平坦加群と平坦性|定義から Tor・局所判定・平坦射までわかりやすく解説
平坦性は、テンソル積が単射を壊さないという性質です。加群を掛けても新しい関係式が生まれない、と言い換えられます。
という操作はつねに完全列の右側を保ちますが、左端は一般に壊れます。壊れない を平坦加群と呼びます。
以下では壊れる様子を見てから定義に入り、3 つの直観と 13 個の例を積み上げたうえで、局所性・平坦射・ファイバーの幾何まで進みます。
テンソル積が壊すもの
-加群 を固定し、関手 を考えます。この関手は完全列の右側だけを保ちます。
が完全なら、テンソルした列も完全です。ところが左端の は保たれません。
壊れる様子を見ます。, とし、単射 にテンソルします。
なので、得られる射は 、つまりゼロ写像です。単射だったものが完全に潰れました。
平坦加群の定義
を可換環、 を -加群とします。 が平坦であるとは、任意の単射 -準同型 に対して次が単射になることをいいます。
右完全性はどんな でも成り立つので、平坦性が要求しているのは「左も保たれる」という一点だけです。
前節の は、この一点で失格しています。
短完全列による言い換え
同値な条件として、任意の短完全列にテンソル積が短完全列を返す、という形があります。
が完全であれば、次の列も完全になります。
右完全性から左端以外は自動なので、実質的な内容は前節の単射性と変わりません。以後は場面に応じてどちらの形も使います。
なぜ平坦と呼ぶのか
名前の由来は幾何にあります。環準同型 を射 と見たとき、平坦性はファイバーが跳ばないことに対応します。
ファイバーの次元が急に増えたり、点の個数が突然変わったりする族は平坦ではありません。平坦な族ではそうした不連続がおきません。
どの点の上でもファイバーが同じように振る舞う。次元も次数も跳ばず、横から見て段差がない
ある点の上だけファイバーが膨らむ。次元が跳び、その点で族としての連続性が切れている
「平ら」というのは、族を横から見たときに段差がないという意味合いです。この記事の後半で、段差ができる例を 2 つ具体的に見ます。
代数的な条件と幾何的な直観がこれほど噛み合う概念は多くありません。Serre がこの条件を取り出したのも、解析的な族と代数的な族を比べる文脈でした。
直観 1: ねじれを持ち込まない
にねじれ元があると、テンソル積で単射が壊れます。ねじれ元とは、 でないのにある元で消えてしまう元のことです。
を整域とし、 と が を満たすとします。このとき は のねじれ元です。
係数環の 0 でない元を掛けると消える、0 でない加群の元。
が整域で なら は単射です。これに をテンソルすると になり、ねじれ元 が に送られます。
したがって整域の上では、平坦なら必ずねじれがありません。ねじれを持ち込まない加群、というのが最初の直観です。
逆が成り立つかどうかは環によります。この点はあとで 2 つの例を並べて確かめます。
直観 2: 関係式が持ち上がる
2 つ目の直観は、 の中の関係式がすべて の中の関係式から来る、というものです。方程式判定条件と呼ばれます。
が平坦であることは、次の条件と同値です。(、)が成り立つとき、 と が存在して次を満たします。
つまり で成り立つ関係式は、 の側ですでに成り立っている関係式に元を代入しただけのものになります。 が新しい関係式を持ち込まない、という言い方ができます。
自由加群ならこれは明らかです。座標ごとに見れば は の関係式そのものだからです。
直観 3: 自由加群の極限
3 つ目の直観は Lazard の定理です。 が平坦であることと、 が自由加群の有向帰納極限で書けることが同値になります。
自由加群は平坦で、有向帰納極限は単射を保ちます。この向きは難しくありません。難しいのは逆で、平坦な加群からつねに自由加群の系を作れるという主張です。
この定理は「平坦とは自由に限りなく近いこと」という見方を与えます。有限生成という条件を付けると、この近さが本当の自由性に化けることをあとで見ます。
自由加群は平坦
自由加群 は平坦です。テンソル積は直和と交換するからです。
単射 をテンソルすると各成分ごとの単射になるので、全体としても単射になります。階数は有限でなくてかまいません。
もっとも基本的な例で、以後の議論はここへ帰着させることが多くなります。
射影加群は平坦
射影加群 も平坦です。 は自由加群の直和因子なので、 と書けます。
テンソルしても直和分解は保たれるので、 の単射性から の単射性が取り出せます。
逆は成り立ちません。次に見る が、平坦だが射影でない例になります。
局所化は平坦
積閉集合 による局所化 は -加群として平坦です。
という自然な同型があり、局所化は完全関手だからです。分母を許す操作で元が消えることはありません。
とくに 上の は平坦です。 は 上自由でも射影でもないので、平坦性が真に広い概念であることがわかります。
平坦でない最小の例
()は 上平坦ではありません。定義に沿って確かめます。
単射 を取り、 をテンソルします。 なので、得られる射は です。
の中では なので、この射はゼロ写像になります。単射だったものが潰れました。
原因はねじれです。 の元はすべて 倍で消えるので、 倍写像を単射に保てません。
Tor で確かめる
同じことを Tor で見ます。 は の -ねじれ部分 に一致します。
自由分解 に をテンソルし、 倍写像の核を取ればよいからです。 とすると次が得られます。
いくつか値を並べてみます。
互いに素なら消えますが、消えない相手が 1 つでもあれば平坦ではありません。 なら を取れば が残るので失格です。
イデアルによる判定
定義はすべての単射を調べよという条件ですが、実際にはイデアルだけ見れば足ります。
が平坦であることと、 の任意のイデアル について が単射であることは同値。
