万有引力による位置エネルギーは と書きます。負の値です。
負になるのは、無限に遠いところを基準の に選んだからです。天体に近づくほど引力に引かれて落ちていくので、基準より低いところ、つまり負の値になります。基準の取り方の問題であって、エネルギーが足りないという意味ではありません。
なぜ地面を基準にしないのか。 が使えるのは が一定とみなせる範囲、つまり地表のすぐ上だけだからです。高さが地球の半径に近づくと は目に見えて小さくなり、 では合わなくなります。どこまで離れても使える基準として、無限遠を選んでおくほうが都合がよいのです。
図の曲線は、 が大きいほど に近づき、天体に近いほど深く落ちこみます。この曲線の、地表のすぐ上だけを切り取れば、ほとんど直線に見えます。その傾きが で、 はそこだけを見ていた式だった、ということになります。
位置エネルギーが決まれば、力学的エネルギー保存が使えます。 で、 は軌道のどこでも同じ値です。
図の水平線が 、曲線が 、そのあいだの縦の長さが運動エネルギー です。天体に近いところでは が深く落ちこんでいるので が大きく、つまり速い。遠ざかるほど は縮んでいきます。
本が交わるところで が になります。そこが折り返し点で、それより遠くへは行けません。 が負であるかぎり必ずこの交点があるので、軌道は閉じます。楕円軌道になるのはこのためです。
楕円軌道の近点と遠点の速さを求めるときは、この式と、面積速度の を連立させます。未知数が と の つ、式も 本で、これで解けます。
地表すれすれを回り続けるには、どれだけの速さが要るでしょうか。これを第一宇宙速度といいます。
円軌道なので、万有引力が向心力になります。 と置き、 を約分して が出ます。
ここで を思い出すと、 ですから と書き直せます。 も も知らなくても、 と地球の半径だけで計算できる形です。地球の値を入れると秒速およそ キロメートルになります。
これより遅ければ地面に落ち、この速さが出れば落ち続けたまま地面に届きません。ニュートンの砲弾で「十分に速く」と言っていたのが、この速さです。
では、二度と戻ってこないためには、どれだけ出せばよいでしょうか。これが第二宇宙速度、脱出速度です。
境目は、無限に遠いところでちょうど止まる場合です。そこでは で ですから になります。力学的エネルギーは変わらないので、打ち上げるときも でなければなりません。
を解いて です。第一宇宙速度のちょうど 倍で、地球なら秒速およそ キロメートルになります。
図の左は足りないほうで、どれだけ高く上がっても、横線のところで速さが になって落ちてきます。右は足りているほうで、上がりきる高さがないのでそのまま出ていきます。この つを分けているのは の符号だけです。