Going-up 定理と Going-down 定理は、整拡大において素イデアルの鎖がどのように対応するかを述べた定理です。
設定
を可換環の整拡大とします。 の素イデアル と の素イデアル に対し、 のとき「 は の上にある」といいます。
Lying over 定理により、任意の に対してその上にある が存在します。問題は、素イデアルの鎖を拡張できるかです。
Going-up 定理
を整拡大、 を の素イデアルの鎖、 を の上にある の素イデアルとする。このとき かつ となる の素イデアル が存在する。
図式で書くと
下の鎖が与えられたとき、 から上に伸ばして を取れます。
Going-down 定理
Going-down は Going-up の逆方向ですが、追加の仮定が必要です。
を整拡大で、 が整閉整域とする。 を の素イデアルの鎖、 を の上にある の素イデアルとする。このとき かつ となる の素イデアル が存在する。
図式で書くと
二つの定理の比較
整拡大なら常に成立。小さい方から大きい方へ鎖を伸ばせる。
が整閉整域という追加条件が必要。大きい方から小さい方へ鎖を伸ばせる。
応用:次元の保存
Going-up と Going-down から次の結果が導かれます。
が整拡大で が整閉整域なら、。
特に、 の素イデアルの最長の鎖と の素イデアルの最長の鎖は同じ長さです。
具体例
、(ガウス整数環)を考えます。
という の鎖に対し、 は の上にあります。Going-up により という の鎖が取れます。
逆に に対し、 を Going-down で構成できます( は整閉)。
Going-down が失敗する例
、 とします。 は整閉でありません( は整だが )。
という の鎖に対し、 は の上にある の素イデアルですが、 かつ となる は存在しません。 で に真に含まれる素イデアルは のみで、 です。このケースでは問題ありませんが、一般には失敗しうることを示しています。