さらに有限生成イデアルだけ調べれば十分。任意のイデアルは有限生成イデアルの有向和であり、テンソル積は有向帰納極限と交換するため。
ネーター環ならすべてのイデアルが有限生成なので、2 つの条件は初めから一致します。実際の判定ではこの形を使うことが多くなります。
無限個の単射を調べる問題が、イデアルという手の届く対象に落ちるところが要点です。
Tor による特徴づけ
が平坦であることと、任意の -加群 について となることは同値です。
さらにこのとき、すべての で が成り立ちます。長完全列を使えば の場合から順に上がっていけるからです。
イデアル判定と組み合わせると、有限生成イデアル について を確かめれば足ります。
Tor の言葉にすると、平坦性はホモロジー代数の道具がそのまま使える条件になります。
平坦ならねじれがない
を整域とします。 が平坦なら はねじれなしです。直観 1 を証明の形にしておきます。
を でない元とすると は単射です。 をテンソルすると になり、平坦性からこれも単射になります。
つまり なら です。ねじれ元は存在しません。
この含意は整域でありさえすれば成り立ちます。逆向きが成り立つかどうかが、環の性質を映し出します。
単項イデアル整域では逆も成り立つ
が単項イデアル整域なら、ねじれなしの -加群は平坦です。
イデアル判定を使います。イデアルは の形なので、 の単射性だけを見ればよいことになります。
なら で、この射は に一致します。ねじれがなければ単射です。
ねじれなしと平坦が一致する。イデアルが単項、または局所的に単項になることが効いている
平坦ならねじれなしだが、逆は成り立たない。 の が反例になる
デデキント環でも同じ結論が成り立ちます。より一般に、Prüfer 整域では「ねじれなし」と「平坦」が同値になります。
平坦だが自由でない例
はデデキント環ですが、単項イデアル整域ではありません。イデアル を考えます。
は整域の部分加群なのでねじれなしです。前節から は平坦になります。
しかし は自由ではありません。階数 1 の自由加群なら単項イデアルになりますが、 は単項でないからです。階数 2 以上も無理で、商体の中では任意の 2 元が従属になります。
有限生成で平坦なのに自由でない、という例です。 が局所環でないために起きています。
ねじれなしでも平坦でない例
逆向きの反例を挙げます。 とし、 を考えます。
は整域の部分加群なのでねじれなしです。ところが は平坦ではありません。
極大イデアル で局所化します。 で、これが平坦ならあとで見る定理から自由、すなわち単項になるはずです。
しかし の極大イデアルは 2 元でしか生成できません。よって は平坦ではなく、整域が単項イデアル整域でなければ、ねじれなしから平坦は出ないとわかります。
平坦性は局所的な性質
平坦性は局所化で調べられます。次の 3 つは同値です。
加群の射が単射であることと、すべての極大イデアルで局所化した射が単射であることが同値だ、という事実が効いています。
この同値により、平坦性の問題はつねに局所環上の問題へ帰着できます。次の定理が使えるようになるので、実際の判定はここを通ることが多くなります。
局所環上では自由になる
を局所環、 を有限生成 -加群とします。このとき が平坦であることと自由であることは同値です。
自由なら平坦なので、示すべきは逆向きです。中山の補題で最小生成系を取り、 を作ります。
が平坦なら なので、 をテンソルした列も左端が保たれます。生成系の最小性から右側が同型になり、 が出ます。
がネーター環なら は有限生成なので、ふたたび中山の補題から 、すなわち です。ネーター性を仮定しない一般の局所環でも定理は成り立ちますが、そのときは方程式判定条件を直接使います。
有限生成を外すと崩れる
前節から有限生成を落とすと成り立ちません。、 を取ります。
は の商体、つまり でない元すべてによる局所化なので平坦です。局所環の上にある平坦加群になっています。
しかし は 上自由ではありません。階数 1 なら となる があるはずですが、 がそこに入らないからです。
階数 2 以上も無理です。 の任意の 2 元は 上従属だからで、有限生成という仮定が本質的だとわかります。
局所でないと崩れる
局所という条件も外せません。、 を取ります。
中国剰余定理から なので、 は の直和因子です。したがって射影加群であり、平坦になります。
一方 は 上自由ではありません。 の元は 6 個なので自由加群の元の個数は になるはずですが、 の元は 2 個だからです。
有限生成で平坦なのに自由でない例です。 が局所環でないために起きています。
包含関係の整理
ここまでに出た概念の関係を整理します。
<svg viewBox="0 0 700 386" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" style="max-width:100%;height:auto;display:block;margin:0 auto"><defs><marker id="fm-blue" viewBox="0 0 10 10" refX="9" refY="5" markerWidth="7" markerHeight="7" orient="auto"><path d="M 0 0 L 10 5 L 0 10 z" fill="#1b81e0"/></marker><marker id="fm-gray" viewBox="0 0 10 10" refX="9" refY="5" markerWidth="7" markerHeight="7" orient="auto"><path d="M 0 0 L 10 5 L 0 10 z" fill="#8a8a8a"/></marker></defs><rect x="150" y="16" width="220" height="44" rx="2" fill="#ebf5ff" stroke="#1b81e0"/><text