日米韓、次世代原子炉 SMR で協力覚書に署名 インド太平洋への展開めざす
2026年7月9日 20:57
日本、米国、韓国の 3 か国が、次世代の原子炉とされる小型モジュール炉(SMR)の海外展開で足並みをそろえる。3 か国の外相は 7 日、トルコで開かれた会合に合わせ、SMR を第三国へ展開するための協力覚書(MOC)に署名した。署名には、日本の茂木敏充外相、米国のマルコ・ルビオ国務長官、韓国の趙顕外交部長官が臨んだ。
SMR は、従来の大型炉より出力の小さい原子炉で、工場での量産や工期の短縮が見込めるとされる。世界では、脱炭素の流れと、データセンターなどによる電力需要の急増が重なり、安定した脱炭素電源として原子力への関心が再び高まっている。3 か国は、こうした需要が伸びるインド太平洋地域を、当面の重点地域と位置づけた。
覚書のねらいを、ジェトロはこう伝えている。
同覚書は、インド太平洋地域を当面の重点地域とし、安全で信頼性の高い原子力エネルギーの導入を支援するため、3カ国の政府および産業界の協力強化を目的としている。
ジェトロ(日米韓外相、小型モジュール炉(SMR)の展開に向け、3国間協力覚書に署名)
3 か国の枠組み
覚書では、商用原子力の分野で互いに補い合える強みを持つ日米韓が、各国の原子力産業間の連携を促す枠組みを築くと明記した。3 か国は、複数の炉をまとめて導入するモデルづくりを通じて、開発リスクの低減や規模の経済、民間投資の呼び込み、許認可手続きの効率化、サプライチェーンの最適化などを進める考えだ。関連産業には、日本の日立製作所、米国の GE ベルノバ、韓国のサムスン C&T などが名を連ねる。
米国の資金支援
米国はこの枠組みを支えるため、国務省の「SMR 技術の責任ある利用のための基盤インフラ(FIRST)」プログラムに 1,000 万ドル超を追加で拠出すると発表した。資金は、SMR の案件開発の後押しや、地域の人材を育てる拠点づくりに充てられる。
日米韓の 3 か国は、近年、安全保障や経済安全保障での連携を強めてきた。今回のエネルギー分野での協力も、その延長線上にある。原子力を外交とエネルギー安全保障の軸に据える動きは、脱炭素と電力需要の増加を同時に抱える各国に共通する。日本にとっても、原子力関連の技術や機器の輸出、インド太平洋での存在感という観点で、意味は小さくない。
一方で、SMR はまだ実用化の途上にあり、コストや安全規制、立地の受け入れなど、乗り越えるべき課題は多い。各国で開発競争も激しく、実際に第三国へ売り込む段になれば、価格や納期、規制対応での競争力が問われる。実際の案件をどれだけ具体化できるかが、今後の焦点となる。