1 直線の上の運動では、向きは右か左しかありません。だから矢印を描き分ける代わりに、数の符号で表してしまえます。
右向きを正と決めます。すると右へ進む物体の速度は正の数、左へ進む物体の速度は負の数になります。位置も同じ約束で測り、原点より右が正、左が負です。
この約束を置くと、向きの話がすべて足し算と引き算になります。 という式が、右向きでも左向きでもそのまま使えるのは、このためです。
速度と加速度が同じ向きを指しているあいだは、速さが増えていきます。加速度が速度を後押ししているからです。
ここで気をつけたいのが、下の段です。速度も加速度も負、つまりどちらも左向きです。それでも向きはそろっているので、やはり速くなります。打点の間隔はどちらの段でも広がっていきます。
負の加速度だから遅くなる、ではありません。遅くなるかどうかを決めているのは、加速度の符号そのものではなく、速度の符号との組み合わせです。
今度は右へ走っている物体に、左向きの加速度をかけます。速度は正、加速度は負で、符号が食い違っています。このとき速さは減っていきます。
打点の間隔はだんだん詰まり、- のグラフの直線は 0 の線へ近づいていきます。ただし、加速度そのものは変わっていません。傾きは最初から最後まで同じです。変わっているのは速度のほうです。
「減速」という言葉は、この状態につけた呼び名にすぎません。物体にとっては、向きが逆の加速度を受け続けているだけのことです。
逆向きの加速度を受け続けると、速度はやがて 0 になります。図では、そのとき速度の矢印だけが消えます。
消えないのは加速度の矢印です。長さも向きもそのまま残っています。だから物体はそこで止まったままにはならず、次の瞬間には逆向きの速度がついて、戻りはじめます。真上へ投げたボールが最高点で止まって見えるのに落ちてくるのは、これと同じことです。
と は別のことです。速度が 0 なのは「いまこの瞬間、動いていない」という意味でしかなく、これから動きださない理由にはなりません。
グラフのほうを見ると、直線は 0 の線をただ通り過ぎています。折れも切れもしません。折り返しは、運動の中で何かが切り替わった瞬間ではなく、ひと続きの運動を私たちが向きで呼び分けているだけの点です。