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バナッハ空間の閉グラフ定理|射影・対称作用素・ノルム同値への応用と反例

閉グラフ定理は、バナッハ空間の間の線型作用素が有界かどうかを判定する強力な道具である。連続性を直接示すのが難しくても、グラフが閉集合であるという扱いやすい条件から有界性を導ける。

強みは、確かめるべきことが減る点にある。連続性なら像の収束を自分で示さねばならないが、閉性では像の収束を仮定として使ってよい。この非対称性が、証明をぐっと楽にする。

以下では、グラフの閉性を定義して定理を述べ、開写像定理を経由する証明を追う。そのうえで射影・対称作用素・ノルムの同値といった応用を並べ、完備性を外すと何が壊れるかまで見ていく。

グラフと閉性

, をバナッハ空間、 を線型作用素とする。 のグラフとは、直積空間 の部分集合

のことである。入力と像を組にした点の全体で、作用素 の情報をそのまま図形に写している。

直積 には でノルムを入れる。 と がともに完備だから、 もこのノルムで完備、すなわちバナッハ空間になる。

グラフが閉であるとは、 が の閉集合であることをいう。点列で書けば、 かつ ならばつねに となる、という条件と同値である。

HTML
CSS
JavaScript
<div class="cg-fig">
<svg viewBox="0 0 400 260" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="直積空間 X×Y の中で、グラフ上の点列が収束し、その極限もグラフに乗る様子。閉なら y=Tx。">
<rect x="0" y="0" width="400" height="260" rx="10" fill="#fafbfc"/>
<g stroke="#8a9099" stroke-width="1.4" fill="none" marker-end="url(#cga-ax)">
<line x1="52" y1="212" x2="374" y2="212"/>
<line x1="52" y1="212" x2="52" y2="36"/>
</g>
<line x1="60" y1="190" x2="340" y2="64" stroke="#1b4fb8" stroke-width="2"/>
<g stroke="#c93c41" stroke-width="1.2" stroke-dasharray="5 4">
<line x1="250" y1="104" x2="250" y2="212"/>
<line x1="250" y1="104" x2="52" y2="104"/>
</g>
<g fill="#1b4fb8">
<circle cx="130" cy="158" r="3.2"/>
<circle cx="175" cy="138" r="3.2"/>
<circle cx="215" cy="120" r="3.2"/>
</g>
<circle cx="250" cy="104" r="4.6" fill="#c93c41"/>
<defs>
<marker id="cga-ax" markerWidth="9" markerHeight="9" refX="6" refY="3" orient="auto"><path d="M0,0 L7,3 L0,6 z" fill="#8a9099"/></marker>
</defs>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="13" stroke="#fafbfc" stroke-width="3" paint-order="stroke">
<text x="366" y="230" fill="#4a4f57">X</text>
<text x="40" y="44" fill="#4a4f57">Y</text>
<text x="286" y="72" fill="#1b4fb8">Graph(T)</text>
<text x="98" y="182" fill="#1b4fb8">(xₙ, Txₙ)</text>
<text x="245" y="230" fill="#c93c41">x</text>
<text x="58" y="98" fill="#c93c41">y = Tx</text>
</g>
</svg>
</div>
.cg-fig { margin: 0; text-align: center; }
.cg-fig svg { width: 100%; max-width: 420px; height: auto; }

図は閉性の意味を表している。グラフ上を進む点列 が の中で に収束するとき、その極限もふたたびグラフの上に乗る。飛び出す先がグラフの外にない、というのが閉集合であることの中身だ。明るい背景を前提に配色したので、暗色テーマでは見えにくくなる場合がある。

閉性は連続性より示しやすい

同じ有界性を示すのでも、連続性の定義と閉性の条件とでは、与えられる仮定の量が違う。

連続性を直接示すなら、 を仮定して、そこから を自力で導かねばならない。像の列が収束することも、その行き先が であることも、どちらも自分で示す必要がある。

閉性なら出発点が変わる。 に加えて をはじめから仮定してよく、残る仕事は極限 が に一致することの確認だけだ。「収束するか」を心配せず、「収束先はどこか」だけを問えばよい。

