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縦波のグラフ - 密になるのは変位が 0 の場所

縦波を横波のように描いたグラフで、いちばん密なのは山でも谷でもありません。変位が で、グラフが右下がりになっている点。

そこでは左側の媒質が右へ、右側の媒質が左へ寄っています。両側から集まるので、そこだけ詰まる[2]。

山と谷、つまり変位がいちばん大きい場所では、密度はもとのまま。まわりの媒質がそろって同じ向きへずれているだけで、詰まりもゆるみもしません。

縦波を横波として描く

縦波では、媒質が波の進む向きと同じ向きに振動する。そのまま描くと点が並ぶだけで、形が読めない。

そこで、右向きのずれを上、左向きのずれを下として描き直します。見た目は横波になるが、中身は縦波のまま。

上の点の列を見ていると、混み合う場所が右へ移っていく。下のグラフでその場所を探すと、いつも右下がりの零点。

点の 1 つ 1 つは、その場で左右に振れているだけ。動いているのは疎密のほう。

密になる場所

変位を とし、右向きを正とします。ある点 で 、かつグラフが右下がりだとする。

より左では なので、媒質は右へずれている。つまり へ近づいている。

より右では なので、媒質は左へずれる。こちらも へ近づく。

両側から寄ってくるので、 のまわりが最も詰まる[2]。ここが密。

疎になる場所

右上がりの零点では、話がそっくり裏返ります。左側の媒質が左へ、右側が右へ離れていく。

まわりが遠ざかるので、そこだけすいてしまう。これが疎。

山と谷では密度が変わらない

変位が最大の点では、そのまわりの媒質もほぼ同じだけずれています。全体が平行移動しているだけ。

間隔が変わらないので、密度ももとのまま[1]。いちばん大きく動いている場所が、いちばん変化のない場所になる。

密度の変化を決めるのは変位そのものではなく、となりとの変位の差です。

グラフでいえば傾き。傾きが急に負なら密、急に正なら疎、 なら変化なし。

例:グラフから疎密を読む

の形のグラフを考えます。 から までを見ます。

は右上がりの零点なので疎。 は右下がりの零点で密。

は山、 は谷なので、どちらも密度は変わりません。

疎と密は半波長ごとに交互に並ぶ。疎から次の疎までが 1 波長。

4 分の 1 波長ずれる

変位が最大になる場所と、密度が最大になる場所は だけ離れています[1]。

位相でいえば のずれ。変位が正弦なら、密度の変化は余弦の形になる[2]。

圧力も同じずれ方をする

密になれば圧力は上がり、疎になれば下がる。密度変化と圧力変化は同じ位相[4]。

だから圧力の変化も、変位から ずれます[1]。変位の節が圧力の腹、変位の腹が圧力の節。

グラフを 2 段に並べると、山の位置が横に ずれているのが見える。

問題文が「変位のグラフ」と書いているか「圧力のグラフ」と書いているかで、読み方がまるで変わる。まずそこを確かめる。

媒質はどちらへ動くか

密の点では、媒質は波の進む向きへ最も速く動いています[3]。疎の点では、逆向きに最も速い。

進む向きへ押し込むから密になる、と見ると自然です。押しのけられた先が、次の瞬間の密になる。

例:媒質が動く向きを読む

右へ進む波のグラフで、ある点の媒質がどちらへ動くかを知りたいとします。

グラフをほんの少しだけ右へずらし、その点の値が上がるか下がるかを見ます。上がるなら媒質は右へ、下がるなら左へ動く。

右下がりの零点では、少し右へずらすと値が上がる。だから媒質は右向き、つまり波の進む向きへ動いている。

式で確かめる

正弦波の変位を式に書きます。右へ進む波なら次の形。

密度の変化を決めるのは傾きなので、 で微分した量を見ます。

傾きが最も負になるのは、余弦が になるところ。そのとき正弦は なので、変位も です。

グラフで読んだ結論と、式から出た結論が一致しました。密は「変位 かつ傾きが最も負」の点。

例:疎密の間隔を出す

振動数 の音を、音速 の空気の中で考えます。

密から次の密までが 、密から隣の疎までがその半分の 。

変位が最大の点から最も密な点までは、さらにその半分の になります。これが のずれ。

圧力の振幅と変位の振幅

圧力の変化の大きさは、変位の振幅だけでは決まりません。振動数と媒質の性質も効きます[2]。

が空気の密度、 が音速、 が角振動数、 が変位の振幅。 が入っているので、高い音ほど同じ変位で強い圧力になる。

例:会話の音の圧力

、変位の振幅 の音を考えます。空気の密度は 。

を入れます。

大気圧 の 万分の ほど。空気の分子は原子の大きさの数十倍しか動いていません。

それでも耳はこの差を拾う。聞こえているのは、この の上下です。

