波の重ね合わせと定常波 - 干渉の条件・腹と節・固定端と自由端の反射
2 つの波が同じ場所に来たとき、その点の変位は 2 つの変位の和になります。片方が押しのけた分だけ、もう片方が上乗せする。これを重ね合わせの原理といいます。
波どうしは衝突しない。すれ違ったあと、どちらも元の形と速さのまま進んでいく。
以下では、重ね合わせの原理から干渉の条件を出し、逆向きの波が作る定常波の式と腹と節の位置、固定端と自由端での反射の違い、反射波の作図までを扱います。計算例には、経路差から強め合いを判定する手順と、節の間隔から波長を出す手順を置いた。
重ね合わせの原理
ある瞬間、ある点に 2 つの波が来ているとします。その点の変位は、それぞれの波が単独で作る変位を足したもの。
足し算なので、符号も込みで扱う。山と山が重なれば高くなり、山と谷が重なれば打ち消し合う。
この原理が成り立つのは、波を支配する式が線形だからです。英語版 Wikipedia の重ね合わせの原理の項目も、線形性が条件だと明記している。
振幅が大きくなりすぎると線形性がくずれ、原理は近似にすぎなくなります。高校で扱う範囲では、いつでも成り立つものとして進めてよい。
波の独立性
重なっている最中は形が変わりますが、通り過ぎたあとは元に戻る。相手にぶつかって減速したり、形がゆがんだりしない。
これを波の独立性といいます。粒子の衝突とは決定的に違うところ。
同じ空気の中を何人もの声が同時に飛び交っても、混ざって別の音になったりしない。それぞれの波が、他をすり抜けて届く。

図の左が山どうし、右が山と谷です。真ん中の段が重なった瞬間で、山どうしなら高さが 2 倍になり、山と谷なら平らになる。
いちばん下の段を見ると、どちらの場合も 2 つのパルスが元の形で出てきています。打ち消し合ったほうも、消えてなくなったわけではない。
平らになった瞬間も、媒質は止まっていません。変位が 0 でも速度は残っていて、エネルギーは運動エネルギーの形で持たれている。
干渉
同じ振動数の波が 2 つの波源から出ていると、場所によって強め合う点と弱め合う点ができます。この模様が動かずに保たれる現象を干渉という。
強め合う点では、2 つの波がいつも同位相で届いています。山が来るタイミングがそろっているので、変位が足し合わされて大きくなる。
弱め合う点では、いつも逆位相で届く。片方が山のときもう片方が谷なので、打ち消し合って振幅が小さくなります。
2 つの波がいつも同位相で届く。振幅が足し合わされ、振幅の等しい 2 波なら 2 倍になる
2 つの波がいつも逆位相で届く。打ち消し合い、振幅の等しい 2 波なら変位が 0 のままになる
大切なのは「いつも」というところ。たまたま同位相になる瞬間があるだけでは、模様は動いてしまいます。
そのためには 2 つの波源の振動数が等しく、位相の関係が保たれている必要がある。この条件を満たす 2 波源をコヒーレントな波源といいます。
干渉の条件
どちらが起きるかは、2 つの波源から観測点までの距離の差で決まる。この差を経路差という。
同位相で振動する 2 つの波源から、距離 と の点を考えます。経路差が波長の整数倍なら、山と山が同時に届く。
経路差が半波長の奇数倍なら、片方が山のときもう片方が谷になる。
位相差に直すと見通しがよくなる。経路差 に対応する位相差は で、これが の整数倍か の奇数倍かで分かれます。
OpenStax の波の干渉の節は、位相差 だけずれた同じ振幅の 2 波の合成振幅を と書いている。 で 、 で になる。
2 つの波源が逆位相で振動している場合は、条件がそっくり入れ替わる。経路差が波長の整数倍のところが弱め合いになります。
同位相で振動する 2 つの波源があり、波長は cm です。ある点までの距離が cm と cm のとき、この点はどうなりますか。
- 強め合う
- 弱め合う
- どちらでもない
- 時間とともに強め合いと弱め合いが入れ替わる
手順は、経路差を波長で割るだけ。答えが整数なら強め合い、 刻みの半端なら弱め合います。
2 つの波源が作る模様
水面に 2 つの波源を並べると、強め合う点をつないだ線と、弱め合う点をつないだ線が交互に並ぶ。
強め合う線は、2 つの波源からの距離の差が一定の点の集まり。距離の差が一定である点の軌跡は双曲線なので、模様は双曲線の族になる。