この差が効くのは、具体的な作用素で を関係式から追える場面である。内積や積分、双対空間との組み合わせを使うと、 はしばしば機械的に出る。あとは閉グラフ定理が有界性を保証してくれる。

閉グラフ定理の主張

準備が整ったので定理を述べる。やさしい逆向きの主張も並べておく。

閉グラフ定理

, をバナッハ空間、 を線型作用素とする。 のグラフが で閉ならば、 は有界である。

有界作用素は閉グラフをもつ

が有界なら連続で、連続な線型写像のグラフはつねに閉になる。したがってバナッハ空間の間では、有界であることとグラフが閉であることが同値になる。

これで判定の道具が整う。ふつうは有界性の直接証明のほうが難しいので、実用では閉グラフから有界性を導く向きが主役になる。次の節から証明と応用を見ていく。

証明: 直積空間とグラフ

証明は開写像定理を経由する。まず舞台をバナッハ空間にそろえるところから始める。

が で閉だと仮定する。 はバナッハ空間で、その閉部分空間はまた完備だから、 自身がバナッハ空間になる。 が線型部分空間であることは、 の線型性からすぐに従う。

これで、閉という位相的な仮定が「 はバナッハ空間」という代数と解析の言葉に翻訳された。以降はこの の上で開写像定理を使える。

証明: 射影と開写像定理

から成分を取り出す 2 つの射影を考える。第 1 射影 を で、第 2 射影 を で定める。

どちらもノルムの定め方から有界である。 と が成り立つからだ。

ここで は全単射になる。各 にグラフ上の点 がただ 1 つ対応するからである。バナッハ空間の間の全単射有界線型作用素なので、開写像定理により逆 も有界だと分かる。この逆写像は にほかならない。

あとは合成すればよい。 が成り立つ。 を に送り、そこから第 2 成分 を取り出す、という 2 段だからである。

HTML
CSS
JavaScript
<div class="cg-fig">
<svg viewBox="0 0 400 230" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="証明の写像図。グラフ G から X への射影 π1、Y への射影 π2、そして合成 T=π2∘π1inv。">
<rect x="0" y="0" width="400" height="230" rx="10" fill="#fafbfc"/>
<line x1="176" y1="62" x2="72" y2="172" stroke="#1b4fb8" stroke-width="1.8" fill="none" marker-end="url(#cgb-a)"/>
<line x1="224" y1="62" x2="328" y2="172" stroke="#1b4fb8" stroke-width="1.8" fill="none" marker-end="url(#cgb-a)"/>
<line x1="76" y1="187" x2="324" y2="187" stroke="#c93c41" stroke-width="1.8" fill="none" marker-end="url(#cgb-b)" stroke-dasharray="6 4"/>
<g fill="#eef2fb" stroke="#1b4fb8" stroke-width="1.4">
<rect x="150" y="34" width="100" height="28" rx="6"/>
<rect x="40" y="173" width="34" height="27" rx="6"/>
<rect x="326" y="173" width="34" height="27" rx="6"/>
</g>
<defs>
<marker id="cgb-a" markerWidth="9" markerHeight="9" refX="7" refY="3" orient="auto"><path d="M0,0 L7,3 L0,6 z" fill="#1b4fb8"/></marker>
<marker id="cgb-b" markerWidth="9" markerHeight="9" refX="7" refY="3" orient="auto"><path d="M0,0 L7,3 L0,6 z" fill="#c93c41"/></marker>
</defs>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="14" fill="#1b3a8a" text-anchor="middle">
<text x="200" y="52">G = Graph(T)</text>
<text x="57" y="191">X</text>
<text x="343" y="191">Y</text>
</g>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="13" text-anchor="middle" stroke="#fafbfc" stroke-width="3" paint-order="stroke">
<text x="104" y="112" fill="#1b4fb8">π₁</text>
<text x="298" y="112" fill="#1b4fb8">π₂</text>
<text x="200" y="212" fill="#c93c41">T = π₂∘π₁⁻¹</text>
</g>
</svg>
</div>
.cg-fig { margin: 0; text-align: center; }
.cg-fig svg { width: 100%; max-width: 420px; height: auto; }

