局所環の定義と性質

局所環とは、ただ一つの極大イデアルを持つ可換環のこと。可換環 が局所環であることは、次の条件と同値である。

はただ一つの極大イデアル を持つ
の非単元全体が一つのイデアルをなす
の任意の元 について、 または が単元である

これらの同値性は局所環の柔軟な特徴付けを可能にする。特に 3 番目の条件は、局所環における「二者択一」の性質を示している。

極大イデアルと剰余体

局所環 において、極大イデアル は特別な意味を持つ。剰余体 は体となり、これを局所環の剰余体と呼ぶ。

剰余体の普遍性

剰余体 は、 から体への任意の準同型の行き先となる体の中で最小のものである。つまり、 から体 への準同型 が存在すれば、 を経由して分解される。

Nakayama の補題

局所環の極大イデアル と有限生成 加群 について、 ならば である。この補題は局所環論における最も基本的な道具の一つである。

局所環の例

上の形式的冪級数環 は局所環。極大イデアルは で生成され、この環は代数幾何学において点の近傍を記述する際に用いられる。

整数環 の素イデアル による局所化 も局所環である。この環は「素数 以外で割る」操作を可能にし、整数論において重要な役割を果たす。

正則局所環

局所環 の中でも、特に正則局所環は幾何学的に「滑らか」な点に対応する。正則局所環とは、極大イデアル 個の元で生成されるような局所環である。ここで は Krull 次元を表す。

正則局所環は整閉整域であり、一意分解整域である。これらの性質は、幾何学的対象の特異点の解析において重要な意味を持つ。

Krull 次元素イデアルの鎖の最大長
埋め込み次元 ベクトル空間としての次元
正則性の条件Krull 次元 = 埋め込み次元
Cohen-Macaulay 性深さ = Krull 次元

正則局所環では、Krull 次元と埋め込み次元が一致する。この一致が「滑らかさ」の代数的表現である。

完備化

局所環 の完備化 は、 進位相に関する完備化として定義される。具体的には、射影極限 として構成される。

完備化により、多くの存在定理や一意性定理が証明しやすくなる。たとえば Hensel の補題は、完備局所環において方程式の解の存在を保証する強力な道具である。

完備局所環の構造定理(Cohen の構造定理)により、完備正則局所環は形式的冪級数環の剰余環として表現できる。