すべてのイデアルが有限生成であるような可換環をネーター環という。
ネーター環Aの多項式環A[x]はネーター環になる(ヒルベルトの基底定理)ので、ネーター環が一つでもあると、そこからネーター環をつくることができる。
定義
ネーター環は、すべてのイデアルが有限生成であると定義されるが、他にもいくつかの定義があり、それらがすべて同値であることが示される。
ネーター環の同値な定義
- すべてのイデアルは有限生成である
- イデアルの任意の空でない集合は極大元をもつ
- 任意のイデアルの昇鎖は止まる
最後の鎖の定義は、イデアルの真の増大列は存在しないという意味。イデアルは真に大きくなり続けることはなく、どこかで停留すること。以上の三条件はすべて同値である。
性質
ネーター環を局所化するとネーター環ができる。つまり をネーター環、
を
の積閉集合とすると
はネーター環になる。
ネーター環の多項式環はネーター環である。
例
Zはネーター環である。なぜならZのイデアルはすべてnZの形であり、有限生成だからである。
準素分解
ネーター環の著しい性質の一つは、ネーター環のすべてのイデアルは準素分解をもつことである。
準素分解は素因数分解の一般化である。素因数分解とは整数を素数の積に一意に分解できる定理であり、準素分解はイデアルを準素イデアルの共通部分にすることをいう。
アルティン環
ネーター環は、イデアルの昇鎖が停留する可換環として定義される。一方、アルティン環は、イデアルの降鎖が停留するような可換環として定義される。これだけ見ると対称的だが、実はアルティン環はネーター環である。つまりネーター環に、よりきつい条件をもうけた可換環がアルティン環である。
ネーター環とアルティン環のわかりやすい違いは次元である。アルティン環の次元は0だが、ネーター環はそうとは限らない。