円運動する音源のドップラー効果:最も高く聞こえる瞬間
ひもの先にブザーをつけて振り回すと、音の高さが周期的に上下します。いちばん高く聞こえるのは、音源が自分にいちばん近づいた瞬間ではない。
高くなるのは、音源が自分へ真っすぐ向かって動いている瞬間です。円の上では、最も近い点から 4 分の 1 周ずれた位置にあたる。
近い点と遠い点では、音の高さはもとに戻ります。そこでは音源が視線を横切るだけで、距離が縮みも伸びもしないため。
効くのは視線方向の速度だけ
ドップラー効果を起こすのは、音源と観測者を結ぶ線に沿った速度成分だけです[3]。この成分を視線速度といいます。
線を横切る向きの成分は、距離を変えない。波長は縮まず、聞こえる高さも変わらない。
だから「速く動いている」ことと「高く聞こえる」ことは別です。向きしだいで、同じ速さでも効き方が変わる。
速度を 2 つに分ける
音源の速さを 、速度と視線のなす角を とします。視線方向の成分は 。

赤い成分だけがドップラー効果を作る。青い成分は距離を変えないので、音の高さには効かない。
なら で、まっすぐ近づく場合の式に戻る。 なら で、効果は消える。
音源が動くときの式
音源が観測者へ向かって速さ で動くとき、観測される振動数は次のようになります[1]。
が音速、 が音源の出す振動数。音源が 1 周期のあいだに だけ進むので、波長がそのぶん縮むという導出です[2]。
円運動では、この が時間とともに変わる。 を入れるだけ。
円のどこで最大になるか
観測者が円から十分に離れているとします。視線の向きは、音源がどこにいてもほぼ同じ[1]。
このとき速度が視線と平行になるのは、円の 2 か所だけです。観測者から見て、円の左右の端にあたる点。
矢印が速度です。観測者のほうを向いたときに数値が最大になり、反対を向いたときに最小になる。
矢印が視線と直交する瞬間、つまり音源が手前や奥にいるときは、 Hz に戻っている。
いちばん近い点では変わらない
近い点で最大になりそうに感じます。実際にはそこで になり、視線速度は 。
距離がいちばん小さい場所と、距離の変わり方がいちばん大きい場所は違う。効くのは後者のほう。
ドップラー効果が見ているのは距離そのものではなく、距離が 1 秒あたりどれだけ変わるかです。
最も近い点では距離が極小になっており、そこでの変化率はちょうど になる。
例:ブザーを振り回す
、速さ 、音速 とします。
最大になるのは のとき。
最小になるのは のとき。
Hz と Hz のあいだを行き来する。幅は Hz です。
例:円の半径と周期
半径 で速さ なら、1 周にかかる時間は次のとおり。
音の高さが上下する周期も 秒です。最大から最小までは、その半分の 秒。
半径を 倍の にして周期を保つと、速さは になる。 Hz、 Hz と幅が広がる。
最大と最小から速さが出る
2 つの式の比をとると が消えます。
音源の振動数を知らなくても、聞こえた 2 つの値だけで速さが決まる形です。
について解くと次のようになる。
例:比から速さを出す
、 が測れたとします。
もとの値に戻った。 は と の相加平均ではなく、 に近い値になります。
実際 で、 Hz とほぼ一致する。
振動数の時間変化
は、時間について正弦の形で変わる。円運動の位相をそのまま受け継ぐため。
観測される振動数のグラフは、正弦曲線をわずかに歪ませた形になる。分母に がいるので、上へ振れる側のほうが大きく伸びる。
Hz から上へ Hz、下へ Hz。上下が対称にならないのは、分母が動く形だからです。
高校の問題では、この非対称まで問われることは多くありません。最大値と最小値を別々に出せば足りる。
例:うなりで測る
同じ の音叉を手もとに置き、振り回すブザーの音と重ねます。
うなりの回数は、2 つの振動数の差です。最大のとき 回、最小のとき 回。
音源が手前と奥を通る瞬間には、差が になってうなりが消える。1 周のあいだに、うなりが 2 回止まる。
観測者が円の中心にいると
中心に立つと、音源との距離はいつでも半径のままです。距離が変わらないので、視線速度は常に 。
視線速度が正弦の形で変わり、音の高さが周期的に上下する
距離が変わらないので視線速度はいつも 。高さはもとのまま
速さは のままなのに、聞こえ方が変わりません。ドップラー効果が速さそのものを見ていない証拠です。
遠方という条件
円の左右の端で最大と最小になるのは、観測者が十分に遠いときの話です[1]。
近くで聞くと、視線の向きが音源の位置ごとに変わる。最大になる点は円の端から少しずれ、グラフの形も崩れる。
高校の問題では、この条件がたいてい文中で与えられます。円の半径に比べて距離が十分大きい、という但し書きがそれ。
星の視線速度も同じ形
惑星を連れた星は、共通の重心のまわりを小さく回ります。地球から見ると、星の視線速度が周期的に変わる[3]。
観測されるのは光の波長のずれですが、値が上下する仕組みは振り回すブザーと変わりません。
曲線が最大になるのは星が最も速く遠ざかるとき、最小になるのは最も速く近づくとき。ゼロを横切るのは、動きが視線と直交する瞬間です[3]。
軌道を真上から見下ろす向きだと、視線速度はどの位置でも になる。円の中心で聞く場合と同じ状況[3]。

音の高さの上下と、光の波長のずれの上下。測っているものは違っても、曲線の形は同じです。
仕組みが同じかどうかを、数値で確かめます。
の音源が、速さ で円運動しています。音速を とすると、遠くの観測者が聞く最も高い振動数はいくらですか。
位置と高さの対応も確かめます。
円運動する音源の音が、観測者にとってもとの振動数と同じに聞こえるのはどの位置ですか。
- 観測者にいちばん近い位置と、いちばん速い位置
- 観測者にいちばん近い位置と、いちばん遠い位置
- 円のどこにいても同じにはならない
近い位置と遠い位置では、速度が視線と直交します。視線速度が になるので、 に戻ります。速さは円上のどこでも同じなので、いちばん速い位置というものはありません。
まちがえやすい点
距離ではなく、距離の変わり方を見る。この置きかえができれば、円運動でも軌道運動でも同じ 1 本の式で片づきます。











最も高くなるのは音源が観測者へ真っすぐ向かう瞬間で、400×340−34340=400×306340=444 Hz です。440 Hz は 400×340374 と、観測者が動く場合の式を当ててしまった値になります。