波動の入試問題をわかりやすく解説(手が止まる型を崩す)
波動の入試問題で手が止まるのは、公式を忘れたときではない。どの公式を、どの向きで当てるかが決まらないときです。
動く反射板は観測者と音源を兼ねる。ガラス板は距離ではなく光路長を変える。定常波の速さが最大になるのは、弦がまっすぐになった瞬間。
こうした一手を含む問題を 10 問並べます。音速は 、重力加速度は とする。
問題 1:反射板が近づいてくる
振動数 の音源が静止しています。その正面から、平らな反射板が音源へ向かって一定の速さ で近づいてくる。
音源の位置で、音源が直接出す音と反射板から返ってくる音を重ねたところ、1 秒間に 回のうなりが聞こえました。 を求めなさい。

解答 1
反射板をまず観測者として扱う。音源へ速さ で近づくので、受ける振動数は次のとおり[1]。
次に反射板を音源として扱う。 の音を出しながら、もとの音源へ速さ で近づきます。
うなりの回数は と の差です。
数値を入れる。 から 、つまり 。
確かめると Hz、 Hz。差は 回で合っています。
問題 2:最接近の瞬間に出した音
振動数 の音源が、まっすぐな道を で走っています。道から離れた点 P に観測者がいる。
音源が P に最も近づいた瞬間に出した音は、P ではいくらの振動数で聞こえますか。また、音源から P を見る向きが進行方向と をなす瞬間に出した音はどうなりますか。
解答 2
最も近づいた瞬間、音源の速度は P への視線と直交している。視線方向の速度成分は 。
もとの振動数のままです。距離が最小になる点と、距離の変化が最大になる点は別のところにある[1]。
の瞬間は、視線方向の成分が 。
問われているのが「その瞬間に出した音」なのか「その瞬間に聞こえた音」なのかで、答えは変わります。後者なら、もっと前に出た音が届いているので Hz より高い。
問題 3:スリットの片方にガラス板
波長 の光を、間隔 の 2 つのスリットに当てます。スクリーンまでの距離は 。
片方のスリットの直後に、屈折率 、厚さ のガラス板を置きました。縞の間隔と、中央の明線が動く距離を求めなさい。

解答 3
縞の間隔は、ガラス板がなくても変わらない[2]。
です。ガラス板が変えるのは、経路の長さではなく光路長のほう。
厚さ のガラスの中では、真空中に直すと の距離を進んだことになります。もともとあった を引くと、増えた光路長は 。
これが波長の何個ぶんかを見ます。 個。
縞 本ぶんずれるので、 動く。ガラスを置いた側へ寄る。
問題 4:くさびを液体で満たす
2 枚の平面ガラスの一端に薄い紙をはさみ、くさび形の空気層を作りました。真上から波長 の光を当てると、等間隔の縞が おきに見えます。
このすきまを屈折率 の液体で満たすと、縞の間隔はいくらになりますか。
解答 4
くさびの傾きを とすると、位置 での層の厚さは です。
真上から見た明暗は、往復の光路差と、下側の反射で起きる位相の反転で決まります。厚さが 増えるごとに 1 本。
液体を入れると、層の中の波長が に縮む。式の をそれに替えるだけ。
縞が細かくなりました。傾きも波長も変えていないのに間隔が変わるのは、層の中の波長が縮んだためです。
問題 5:回折格子に斜めから当てる
あたり 本の回折格子に、波長 の光を、格子面の法線から 傾けて当てます。
次の明線が現れる向きを、法線から測って求めなさい。垂直に当てた場合とも比べなさい。
解答 5
格子定数は 。
隣り合うすきまを通る 2 本の光は、入射側でも出射側でも経路差を持ちます。合わせると 。
を使う。
では で 。 では で 。
垂直に当てれば となり、 の左右対称です。斜めに当てると対称性が崩れ、片側に寄る。
問題 6:2 枚目を動かす
焦点距離 の凸レンズの 手前に物体を置きます。その後方に、焦点距離 の凸レンズを置く。
1 枚目が作る像の位置と倍率を求め、2 枚目を 1 枚目から何 cm より離せば最後の像が実像になるかを答えなさい。さらに 離したときの全体の倍率を求めなさい。
解答 6
1 枚目に写像公式を当てる。
倍率は 倍で、像は倒立。この像が 2 枚目にとっての物体になります。
2 枚目までの距離を とすると、2 枚目から見た物体距離は 。実像ができるのは、これが焦点距離より大きいとき。
ちょうどでは、出ていく光が平行になって像は無限遠へ飛ぶ。
なら物体距離は 。
倍なので、全体は 倍。倒立が 2 回くり返されるので、最後の像は正立になります。
問題 7:水面を下げながら共鳴させる
細長いガラス管を鉛直に立て、水を注いで水面の高さを変えられるようにしました。管口で の音叉を鳴らしながら水面を下げていきます。
管口から水面までが と のときに強く共鳴した。音速と開口端補正を求めなさい。
解答 7
水面が閉端、管口が開端の閉管です。連続する 2 回の共鳴の間隔が半波長にあたる[4]。
音速は 。
開口端補正を とすると、第 1 共鳴では が成り立ちます。
第 2 共鳴でも確かめられます。 で、 と一致する。
差をとると が消えるので、音速だけなら補正を知らなくても出せます。この順序が大事なところ。
問題 8:媒質がいちばん速く動く瞬間
弦に定常波が立ち、腹の振幅が 、周期が でした。
媒質の速さが最大になる場所と時刻、そのときの速さを求めなさい。
解答 8
定常波を式に書く。 が腹の振幅です。
媒質の速度は、 で微分して得られる。
場所については のところ、つまり腹です。節では時刻によらず 。
時刻については の瞬間。そのとき なので、弦全体がまっすぐになっています。
速さの最大値は次のとおり。
変位が最大の瞬間は速さ 、変位が の瞬間に速さが最大。単振動と同じ関係です。
問題 9:ファイバーに入る角度
コアの屈折率が 、クラッドの屈折率が の光ファイバーがあります。空気中から端面に光を入れる。
端面の法線から測った入射角が何度以下なら、光はコアの中を全反射でたどり続けますか。
解答 9
コアとクラッドの境界での臨界角を とする[3]。
コアの中で光がファイバーの軸となす角を とすると、境界へ当たる角は です。全反射の条件は 、つまり 。
端面での屈折に戻る。空気からコアへ入るので 。
です。この角度の範囲を、まとめて で書くこともできます。
同じ値になりました。コアとクラッドの差が小さいほど、受け入れられる角度は狭くなる。
問題 10:逃げ水が見える角度
よく晴れた日、地面の近くの空気が熱せられて屈折率が小さくなっています。上空の屈折率を 、地表のすぐ上を とする。
上空から地面へ向かう光が、途中で向きを変えて上へ戻るのは、光線が水平から何度以内のときですか。

解答 10
空気を水平な薄い層に分け、境界ごとにスネルの法則を当てます。鉛直からの角を とすると、どの境界でも次が成り立つ。
下へ進むほど が小さくなるので、 は大きくなる。 が に届いたところで光線は水平になり、そこから上へ戻る。
その条件を書く。
です。鉛直から測って ということは、水平から 。
これより急な角度で下りてくる光は、地面に当たって終わる。戻ってこられるのは、ほとんど水平に近い光だけ。
だから逃げ水は足もとには現れず、遠くの路面にだけ見えます。角度の条件が、見える距離を決めている。
まちがえやすい点
10 問に共通しているのは、公式そのものではなく当て方です。誰が観測者か、何が変わったのか、どの量を差でとるのか。ここが決まれば、あとは代入で終わります。