有界作用素の合成はまた有界だから、 も有界である。論理の骨格だけ取り出すと、次の流れになる。

グラフ が閉

はバナッハ空間

が有界(開写像定理)

も有界

完備性は「 がバナッハ」と「開写像定理が使える」の 2 か所で本質的に効いている。どちらも と の完備性に由来するもので、この仮定が崩れると証明はどこかで止まる。

ベールの圏定理という土台

開写像定理も、逆写像定理も、閉グラフ定理も、根はひとつでベールの圏定理にある。

ベールの圏定理は、完備距離空間が「やせた」集合、すなわち内部をもたない閉集合の可算和では覆えないことを主張する。バナッハ空間は完備だから、この定理をそのまま使える。開写像定理の証明は、全射性とベールの圏定理を合わせて、像がある球を丸ごと含むことを取り出すところが核心だ。

同じ源からは一様有界性の原理も出る。これら 4 つは、完備性という一点を土台に立つ姉妹定理だと見るとよい。完備でない空間では、どれも反例をもつ。

開写像定理との同値

閉グラフ定理と開写像定理は、論理的に同値である。どちらか一方を認めれば、もう一方が導ける。

開写像定理

全射有界線型作用素 (, はバナッハ)は開写像である。 の開集合を の開集合に写す。

閉グラフ定理

線型作用素 (, はバナッハ)のグラフが閉ならば、 は有界である。

一方向は、いま見た証明そのものである。開写像定理を認めれば閉グラフ定理が出る。逆に閉グラフ定理から開写像定理を導くには、逆写像定理を橋渡しに使う。

逆写像定理は、全単射有界線型作用素 の逆 もまた有界だと主張する。これは閉グラフ定理から出る。 のグラフ は のグラフ の成分を入れ替えただけだから、 が有界でグラフが閉なら のグラフも閉になり、閉グラフ定理より は有界だと分かる。

逆写像定理があれば開写像定理も出る。全射有界 から核で割った写像 は全単射有界で、その逆が有界だから、商写像と合わせて は開写像になる。こうして 3 つの定理は互いに同値だと確かめられる。

HTML
CSS
JavaScript
<div class="cg-fig">
<svg viewBox="0 0 400 240" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="ベールの圏定理を土台に、開写像定理・逆写像定理・閉グラフ定理が互いに同値であることを示す図。">
<rect x="0" y="0" width="400" height="240" rx="10" fill="#fafbfc"/>
<line x1="200" y1="56" x2="200" y2="102" stroke="#1b4fb8" stroke-width="1.6" fill="none" marker-end="url(#cgc-a)"/>
<g stroke="#7a52c0" stroke-width="1.6" fill="none" marker-start="url(#cgc-b)" marker-end="url(#cgc-b)">
<line x1="178" y1="132" x2="116" y2="182"/>
<line x1="222" y1="132" x2="284" y2="182"/>
<line x1="142" y1="196" x2="258" y2="196"/>
</g>
<g fill="#eef2fb" stroke="#1b4fb8" stroke-width="1.4">
<rect x="150" y="28" width="100" height="28" rx="6"/>
<rect x="152" y="104" width="96" height="28" rx="6"/>
<rect x="46" y="182" width="92" height="28" rx="6"/>
<rect x="262" y="182" width="96" height="28" rx="6"/>
</g>
<defs>
<marker id="cgc-a" markerWidth="9" markerHeight="9" refX="7" refY="3" orient="auto"><path d="M0,0 L7,3 L0,6 z" fill="#1b4fb8"/></marker>
<marker id="cgc-b" markerWidth="8" markerHeight="8" refX="6.5" refY="3" orient="auto-start-reverse"><path d="M0,0 L7,3 L0,6 z" fill="#7a52c0"/></marker>
</defs>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="13" fill="#1b3a8a" text-anchor="middle">
<text x="200" y="46">ベール圏定理</text>
<text x="200" y="122">開写像定理</text>
<text x="92" y="200">逆写像定理</text>
<text x="310" y="200">閉グラフ定理</text>
</g>
<text x="200" y="170" font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="12" fill="#7a52c0" text-anchor="middle" stroke="#fafbfc" stroke-width="3" paint-order="stroke">すべて同値</text>
</svg>
</div>
.cg-fig { margin: 0; text-align: center; }
.cg-fig svg { width: 100%; max-width: 420px; height: auto; }

