環のテンソル積は二つの環(または加群)を組み合わせて新しい環を構成する操作であり、スカラー拡大や積多様体の座標環を表現するのに使われます。
加群のテンソル積
まず加群の場合を復習します。 を可換環、 を -加群とするとき、テンソル積 は次の普遍性で特徴づけられる -加群です。
双線型写像 が与えられたとき、-線型写像 がただ一つ存在して となる。
は と の「形式的な積」であり、双線型性を満たします。
環のテンソル積
を可換環、 を -代数とします。 は加群としてのテンソル積に、積を
で定めることで -代数となります。
具体例
多項式環
。対応は 。
スカラー拡大
体の拡大 に対し は を 上の代数に拡大したもの。例えば 。
積多様体
アファイン多様体 の座標環を とすると、 は の座標環。
テンソル積の性質
可換性:
結合性:
単位元:
分配性:
右完全性
テンソル積は右完全関手です。すなわち、完全列
に対し
も完全です。しかし左側の完全性は一般には成り立ちません。
テンソル積と局所化
テンソル積と局所化は可換です。
特に、 などが成り立ちます。
環準同型との関係
-代数準同型 , に対し、テンソル積の準同型
が で定義されます。
零因子の発生
が整域でも が整域になるとは限りません。
は零因子をもちます。 です。