真ん中のまっすぐな線は、2 つの波源から等距離にある点の集まりです。経路差が なので、いつでも強め合う。
そこから外へ行くほど、経路差は 、 と増えていく。強め合う線は外側ほど曲がりが強くなる。
弱め合う点は、隣り合う強め合いの線のあいだに並ぶ。水面の写真では、波立たない筋として見える。
定常波ができる仕組み
振幅も波長も振動数も等しい 2 つの波が、逆向きに進んで重なると、進まない波ができる。これが定常波です。
模様が左右に動かず、その場で伸び縮みするだけ。フランス語版 Wikipedia の定常波の項目も、進行しない振動として定義している。
いちばんよくある作り方は、1 つの波とその反射波を重ねることです。1 本の波源しかなくても、端で跳ね返ってきた波が逆向きの波になる。
波が端に向かって進む
端で反射して逆向きの波になる
入射波と反射波が重なる
進まない定常波になる
弦をはじいたときも、気柱が鳴るときも、中身はこれと同じ。どちらも端での反射が逆向きの波を用意しています。
定常波の式
逆向きに進む 2 つの波を式で書き、足してみます。振幅 、波数 、角振動数 をそろえた 2 波を用意する。
和積の公式 を当てます。
OpenStax の定常波と共鳴の節が挙げているのと同じ形です。
この式の見どころは、 と が別々の因子に分かれたところ。位置が振幅を決め、時刻が全体の伸び縮みを決める。
進行波では のように 2 つが混ざっていました。混ざっていないので、波形は移動しない。
各点の振幅は で、位置だけで決まります。時刻をどう変えても、この大きさを超えない。
腹と節の位置と間隔
振幅が になる点を節、最大になる点を腹といいます。節の位置は から出る。
腹の位置は となるところ。節と節のちょうど真ん中に来る。

図の濃い線が振幅の限界で、薄い線が途中のコマです。黒い点の位置はどのコマでも動かない。
ここから間隔が読めます。節から次の節までが 、節から隣の腹までは 。
振幅が の点。どの瞬間も変位しない。隣の節との間隔は
振幅が最大の点。もとの波の 倍まで振れる。隣の節との間隔は
ドイツ語版 Wikipedia の定常波の項目も、隣り合う節どうしの間隔を半波長としています。
間隔が なので、節を 2 つ見つければ波長が出る。実験で波長を測るときの定石になります。
定常波はエネルギーを運ばない
進行波はエネルギーを先へ送りますが、定常波は送りません。節がその通り道をふさいでいる。
節では変位がいつも で、媒質が動かない。動かない点を通ってエネルギーが向こう側へ渡ることはありません。
エネルギーは節と節にはさまれた区間に閉じこめられ、その中で形を変えるだけ。腹が最大に振れた瞬間は位置エネルギー、まっすぐになった瞬間は運動エネルギーになります。
中国語版 Wikipedia の駐波の項目も、波形が進まないためエネルギーを伝えられないと書いている。
自由端反射と固定端反射
波が媒質の端に達すると反射します。端の作りによって、跳ね返り方が 2 通りに分かれる。
固定端は、端が動けないように留められている場合です。端の変位はいつも でなければならない。
そこで反射波は、入射波を上下反転した形で戻ります。2 つを足すと端で必ず になり、条件が満たされる。
この反転を位相が ずれるといいます。山として届いたパルスは、谷として返ってくる。
自由端は、端が自由に動ける場合です。反転は起きず、山は山のまま返ってくる。

