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音色と倍音の合成〜ピアノとバイオリンで同じドが違って聞こえる

ピアノとバイオリンで同じ高さの音を出すと、振動数はまったく同じです。それでも、目をつぶっていても聞き分けられる。

違うのは 1 周期のあいだの波の形です。形を決めているのは、基本の振動に混ざる倍音の割合[3]

倍音は基本振動数の整数倍だけが並びます。。どれを強く含むかで、同じ高さのまま音色だけが変わる。

高さと大きさと音色

音の三要素は、高さと大きさと音色です。高さは振動数、大きさは振幅で決まります。

残った音色だけが、1 つの数では表せない。1 周期ぶんの波形そのものが音色にあたる[3]

波形は無数にありますが、周期が同じなら決まった作り方があります。基本振動と倍音を足し合わせる、という作り方[1]

足しても周期は変わらない

振動数 の波に、 の波を足す。 の波は 1 周期のあいだにちょうど 2 回ふるえるので、 ごとに元の位置へ戻る。

でも でも同じです。整数倍だから、 ごとに全員がそろって元へ戻る[1]

だから何本足しても、合成波の周期は のまま。高さは変わらず、形だけが変わる。

上の細い線が 1 本ずつの倍音、下の太い線が合成した波です。本数が増えても、山が現れる間隔は変わりません。

例:基本振動 220 Hz

の音を考える。倍音は と並ぶ。

は 1 オクターブ上、 はさらに完全 5 度上にあたります。音階の並びが、整数倍から出てきている。

どれをどれだけ含むかは楽器しだいです。 が最も強い楽器も、 のほうが強い楽器もある。

聞こえる高さを決めるのは、いちばん強い成分ではなく周期のほうです[1]

波形が変わるだけで別の音になる

3 本とも周期は同じです。基本波だけの音は柔らかく、角ばった波ほど硬く聞こえます。

弦と開管はすべての倍音

両端が固定された弦では、 を満たす波が立ちます。振動数は 倍、 倍、 倍と並ぶ。

両端が開いた管も同じです。どちらも整数倍がすべてそろう[2]

閉管は奇数倍音だけ

片方が閉じた管では、閉端が節、開端が腹になります。この形に収まるのは のときだけ。

振動数は 倍、 倍、 倍だけになります[2]。偶数倍が抜け落ちる。

閉端では媒質が動けないので、そこは必ず節。開端は自由に動けるので腹になります。

この境界の条件が、入れる波の形をふるいにかける。だから偶数倍が消える。

例:同じ高さの開管と閉管

音速を とします。長さ の開管の基本振動数を出す。

倍音は です。

長さ の閉管でも基本振動数は同じ になります。

ただし倍音は 。同じ高さでも並びが違うので、音色が変わります。

例:長さをそろえると 1 オクターブ違う

同じ の閉管なら

開管の半分、つまり 1 オクターブ低くなります[2]。クラリネットが同じ長さのフルートより低く鳴るのは、この違いによるもの[4]

吹き上げたときの飛び方も違います。開管は 1 オクターブ上へ、閉管は 3 倍の音へ跳ぶ[4]

矩形波とのこぎり波

奇数倍音だけを の振幅で足していくと、波形は角ばった矩形に近づく[3]

すべての倍音を で足すと、のこぎりの歯のような形になる。

角を立てるには、高い倍音が要ります。急に切り替わる形ほど、細かい成分を多く含む。

クラリネットの音が矩形波に近い形になるのは、閉管として奇数倍音を出しているためです[4]

倍音の割合が音色を作る

同じ でも、倍音の強さの配り方で聞こえ方が変わる[3]

成分柔らかい音硬い音

左の配り方はほぼ正弦波で、口笛のような音になります。右は高い成分が残るので、金属的に響く。

例:倍音を 1 本だけ落とす

すべての倍音を含む音から、 倍音だけをのぞいたとします。

周期は変わらないので、高さは同じまま。ところが波形は左右非対称に崩れ、聞こえ方が変わります。

音色は 1 本の倍音の有無でも動く。楽器の材質や形が音色を決めるというのは、結局この配り方を決めているという話です。

長さ の閉管があります。音速を とすると、この管が出せる振動数はどれですか。

__RESULT__

基本振動数は です。閉管では奇数倍だけが立つので、 と並びます。 は開管の基本振動数にあたります。

高さと音色の関係も確かめます。

基本振動数 の音に、 の倍音を足しました。合成された音の高さはどうなりますか。

  • の高さに聞こえる
  • のまま変わらない
  • 3 つの平均の高さになる
__RESULT__

倍音は基本振動数の整数倍なので、 秒ごとに全員がそろって元へ戻ります。合成波の周期は基本振動のままで、高さも変わりません。変わるのは波形、つまり音色です。

まちがえやすい点

音色は振動数で決まると考える。決めているのは 1 周期ぶんの波形です。
倍音を足すと高さが上がると思う。周期は基本振動のままなので、高さは変わりません。
閉管でも 倍音が出ると考える。閉端が節という条件から、奇数倍だけが残ります。
開管と閉管を同じ長さで比べて同じ高さだと思う。閉管は 1 オクターブ低くなります。
いちばん強い成分が音の高さを決めると考える。決めるのは周期のほうです。
矩形波を「四角い音」として特別扱いする。奇数倍音を重ねただけの、ふつうの周期波です。

同じ高さで違って聞こえるのは、耳が周期だけでなく形も読んでいるから。整数倍という単純な並びから、楽器の個性が出てきます。

参考文献

Harmonics. Music Acoustics, University of New South Wales.
Flutes vs Clarinets. Music Acoustics, University of New South Wales.
Timbre/08%3A_Fourier_Series/8.02%3A_Fourier_Series/8.2.04%3A_Timbre_(again)). Sound - An Interactive eBook, Forinash and Christian, Physics LibreTexts.
*Physik der Klarinette*. Klangrohr.
振動数が同じでも聞き分けられるのは、1 周期ぶんの波の形が違うためです。形を決めるのは基本振動に混ざる倍音の割合。倍音はどれも整数倍なので、何本足しても周期は変わらず、高さはそのままで音色だけが動く。両端が固定された弦と両端が開いた管はすべての倍音を出しますが、片方が閉じた管は奇数倍だけ。長さ 0.85 m の開管が 200、400、600 Hz と並ぶのに対し、0.425 m の閉管は同じ 200 Hz から 600、1000 Hz へ飛びます。奇数倍音だけを 1、1/3、1/5 と重ねると矩形に近づき、クラリネットの音がその形になる理由まで。