斜めに投げ出された球にはたらく力は、重力ただ 1 つです。空気抵抗は考えません。そしてその重力は、飛んでいるあいだずっと真下を向いたままで、大きさも変わりません。
ところが球の動きは斜めです。動く向きと力の向きが食い違っているので、このままでは扱いにくい。そこで力ではなく、速度のほうを 2 つに分けます。水平の向きと、鉛直の向きです。
初速の大きさを 、水平からの角を とすると、水平の成分は 、鉛直の成分は になります。図の長方形は、この 2 つを足すと元の初速に戻ることを示しています。
ここから先は、この 2 つを別々に追いかけます。分けたものを最後に足し合わせるのではなく、分けたまま最後まで別々に扱ってよい。それがなぜ許されるのかを、次の 2 つの場面で見ます。
まず水平の向きです。この向きに力ははたらいていません。重力は真下を向いているので、水平の成分をまったく持たないからです。
力がはたらかなければ、速度は変わりません。だから水平の速さは のままで、飛び出してから着地するまで一度も変わりません。等速直線運動そのものです。
進んだ距離は になります。図で地面に置いた目印は、等しい時間ごとの影の位置です。どこも同じ間隔で並んでいて、球から下ろした影はその上を同じ歩幅で通っていきます。
球は上がったり下りたりしているのに、影は少しも歩調を変えません。上下の動きは、横向きの進み方に何ひとつ影響していないということです。
次は鉛直の向きです。こちらには重力がまるごとかかります。上向きを正に取ると、速度は と変わっていき、高さは になります。
この 2 つの式には、見覚えがあるはずです。真上へ の速さで投げ上げた球の式と、字も並びもそっくり同じだからです。斜めに飛ぶ球の縦の動きは、投げ上げそのものでした。
図の右に、真上へ投げ上げた球を並べてあります。斜めに飛んでいる球と水平の破線で結んでありますが、この線はいつまでたっても水平のままです。2 つは同時に上がり、同時に頂点に着き、同時に下りてきます。
縦に並べた目印は、等しい時間ごとの高さです。上へ行くほど間隔が詰まっているのは、上がるにつれて遅くなっているからです。頂点で が 0 になり、そこから下りに変わります。横の目印が等間隔だったのと、見比べてみてください。
横と縦を別々に扱ってよいことを、いちばんはっきり見せるのがこの実験です。同じ高さ から、一方は水平に投げ出し、もう一方はそっと落とすだけにします。
水平に投げ出した球の、鉛直の初速は 0 です。そっと落とした球も 0 です。そしてこの向きには、どちらにも重力しかかかりません。同じ高さから、同じ初速で、同じ力を受ける。だから高さはどちらも で、まったく同じように下がっていきます。
図の 2 つは、いつでも同じ高さに並んでいます。そして同時に地面へ着きます。落ちるまでの時間は で、この式に水平の速さは出てきません。どれだけ速く投げ出しても、落ちるのにかかる時間は変わらないということです。
横向きの速さは、落ち方に何の関係もありません。横と縦は別々に動く、というのはこういう意味です。分けて考えてよいのではなく、もともと別々の運動が 2 つ重なっているだけだったのでした。