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超音波の使い道と分解能(距離と速さをどう測るか)

を超える音は、人の耳には届かない。届かないだけで、性質はふつうの音と変わらない[1]。

聞こえないことより、波長が短いことのほうが道具として効きます。振動数が高いぶん波長が縮み、細かいものにぶつかって返ってくる。

出してから返るまでの時間を測れば距離が出る。 で割るのは、行きと帰りで 2 回ぶん進んでいるためです。

聞こえないだけの音

超音波は、振動数が可聴域の上限を超えた音[1]。医療で使うのは から の範囲[2]。

反射も屈折も回折も、聞こえる音とまったく同じように起こる。使えるのはそこ。

体の中では音速がおよそ とされます[3]。空気中の よりずっと速い。

往復の時間で距離を出す

短いパルスを出し、返ってくるまでの時間を測る。境目ごとに一部が返るので、深さの違う複数の反射が順に届く[1]。

例:海の深さを測る

海中の音速を とします。船から出した音が 秒後に返ってきました。

。魚の群れが返せば、その深さも同じ式で出る。

例:空気中の距離センサー

の超音波を出す小さなセンサーがあります。 後に返ってきたとする。

車の駐車センサーが測っているのはこれ。波長は になります。

見える細かさは波長で決まる

波を使って何かを調べるとき、波長より細かいものは見えません[1]。

振動数を上げれば波長が縮み、細かいものまで返せるようになる[3]。

例:体の中での波長

の超音波を、音速 の組織に当てます。

。これより小さい構造は、はっきりとは映らない。

例:振動数を上げる

にすると 。 なら です。

のプローブで、実際に から ほどの分解能が得られています[3]。計算した波長とよく合う。

深さと細かさは両立しない

振動数を上げれば細かく見える。ところが、高い振動数ほど組織に吸われて減っていく[2]。

低い振動数

波長が長く、細かいものは見えない。そのかわり深いところまで届く

高い振動数

波長が短く、細かく見える。そのかわり浅いところまでしか届かない

届く深さの目安は、波長のおよそ 倍とされる[1]。

例:届く深さを見積もる

なら 。 ほど。

では しかない。 なら まで届きます。

深いところを見たいときは低い振動数、皮膚のすぐ下なら高い振動数。目的で選び分ける[3]。

反射が起きるのは境目

超音波が返ってくるのは、性質の違う物質の境目です。差が大きいほど強く返る。

空気と体の組織では、この差がとても大きい。プローブと肌のあいだにわずかでも空気が残ると、そこでほとんどが返ってしまう。

検査でゼリーを塗るのはそのためです。空気を追い出して、超音波を体の中へ入れる。

例:パルスの長さで決まる細かさ

送るのは連続音ではなく、 から マイクロ秒ほどの短いパルスです[3]。

マイクロ秒のあいだに超音波が進む距離を出します。

。往復ぶんを考えると、これより近い 2 つの面は重なって届き、分けられません。

パルスを短くするほど細かく分けられる。短いパルスを作るには高い振動数が要るので、ここでも同じ関係が効いています。

例:画像 1 枚にかかる時間

深さ まで調べるとします。往復の距離は 。

本の線を作るのに ミリ秒ほど。 本並べて 1 枚の画像にすると 秒かかる。

秒に 枚。動いている心臓もなめらかに映せる速さです。

深いところまで見ようとすると、この時間が伸びて枚数が減る。深さと速さのあいだにも、同じような取り引きがあります。

動くものはドップラーで

動く反射面に当たった超音波は、振動数が変わって返ってくる。反射面は受けるときが観測者、返すときが音源[1]。

視線方向の速さを とすると、返ってくる音の振動数のずれは次のようになる。

が付くのは、受けるときと返すときで 2 回ずれるためです。

例:血流の速さを測る

、血液の流れる速さを 、体内の音速を とします。

。 万ヘルツのうちの ヘルツなので、比でいえば パーセントの変化です。

例:うなりとして聞く

出した音と返った音を重ねると、差の回数でうなりが起こる[1]。

はちょうど人の聞こえる範囲。だから血流の音を、そのままスピーカーから出せる。

流れが速いほど高い音になる。検査室で聞こえるあの音は、ドップラーのずれそのものです。

例:もっと遅い流れ

、流れが の場合を計算します。

[1]。低めの音になりますが、まだ十分に聞こえます。

角度がつくと小さくなる

流れの向きと超音波の向きがずれていると、視線方向の成分だけが効く。

なら で、ずれは半分になる。真横から当てると で、流れているのに何も出ません。

血管に対して斜めから当てるのは、この項を大きくするためです。角度が分かっていれば、割り戻して本当の速さが出せる。

例:角度で割り戻す

、 で が測れたとします。

正面から当てたときと同じ が出ました。角度さえ分かれば、斜めからでも困らない。

身のまわりの超音波

洗浄機は、水の中に超音波を送って細かい泡を立てる。泡がつぶれる力で汚れを落とす仕組み。

金属の内部にひびがあれば、そこで超音波が返ります。壊さずに中を調べられるので、検査に使われる。

コウモリやイルカも超音波を出し、返りを聞いて障害物や獲物の位置を知る。人が作った装置と原理は同じ。

海中の音速を とします。船から出した超音波が 秒後に返ってきたとき、海底までの深さはいくらですか。

__RESULT__

です。 は往復ぶんをそのまま深さにした値になります。

分解能のほうも確かめます。

体内の音速を とします。 の構造を見分けたいとき、必要なおよその振動数はどれですか。

__RESULT__

波長が になる振動数を出します。 です。 では波長が ほどあり、細かすぎて見分けられません。

よくあるミス

往復の時間をそのまま距離の計算に使う。 で割ります。
体内でも音速を とする。組織の中では ほどです。
振動数を上げれば深いところまで見えると考える。深さは逆に浅くなります。
波長より細かい構造も映ると思う。波長が見分けの下限になります。
ドップラーのずれの式で を落とす。受けるときと返すときの 2 回ぶんです。
超音波は特別な波だと考える。振動数が高いだけで、反射も屈折も回折もふつうの音と同じです。

聞こえるかどうかは、道具としての性能に関係ありません。効いているのは波長の短さだけ。短くすれば細かく見え、そのぶん遠くへ届かなくなります。

参考文献

Ultrasound. College Physics 2e, OpenStax.
Ultrasound Physics and Instrumentation. StatPearls, National Center for Biotechnology Information.
*Technische Grundlagen der Sonographie*. Urologielehrbuch.
20 kHz を超えると人には届きませんが、反射も屈折も回折もふつうの音と同じです。効いているのは波長の短さのほう。往復の時間から $d = vt/2$ で距離が出て、海中の音速 1500 m/s で 0.40 秒なら 300 m。体の中の音速 1540 m/s では、5.0 MHz の波長が 0.31 mm になり、それより細かい構造は映りません。振動数を上げれば細かく見えるかわり、届く深さは波長の 500 倍ほどまで縮む。動く血液からの反射は $\Delta f = 2f_0u/V$ でずれ、5.0 MHz で 0.30 m/s なら 1.9 kHz。可聴域に入るので、そのまま音として聞けます。