図は入射波を実線、反射波を点線で描いたものです。上の段では山が山のまま、下の段では山が谷になって戻っている。
この違いが、そのまま端の性質を決めます。固定端は必ず節、自由端は必ず腹になる。
端が自由に動ける。反射で位相は変わらず、山は山のまま返る。端は定常波の腹になる
端が留められている。反射で位相が ずれ、山は谷になって返る。端は定常波の節になる
音の場合は、閉じた管の底が固定端、開いた口が自由端にあたります。弦では両端を留めるので、どちらも固定端になる。
反射波の作図
入射波の形が与えられて、反射波や合成波を描く問題は頻出です。手順を決めておけば迷わない。
まず入射波を、壁の向こうまで延長して描く。次に壁を境に左右を折り返し、媒質のある側へ移します。
固定端ならここで上下も反転させる。自由端なら反転させず、そのまま使います。
最後に入射波と反射波を足せば、実際に見える波形になる。定常波の問題では、この足し算まで求められることが多い。
要点は折り返しを 2 回行うところにあります。左右の折り返しは向きを変えるため、上下の反転は端の条件を満たすため。
端が節になるか腹になるか
固定端では、入射波と反射波の変位がいつも打ち消し合います。だから端は節。
自由端では、2 つの変位が同じ向きにそろう。振幅は 倍になり、端は腹になります。
弦を両端で留めれば、両端が節の定常波しか立ちません。この条件が、鳴る振動数を飛び飛びに絞る。
一端を固定した弦に波を送り、反射波と重ねて定常波を作りました。固定した端はどうなりますか。
- 腹になる
- 節になる
- 腹にも節にもならない
- 波長によって腹にも節にもなる
固定端は動けないので、入射波と反射波の変位はいつも打ち消し合います。したがって端は必ず節になります。
この問いは、反射のときに位相が ずれることをそのまま言い直したものです。作図で確かめれば、覚える必要もない。
計算例:経路差から強め合いを判定する
同位相で振動する 2 つの波源から、波長 cm の波が出ています。ある点までの距離が cm と cm のとき、この点の様子を調べます。
まず経路差を出す。
これを波長で割ります。
整数なので強め合う点。波源が同位相なら、経路差が波長の整数倍で山と山がそろいます。
もし距離が cm と cm なら、経路差は cm で 波長ぶん。半端なので弱め合う点になる。
計算例:定常波の式を作る
振幅 m、波長 m、振動数 Hz の波が、逆向きに 2 本進んでいます。合成した定常波の式を作ります。
波数と角振動数を先に出す。
これを に入れます。
腹での振幅は m で、もとの波の 倍。節は から 、 m、 m と並びます。
節の間隔は m で、波長 m の半分になった。式から出した位置と、間隔の規則が合っています。
計算例:節の間隔から波長と速さを出す
弦に定常波を立てたところ、隣り合う節の間隔が m でした。弦を振動させている振動数は Hz。波長と速さを求めます。
節の間隔は半波長にあたる。
速さは から出ます。
定常波の写真からは、波長を直接読みとれません。節の間隔を測って 2 倍する、という一手間が入る。
腹の間隔を測っても同じ値になります。腹どうしの間隔も だから。
計算例:反射波を描いて定常波にする
固定端に向かって、山のパルスが進んでいるとします。反射後の合成波を作図で求めます。
入射波を壁の向こうまで延ばし、壁を境に左右を折り返す。ここまでは自由端と共通の操作になります。
固定端なので、続けて上下を反転させます。山だったパルスが谷になり、これが反射波。
入射波と反射波を足すと、壁のところで変位が になっています。固定端の条件が満たされていることの確認になる。
正弦波を送り続けた場合は、この足し算が定常波になります。壁が節、そこから の位置が最初の腹。
よくある誤り
作図の手順を決めておけば、反射がからむ問題はほとんど落とせます。左右を折り返し、固定端なら上下も反転する、この 2 段だけ。











経路差は 6.0 cm で、波長の 1.5 倍にあたります。半波長の奇数倍なので弱め合う点になります。