古河の介護施設2人殺害事件 元職員に懲役20年 1件は無罪 水戸地裁
2026年7月7日 22:18
茨城県古河市の介護老人保健施設で入所者2人が空気を注入されて殺害されたとされる事件で、殺人などの罪に問われた元職員の赤間恵美被告(40)の裁判員裁判の判決が、2026年7月7日、水戸地裁であった。山崎威裁判長は、起訴された2件の殺人のうち1件を有罪と認めて懲役20年(求刑・無期懲役)を言い渡し、もう1件については無罪とした。
起訴状などによると、被告は同市の施設「けやきの舎」で2020年、入所者だった鈴木喜作さん(当時84歳)と吉田節次さん(当時76歳)に対し、点滴用のチューブにシリンジをつないで血管内に空気を注入し、空気塞栓による急性循環不全で死亡させたとして殺人罪に問われた。鈴木さんは同年5月30日、吉田さんは7月6日に亡くなった。
裁判で争われたのは、そもそも他殺といえるのかという「事件性」と、被告が実行したのかという「犯人性」の二点だった。空気塞栓は後から確認するのが難しく、直接の証拠に乏しいため、判断は状況証拠の積み重ねにゆだねられた。検察は被告の勤務状況などから犯人性を裏づけようとし、弁護側は死因の特定そのものに疑問を投げかけた。
検察側は「被告が犯人なのは明らか」と主張し、弁護側は「死因の特定は困難だ」と反論した。
茨城新聞(茨城・古河老健殺人 被告に懲役20年判決 殺人1件無罪 水戸地裁)
被告は「私は空気を注入していない。殺害していない」として、一貫して全面的に無罪を主張してきた。判決は、2件のうち一方について被告の関与を認めて懲役20年という重い刑を科す一方、もう一方は犯罪の証明が十分でないとして無罪とした。同じ手口が疑われた2件で判断が分かれたことは、証拠の評価がいかに難しい審理だったかをうかがわせる。
裁判員裁判としての審理は長期に及び、初公判からの実審理期間は210日と、水戸地方裁判所の裁判員裁判では最長となった。専門的な医学的証拠を評価する負担は、市民から選ばれた裁判員にとっても重かったとみられる。
介護や医療の現場では、点滴のような日常的な処置が悪用されると、異変が起きても見抜くのが難しい。被害者が高齢で持病を抱えていれば、死因を病死と区別することも一段と困難になる。今回の事件は、高齢者施設におけるケアの安全と、記録・確認の体制をどう整えるかという課題をあらためて突きつけた。
判決を不服として検察・弁護の双方が控訴するかどうかが、次の焦点となる。密室になりがちな介護の現場で、入所者の安全をどう守るのか。判決は、その重い問いを社会に残した。