図はこの関係をまとめたものだ。ベールの圏定理をただ 1 つの土台として、開写像定理・逆写像定理・閉グラフ定理が同値の輪でつながっている。どれか 1 つを証明すれば、残りは相互に行き来できる。

有界なら閉グラフ、そして閉作用素

有界作用素が閉グラフをもつことは既に見た。この向きから、定義域を全空間に限らない「閉作用素」という一般化が見えてくる。

線型作用素 の定義域 が の部分空間で、グラフ が で閉のとき、 を閉作用素と呼ぶ。閉グラフ定理は、この定義域が 全体でしかもバナッハのとき「閉作用素なら有界」と述べているに等しい。

裏を返せば、定義域が の真の部分空間なら、閉作用素であっても有界とは限らない。非有界な作用素は、定義域を全空間より狭くとることで閉性と両立する。この見方が、あとで見る微分作用素の話の背景になる。

応用: 補部分空間への射影

最初の応用は、閉部分空間への射影が自動的に有界になるという事実である。

バナッハ空間 が 2 つの閉部分空間の直和 に分かれているとする。任意の は (, )と一意に書け、射影 を で定める。この が有界であることを、閉グラフ定理で示そう。

グラフの閉性を確かめる。 かつ と仮定する。 で は閉だから である。一方 で、これは に収束し、 も閉だから となる。

すると は の元と の元の和で、分解の一意性から が従う。よってグラフは閉、閉グラフ定理より は有界である。連続性を - で直接押さえるより、はるかに見通しがよい。

応用: 弱い有界性から有界性へ

次は、双対空間を通した「弱い」有界性が、ふつうの有界性を導く例である。

を線型作用素とし、任意の連続線型汎関数 について合成 が 上で連続だと仮定する。各方向から見れば連続、という弱い条件だけを課したことになる。このとき は有界である。

これも閉グラフで示せる。 かつ とする。任意の について、 の連続性から が成り立つ。同時に の連続性から も成り立つ。

よって がすべての で成り立つ。ハーン–バナッハの定理から双対空間は点を分離するので、 が従う。グラフは閉になり、 は有界である。

応用: Hellinger–Toeplitz の定理

閉グラフ定理の古典的な応用に、ヒルベルト空間上の対称作用素をめぐる定理がある。

Hellinger–Toeplitz の定理

ヒルベルト空間 の全体で定義された対称作用素 は有界である。

対称とは

すべての で が成り立つことをいう。至る所定義された対称作用素は、自己共役でもある。

証明はグラフの閉性に帰着する。 かつ と仮定し、 を示せばよい。任意の について、内積の連続性と対称性から次のように計算できる。

したがって がすべての で成り立ち、 を得る。 は 全体で定義された閉グラフの作用素だから、閉グラフ定理より有界である。

対称性という内積の構造が、 の行き先を に固定してくれる。前の 2 つの応用と同じく、閉性の「収束先はどこか」という問いに、空間の構造が答えを与える形になっている。

非有界作用素はなぜ定義域を絞るのか

Hellinger–Toeplitz の定理は、対偶を読むと非有界作用素の性質を語りだす。

非有界な対称作用素は、ヒルベルト空間の全体では定義できない。もし全体で定義できれば、定理によって有界になってしまうからだ。だから非有界な対称作用素は、定義域を稠密な真の部分空間にとるしかない。

これは量子力学の要請とぴたりと合う。位置・運動量・エネルギーといった観測量は自己共役作用素で表され、その多くは非有界である。調和振動子のハミルトニアンは自己共役かつ非有界で、 の全体では定義できないことが知られている。

