号を見れば、実像か虚像かがそのまま読める。
実像。レンズの反対側にでき、スクリーンに映る。凸レンズで の場合にあたる
虚像。物体と同じ側にでき、レンズをのぞくと見える。凸レンズで 、または凹レンズの場合
倍率
像の大きさと物体の大きさの比を倍率といいます。距離の比で書ける。
像までの距離が物体までの距離より長ければ拡大、短ければ縮小になる。距離の比だけで決まるところが使いやすい。
作図の中心光線から導けます。物体と像は、レンズの中心を頂点とする相似な三角形の底辺にあたる。
物体の位置で像がどう変わる
凸レンズでは、物体の位置によって 通りに分かれる。境目になるのは焦点と、その 倍の位置。
| 物体の位置 | 像の種類 | 大きさ |
|---|---|---|
| 倒立実像 | 縮む | |
| 倒立実像 | 同じ | |
| 倒立実像 | 拡大 | |
| 像はできない | なし | |
| 正立虚像 | 拡大 |
のとき、レンズを出た光は平行になる。どこまで行っても交わらないので、像ができない。
物体を焦点に近づけていくと、像はどんどん遠くへ逃げていく。焦点を越えた瞬間に、反対側へ回り込んで虚像に変わる。
虫めがねで文字を見ながらレンズを遠ざけると、ある位置で像がぼやけて消え、そのあと逆さまになる。この切り替わりが焦点の位置です。
図の点線が、目が光をたどる向きです。実際の光は交わっていないのに、その先で交わったように見える。
凹レンズが作る像
凹レンズでは、物体をどこに置いても像の種類は変わりません。いつでも正立の縮んだ虚像になる。
理由は光の広がり方にあります。凹レンズを出た光は必ず発散するので、実際に交わることがない。
写像公式でも確かめられる。 なので は必ず負になり、 が出る。
。物体が焦点の外なら倒立実像、内なら正立虚像。位置で像が変わる
。物体の位置によらず、いつでも正立の縮んだ虚像になる
近視の眼鏡に凹レンズが使われるのは、この発散を利用するためです。網膜の手前で結んでしまう像を、奥へ押しやる。
虫めがねとカメラ
同じ凸レンズでも、使い方で役割が変わる。虫めがねは物体を焦点の内側に置き、拡大した虚像を見る道具。
カメラは物体を焦点よりずっと遠くに置きます。 が大きいので は に近づき、小さな倒立実像がセンサーの上にできる。
ピント合わせは の調整です。物体が近づけば像は遠ざかるので、レンズを前へ繰り出す。
プロジェクターは物体を焦点のすぐ外側に置く。 なので、拡大された倒立実像がスクリーンに映る。フィルムを逆さに入れておく理由がここにあります。
焦点距離 cm の凸レンズの前 cm のところに物体を置きました。像はどうなりますか。
- 倒立実像ができる
- 正立虚像ができる
- 像はできない
- 倒立虚像ができる
平面鏡
平面鏡にできる像は、鏡の奥に物体と同じ距離だけ離れた位置にできます。大きさは物体と同じ。
光は鏡の裏へは進んでいません。反射した光を逆にたどると鏡の奥で交わるので、虚像になる。
鏡に映った自分が左右反転して見えるのは、上下と前後の扱いが違うから。実際に入れ替わっているのは前後です。
球面鏡
鏡の面を球の一部にすると、光を集めたり広げたりできる。へこんだ側を使うものが凹面鏡、ふくらんだ側が凸面鏡。
球の半径を とすると、焦点距離はその半分になる。
OpenStax の球面鏡の節も、近軸近似のもとで焦点距離が曲率半径の半分になるとしています。
凹面鏡は光を集めるので、凸レンズと同じはたらきをする。反射望遠鏡の主鏡や、化粧用の拡大鏡がこれ。
凸面鏡は光を広げ、いつでも縮んだ正立の虚像を作る。カーブミラーや自動車のサイドミラーに使われるのは、広い範囲が一度に見えるからです。
鏡の写像公式
球面鏡でも、レンズとまったく同じ形の式が使えます。
符号の約束も同じ考え方。凹面鏡は 、凸面鏡は とし、鏡の裏側にできる虚像では になる。
覚える式が増えないところが利点です。レンズで身につけた手順が、そのまま鏡でも通じる。
曲率半径 cm の凹面鏡の焦点距離はいくらですか。
- cm
- cm
- cm
- cm
球面鏡の焦点距離は曲率半径の半分になります。 cm。
半径を測れば焦点距離が出る。レンズのように、あらかじめ焦点を探す必要はありません。
眼鏡と近視・遠視
目はレンズと同じ仕組みで、網膜の上に倒立実像を作る。ピント合わせは水晶体の厚みを変えて行う。
近視では像が網膜の手前で結んでしまう。凹レンズで光を少し広げてやると、結ぶ位置が奥へ移る。
遠視では像が網膜の奥に結ぼうとする。凸レンズで光を集めてやれば、手前へ引き戻せます。
眼鏡の度数は焦点距離の逆数で表され、単位はジオプトリー。 m の凹レンズなら ジオプトリーになります。
計算例:凸レンズが作る実像
焦点距離 cm の凸レンズの前 cm に物体を置く。像の位置と倍率を求めます。
写像公式に代入する。
したがって cm。正の値なので実像で、レンズの反対側 cm の位置にできます。
倍率は距離の比で出る。
物体の半分の大きさの倒立実像になりました。 なので、表の 行目と合っています。
計算例:虫めがねが作る虚像
同じ焦点距離 cm のレンズの前 cm に物体を置く。今度は焦点の内側です。
cm となり、符号が負になりました。虚像で、物体と同じ側の cm の位置にできる。
倍に拡大された正立の虚像です。虫めがねとして使うときの見え方が、この計算で出てくる。
計算例:凹レンズが作る像
焦点距離 cm の凹レンズの前 cm に物体を置きます。凹レンズなので cm。
cm で虚像。倍率は で、縮んだ正立像になります。
物体をどこに置いても は負のまま。凹レンズが実像を作らないことが、式からも読める。
計算例:凹面鏡が作る像
曲率半径 cm の凹面鏡の前 cm に物体を置きます。焦点距離は半径の半分。
cm となり、鏡の前 cm に倒立実像ができます。倍率は 。
物体が曲率中心 の外側にあるので、像は と のあいだにできる。作図で描いた位置とも合っています。
計算例:焦点距離を求める
物体をレンズの前 cm に置いたところ、反対側 cm の位置に実像ができた。焦点距離を求めます。
写像公式をそのまま使う。
したがって cm です。実験でレンズの焦点距離を測るときは、この手順を使う。
物体と像の距離を入れ替えても同じ焦点距離が出ます。 と が式の中で対等だから。
よくある誤り
作図と計算は同じことを 通りで見ているだけです。答えが合わないときは、どちらかで符号をとり違えている。












a=6<f=10 なので、物体は焦点の内側にあります。写像公式から b は負になり、正立の拡大された虚像ができます。