例:振動数だけ 2 倍にする

同じ変位の振幅のまま にすると、 が 2 倍になります。

圧力の振幅も 2 倍の 。高い音のほうが、同じ揺れ幅でも強く聞こえる理由がここにある。

逆にいえば、低い音を同じ強さで出すには、空気を大きく動かす必要があります。低音用のスピーカーが大きいのはそのため。

定常波では節と腹が入れかわる

気柱の中では、行きの波と返りの波が重なって定常波ができる。ここでも変位と圧力のずれが効く。

変位の節

媒質が動かない場所。両側から押し合うので、圧力の変化はいちばん大きい

変位の腹

媒質が最も大きく動く場所。まわりが同じだけずれるので、圧力は変わらない

閉じた端は壁があるので、媒質が動けません。だから変位の節であり、同時に圧力の腹になります。

開いた端は外の空気とつながっているので、圧力が大気圧から変われない。だから圧力の節であり、変位の腹になります。

例:閉管の圧力分布

長さ の閉管の基本振動を考えます。閉端が変位の節、開端が変位の腹。

管の長さは にあたるので、 です。

圧力で見ると、閉端が腹で開端が節。変位の図をそのまま裏返した形になります。

耳で聞く音は圧力の変化なので、閉端に近いほど大きく響く。管の底に耳を当てたくなるのは、理にかなっています。

例:開管の圧力分布

両端が開いた管では、どちらの端も変位の腹になります。基本振動では管の中央が変位の節。

管の長さは にあたるので、 です。

圧力で見ると、両端が節で中央が腹。閉管とちょうど逆の形になります。

管の外へ音が漏れる強さは、端での変位の大きさで決まる。開管が閉管より大きく鳴るのは、両端が腹だからです。

右へ進む縦波の変位グラフで、ある点が右上がりの零点でした。この点のようすとして正しいものはどれですか。

  • 最も密で、媒質は右へ動いている
  • 最も疎で、媒質は左へ動いている
  • 密度は変わらず、媒質は止まっている
__RESULT__

右上がりの零点では、左の媒質が左へ、右の媒質が右へ離れるので最も疎になります。密の点で媒質が波の進む向きへ動くので、疎の点では逆向き。密度が変わらないのは山と谷のほうです。

定常波でも確かめます。

気柱の中の定常波で、変位の節にあたる場所はどうなっていますか。

  • 圧力の節でもある
  • 圧力の腹になる
  • 圧力は場所によらず一定
__RESULT__

変位の節では媒質が動かず、両側から押し合うので圧力の変化が最も大きくなります。変位と圧力は ずれるので、一方の節がもう一方の腹になります。

つまずきやすいところ

グラフの山がいちばん密だと考える。山は変位が最大の場所で、密度は変わりません。
零点はどこも同じだと思う。右下がりなら密、右上がりなら疎で、逆になります。
変位のグラフと圧力のグラフを見分けない。 ずれているので、読み方が変わります。
閉管の閉端を圧力の節と考える。壁があるので変位の節、つまり圧力の腹です。
疎から次の疎までを半波長と数える。1 波長です。疎と密の間隔が半波長になります。
密の点で媒質が止まっていると思う。そこがいちばん速く動いている場所です。

変位そのものではなく、となりとの差を見る。グラフの傾きだけを追えば、疎密も圧力も気柱の共鳴も、同じ 1 枚の図から読めます。

参考文献

Sound Waves. University Physics Volume 1, OpenStax.
Displacement and Pressure in a Sound Wave. Andrew Duffy, Boston University.
Phase Relationships for Plane Waves. Daniel A. Russell, Pennsylvania State University.
*Schallwellen und die Schallgeschwindigkeit in verschiedenen Medien*. Lernplattform Physik, Universität Göttingen.
縦波を横波のように描いたグラフで、いちばん密なのは山でも谷でもありません。変位が 0 で右下がりになっている点。そこでは左の媒質が右へ、右の媒質が左へ寄るので、両側から集まって詰まる。右上がりの零点は逆に疎になり、山と谷では密度が変わりません。効いているのは変位そのものではなく、となりとの差、つまりグラフの傾きです。密度と圧力の変化は変位から $\lambda/4$ ずれるので、変位の節が圧力の腹になる。閉管の閉端が変位の節で圧力の腹、開管の両端が変位の腹で圧力の節という対応も、ここから出ます。$\Delta p = \rho v \omega s$ を使うと、会話の音でも空気は $10^{-8}$ m しか動いていないと分かる。