円を描いて回るには、中心を向く加速度 が要ることが分かりました。加速度があるなら、力があります。運動方程式 を中心向きに立てれば、中心向きの合力が でなければならない、ということになります。
この合力のことを向心力といいます。呼び名です。 という新しい種類の力が、重力や張力とは別にどこかから来ているわけではありません。
ここが混みやすいところです。おもりにはたらく力を数え上げ、そのうえで「向心力」をもう 本描き足してしまうことがあります。それは合力を成分の中へもう一度足すことで、同じものを二重に数えています。図の矢印は糸の張力そのものであって、張力に何かを足したものではありません。
式の左辺は「実際にはたらいている力から組み立てた中心向きの合力」、右辺が です。左辺に を書いてはいけません。
では、中心向きの合力をつくっているのは誰でしょうか。場合ごとに違います。
糸につないで回せば、糸の張力 です。おわんや円筒の内側を回れば、壁が内向きに押す垂直抗力 です。天体のまわりを回れば、万有引力 です。図はこの つを順に入れ替えていきます。相手が変わってもおもりの回り方は変わりません。どれも中心を向いた同じはたらきをしていて、名前と出どころだけが違うからです。
ですから解く手順はいつも同じです。まずおもりにはたらく力を数え上げる。次に、そのうち中心を向く成分を足す。最後に、それが に等しいと置く。この順番は、相手が糸でも壁でも重力でも変わりません。
つの力がまるごと向心力になるとはかぎりません。斜面やコースターの谷底では、垂直抗力と重力の一部が足し合わさって中心向きの合力になります。だから力を数え上げるのが先で、向心力を決めるのはそのあとなのです。
回っているおもりの糸を、途中で切ってみます。おもりはどちらへ飛ぶでしょうか。
外へ放り出されるのではありません。切れた瞬間の速度のまま、接線の向きへまっすぐ進みます。力がはたらかなければ等速直線運動、という慣性の法則そのままです。曲げ続けていたのが糸の張力で、それがなくなったのですから、あとは曲がらずに進むだけです。
外へ振り飛ばされたように見えるのは、まっすぐ進むおもりと、曲がっていく円とが、みるみる離れていくからです。おもりが外向きに押されたのではなく、円のほうが内側へ逃げていきます。
ハンマー投げも、傘を回したときの水滴も同じです。手を離した先を目で追うと、円の外へ放射状に散るのではなく、そのときの接線の向きへ飛んでいきます。
外向きの力といえば遠心力です。ただし、これを外から見た図に描き足してはいけません。
ここまでの図はどれも外から見たものでした。はたらいているのは糸の張力だけで、合力が中心を向いているから曲がります。ここへ同じ大きさの外向きの力を足したらどうなるでしょうか。合力が になり、おもりはまっすぐ進むことになってしまいます。実際には曲がっているのですから、その図は間違いです。
この場面の図だけは、おもりと一緒に回りながら見ています。おもりは止まっていて、動いて見えるのは軌道の外の目印、つまりまわりの景色のほうです。止まっているのに張力だけがはたらいているのでは辻褄が合わないので、それとつり合う外向きの力を足します。これが遠心力で、大きさは 、式にすれば です。
遠心力には押している相手がいません。作用反作用の相手を探しても見つからず、回る側から見たときにだけ現れます。こういう力を慣性力といいます。外から見るか、回りながら見るか。どちらで解いても答えは同じで、いけないのは つの見方を混ぜることだけです。