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負の指数と指数法則(2 のマイナス 3 乗が 8 分の 1 になる決め方)

は、そう決めたから成り立っているのではありません。ほかの決め方をすると、指数法則が壊れます。

割り算の法則から見ていきます。 を約分すると になる。

同じ式を に当てると です[1]

2 つの答えはどちらも同じ式を書き直したものなので、一致していなければ筋が通りません。 は、この一致から決まります。

も同じ割り算から決まる

です。割り算の法則に当てると になる[1]

乗も負の指数も、新しい規則ではありません。 という書き方を、 の場合にも使えるようにした結果です。

指数を自然数に限っていたときの は「 個かける」でした。 個かけるという意味は作れない。

意味のほうを先に決めるのではなく、法則が続くように値を決める。負の指数はその順番で作られています。

段差が途中で変わらない。この規則正しさを保つ値が でした。

分数に直さずに計算する

を求めます。分数へ直してからかける道もありますが、遠回りです。

底が同じ累乗の積は指数を足すだけ。 を足して です。

分数に直す道を通ると と 4 段かかります。

答えは同じでも、途中の分数で約分を誤る余地が増える。指数のまま足すほうが手数も誤りも少ない。

割り算も同じです。。引き算の符号だけ気をつけます。

分母と分子を行き来する

は逆向きにも読めます。 です。

分母にある累乗を分子へ動かすと、指数の符号が変わる。分子から分母へ動かしても同じ。

文字ごとに指数を引き算して、最後に負の指数だけ分母へ落とす。この順で進めると分数の階段ができません。

答えを のままで置くか、 に直すかは場面によります。式を続けるなら前者が扱いやすい。

例:分数の底

を求めます。負の指数は、分数をひっくり返す働きをします[3]

です。

規則を覚えていなくても導けます。

も同じ。底が より小さいと、負の指数で値は大きくなります。

例: の負のべき

[2]。指数の数字が、小数点以下の桁数と一致します。

なら が 5 個並んだあとに がきます。

小さい数を書くとき、 を数える代わりに指数を書けば済む。 になります。

は逆数どうし、 も逆数どうしです。

底が のときだけは書けない

の右辺は、 だと分母が になります。だから底が のとき、負の指数は定義されません[2]

も同じ理由で宙に浮きます。便利さから と決める場面はありますが、法則から導けるものではない[3]

負の指数を使うときは、底が でないことを先に確かめる。文字を含む式では、この確認がいります。

と書くなら、 という条件も一緒に運びます。

例:まとめて整理する

を整理します。まず、かっこの中で を分子へ上げる。

外の 乗を配ると になり、これは です。

かっこの外の指数は、中のすべての因数にかかる。 にもかかるので を忘れずに置きます。

例:分数の指数と重なるとき

を求めます。符号と分数が同時に付いていますが、どちらから処理しても答えは同じ。

符号を先に外へ出すと になる。 の 3 乗根を 2 乗した値なので です。

分数のほうを先に処理しても に着きます。 の 3 乗根が

ただし途中に出る数の大きさが違う。 を通る道より、3 乗根を先にとって から始める道のほうが軽くなります。

分母を持たない書き方

とも書けます。

分母が消えると、項の並びが指数の列として見える。 と 1 ずつ下がっています。

という をかけて進む列も、左へ戻せば と続く。 を負まで延ばすと、その左半分が同じ式で書けます。

並びに端がなくなり、 をどこまで下げても同じ規則で値が決まる。負の指数の使いどころのひとつが、この延長です。

例:大きい数と小さい数をそろえる

は、桁を数えるだけで疲れます。

のべきに寄せると 。指数の符号が、大きい側か小さい側かを表します[1]

この形ならかけ算も指数の足し算で済む。 の積は、 から です。

負の指数を用意しておく利点が、ここにあります。大きい数と小さい数を、同じ 1 本の書き方でならべられる。

補足:負の指数が使われはじめたころ

負の指数の記号を初めて書いたのは、1484 年の『三部作』にあるニコラ・シュケーです[4]

のような式を書き、どんな数も 乗すれば になると述べています。この記述も史料の上では最初のもの。

割り算の結果として負の指数も現れます。 で割った答えを、いまの書き方でいう としました。

ただし『三部作』はほとんど流通せず、シュケーの考えは広まりませんでした。負の指数が定着するのは、そこから 2 世紀近くあとになります。

の値はどれですか。

__RESULT__

分数の底に負の指数が付くと、分数がひっくり返ります。 です。指数が負でも、値そのものは負になりません。

を整理するとどうなりますか。

__RESULT__

割り算では指数を引きます。 なので です。負の数を引く場面で符号を落とすと になります。

負の指数は、割り算の法則を まで延ばした結果です。そう見ておくと、 が別々の規則ではなくなります。

出典

Exponents and Scientific Notation. College Algebra 2e, OpenStax.
Negative Exponenten. Serlo Education.
Exponent Laws. Weisstein E W. MathWorld, Wolfram Research.
Nicolas Chuquet. O'Connor J J, Robertson E F. MacTutor History of Mathematics Archive, University of St Andrews.
$h^{3} \div h^{5}$ は約分すると $1/h^{2}$、割り算の法則に当てると $h^{-2}$。この 2 つが一致するように値を決めた結果が $a^{-n} = 1/a^{n}$ です。$a^{0} = 1$ も同じ場所から出てきます。意味を先に決めて法則を確かめるのではなく、法則が続くように意味のほうを後から決める。分数に直さず指数のまま足す計算、分母と分子を行き来すると符号が変わる仕組み、$8^{-2/3}$ のように分数と重なる形、$10$ のべきで大小をそろえる書き方まで扱いました。記号としての初出は 1484 年のシュケーまでさかのぼります。