ここからは、どの角で投げればいちばん遠くへ飛ぶかを考えます。地面から投げて地面へ落ちる場合を扱います。
まず、飛んでいる時間からです。球が地面へ戻ってくるのはいつか、という話ですから、これは高さの話です。横向きにどれだけ速く進んでいようと、落ちてくる時刻は変わりません。前の講義でみた、横と縦が別々だということがそのまま効いています。
鉛直の初速は でした。上がって、頂点で鉛直の速度が 0 になり、また下りてきます。上りと下りにかかる時間は同じですから、全体は上りの 2 倍です。
上りにかかるのは ですから、滞空時間は になります。図の目印は等しい時間ごとの位置で、頂点を通る線をはさんで左右に同じ並びで出ています。
次は距離です。水平の向きには力がはたらかないので、球は の速さで進み続けます。等速で進むのですから、距離は速さと時間を掛けるだけです。
その時間が、いま出した滞空時間 です。だから となります。ここへ を入れると です。
は と書き直せます。まとめると になりました。
この式で角が入っているのは だけです。初速も重力加速度も決まっているとすれば、飛距離を決めているのはここ 1 か所だ、ということになります。
の値は、どんな角でも 1 を超えません。 がちょうど 1 になるのは のとき、つまり のときです。
ですから で投げたときがいちばん遠く、そのときの距離は です。
図には ごとに 5 本の軌道を重ねてあります。明るい 1 本が で、いちばん右まで届いています。浅く投げれば横向きには速く進みますが、すぐ落ちてしまう。深く投げれば長く浮きますが、前へは進まない。その釣り合いが、ちょうど真ん中で取れています。
ところで、着地点の印をよく見てください。軌道は 5 本あるのに、印は 3 つしかありません。
印が 3 つしかないのは、 と 、 と が、それぞれ同じところへ落ちているからです。足すと になる組になっています。
式でも確かめられます。 の代わりに を入れると となり、これは に等しい。だから です。
ただし、落ちる場所が同じというだけで、落ち方まで同じではありません。図の 2 つは同時に飛び出しますが、深いほうがずっと長く浮いています。滞空時間 は角によって違うからです。浅いほうが先に着いて、深いほうがあとから追いつきます。
同じ的に当てる投げ方が 2 通りある、ということでもあります。速く届かせたいなら浅いほう、あいだの壁を越えたいなら深いほう。 だけが 1 通りで、そこが折り返しになっています。