非有界作用素の定義域を丁寧に指定するのは、単なる技術的な作法ではない。全体で定義しようとすると存在そのものが許されない、という閉グラフ定理由来の事情がある。定義域こそ作用素の本質の一部だ、というのがこの定理の教えである。

応用: 2 つの完備ノルムの同値

もう 1 つの応用は、同じ空間に入った 2 つの完備ノルムに関するものだ。

ベクトル空間 が 2 つのノルム , でともに完備だとし、片方がもう片方を抑える、つまりある定数 で がすべての で成り立つとする。このとき 2 つのノルムは同値で、逆向きの評価 も成り立つ。

恒等写像 を見る。仮定 は、この写像が有界だという意味にほかならない。しかも全単射である。

両側が完備だから、逆写像定理により逆写像も有界、すなわち が出る。一見すると強い結論だが、完備性さえあれば片側の評価から反対側が自動で従う。有界性を判定する定理が、ノルムの同値という別の顔で現れている。

完備性は落とせない

ここまで定義域の完備性を仮定してきた。これを外すと、閉グラフをもつのに非有界な作用素が現れる。

具体例をあげる。 に一様ノルム を入れ、微分作用素 を で定める。 をとると だが となり、 は非有界である。

ところが、この のグラフは閉になる。 かつ がともに一様収束なら、微分と一様極限を交換できて は に属し となる。だから極限 はふたたびグラフに乗る。

矛盾しないのは、定義域 が完備でないからだ。この空間の完備化は で、 はその中の稠密な真の部分空間にすぎない。閉グラフ定理はあくまで定義域がバナッハ空間であることを要求する。その仮定が崩れれば、閉グラフと有界性の同値も崩れる。

微分作用素はどこで「閉」になるか

前の例は一様ノルムだった。同じ微分作用素を の中で見ると話が変わり、グラフはもはや閉ではなくなる。

の中で、定義域を にとった を考える。 かつ が で成り立っても、極限 は から出てしまう。たとえば は折れ点をもち でないが、なめらかな関数によって も導関数も の意味で近似できる。極限がグラフの外に出るので、グラフは閉でない。

このとき は閉ではないが可閉である。 での閉包をとると、定義域はソボレフ空間 、すなわち弱微分が に入る関数の全体に広がり、 は をその弱微分に送る作用素になる。閉じるために定義域を から へ広げた、という格好だ。

同じ記号の微分作用素でも、どのノルムでどの定義域にのせるかで、閉にも可閉にもなる。一様ノルムでは で閉、 では で可閉かつ で閉、というように、閉性は作用素だけでなく定義域とノルムの選び方まで込みで決まる。下書きで「 上の 定義域で のグラフが閉」と書けないのは、この違いのためである。

理解の確認

最後に 1 問。閉グラフ定理から有界性を結論するのに、何が要るかを思い出してほしい。

バナッハ空間 から への線型作用素 について、閉グラフ定理から「 は有界」を結論するために本質的な前提はどれか。

  • が単射である
  • の定義域が 全体で、, がともに完備である
  • が可分である
  • の値域が閉である
__RESULT__

閉グラフ定理は、定義域が全空間のバナッハ空間であることを本質的に使う。定義域が真の部分空間なら、一様ノルムの微分作用素のように、閉グラフでも非有界な例が作れてしまう。単射性・可分性・値域の閉性は、いずれも結論に必要ない。

参考文献

Wikipedia: Closed graph theorem (functional analysis))
Wikipedia: Open mapping theorem (functional analysis))
Wikipedia: Hellinger–Toeplitz theorem
Wikipedia: Closed linear operator
University of Zürich, Functional Analysis lecture notes, Lecture 10
閉グラフ定理をグラフの閉性から解説します。開写像定理経由の証明、開写像定理・逆写像定理との同値、射影・弱有界性・Hellinger–Toeplitz・ノルム同値の応用、完備性が要る理由と微分作用素の可閉性。