単純群は非自明な正規部分群を持たない群であり、群論における「原子」のような存在である。有限群はすべて単純群から構成される。
単純群の定義
群 が単純群(simple group)であるとは、 の正規部分群が と のみであることをいう。
単純群はこれ以上「分解」できない群である。
可換単純群
可換群 が単純群であるための必要十分条件は、( は素数)であることである。
可換群の部分群はすべて正規なので、真の部分群が存在しなければよい。これは位数が素数のときに限る。
非可換単純群
非可換単純群の最小のものは (位数60)である。
()はすべて単純群である。 は単純群でない( が正規部分群)。
組成列
群 の組成列(composition series)とは、正規部分群の列
で、各商 が単純群となるものをいう。
Jordan-Hölderの定理
有限群 の任意の2つの組成列は同じ長さを持ち、組成因子(商群 )の集合は(順序と同型を除いて)一致する。
群の「素因数分解」は(順序を除いて)一意である。
組成列の例
の組成列:
組成因子は , , である。
は単純群でないが、 なので、さらに分解すると組成因子はすべて素数位数の巡回群になる。
単純群の重要性
有限群の分類は、単純群の分類と、単純群から群を構成する方法(拡大問題)に帰着される。
単純群は群論の「周期表の元素」に相当する。
非可換有限単純群の例
無限系列をなすもの:
交代群 ()
射影特殊線型群 (例外を除く)
その他の Lie 型群(古典群、例外群)
散在型単純群:上記の無限系列に属さない26個の単純群。モンスター群など。
交換子群と単純性
かつ ならば、 は単純群の有力な候補である(ただし十分条件ではない)。
を満たす群を完全群という。単純群は完全群であるか、可換(素数位数巡回群)である。