x="260" y="43" font-size="13" fill="#1f1f1f" text-anchor="middle">自由加群</text><rect x="150" y="106" width="220" height="44" rx="2" fill="#ebf5ff" stroke="#1b81e0"/><text x="260" y="133" font-size="13" fill="#1f1f1f" text-anchor="middle">射影加群</text><rect x="150" y="196" width="220" height="44" rx="2" fill="#ebf5ff" stroke="#1b81e0" stroke-width="1.5"/><text x="260" y="223" font-size="14" fill="#1f1f1f" text-anchor="middle">平坦加群</text><rect x="150" y="286" width="220" height="44" rx="2" fill="#ebf5ff" stroke="#1b81e0"/><text x="260" y="313" font-size="13" fill="#1f1f1f" text-anchor="middle">ねじれなし(整域上)</text><line x1="228" y1="60" x2="228" y2="100" stroke="#1b81e0" marker-end="url(#fm-blue)"/><line x1="292" y1="100" x2="292" y2="66" stroke="#8a8a8a" stroke-dasharray="5 4" marker-end="url(#fm-gray)"/><line x1="228" y1="150" x2="228" y2="190" stroke="#1b81e0" marker-end="url(#fm-blue)"/><line x1="292" y1="190" x2="292" y2="156" stroke="#8a8a8a" stroke-dasharray="5 4" marker-end="url(#fm-gray)"/><line x1="228" y1="240" x2="228" y2="280" stroke="#1b81e0" marker-end="url(#fm-blue)"/><line x1="292" y1="280" x2="292" y2="246" stroke="#8a8a8a" stroke-dasharray="5 4" marker-end="url(#fm-gray)"/><text x="386" y="79" font-size="12" fill="#8a8a8a">反例 Z[√-5] のイデアル (2, 1+√-5)</text><text x="386" y="169" font-size="12" fill="#8a8a8a">反例 Z 上の Q</text><text x="386" y="259" font-size="12" fill="#8a8a8a">反例 k[x,y] のイデアル (x, y)</text><text x="132" y="79" font-size="12" fill="#8a8a8a" text-anchor="end">つねに</text><text x="132" y="169" font-size="12" fill="#8a8a8a" text-anchor="end">つねに</text><text x="132" y="259" font-size="12" fill="#8a8a8a" text-anchor="end">整域なら</text><text x="350" y="362" font-size="12" fill="#1b81e0" text-anchor="middle">局所環の上で有限生成なら、上の 3 つは一致する</text></svg>実線は成り立つ含意、破線は成り立たない向きで、それぞれ反例を添えています。
局所環の上で有限生成という条件を付けると、自由・射影・平坦の 3 つが一致します。条件を 1 つでも外すと崩れることは、直前の 2 節で見たとおりです。
上の について、正しいものはどれですか。
- 自由加群なので平坦である
- 局所化なので平坦だが、自由でも射影でもない
- ねじれがあるので平坦でない
- 有限生成でないので平坦でない
平坦射の定義
環準同型 が平坦射であるとは、 を によって -加群と見たときに平坦であることをいいます。
幾何では向きが逆になり、 が平坦射である、という言い方をします。
平坦射の合成は平坦射になります。基底変換でも平坦性は保たれるので、族を取り替えても条件が生き残ります。
多項式環の拡大
は平坦射です。 は 上 を基底とする自由加群だからです。
より一般に はつねに平坦になります。単項式が基底になるので、自由加群として平坦です。
幾何では という射にあたります。どの点の上でもファイバーがアフィン空間で、まったく変わらないので跳びようがありません。
完備化
ネーター環 とイデアル に対して、-進完備化 は 上平坦です。
や が例になります。どちらも自由加群ではありませんが平坦です。
完備化は局所的な情報を保ったまま扱いやすくする操作で、平坦性はその「情報を壊さない」ことの保証にあたります。ネーター性は落とせません。
平坦でない射
は平坦ではありません。 は 倍で消えるねじれ加群だからです。
確かめます。単射 に をテンソルすると になり、単射ではありません。
幾何では、直線 の中の 1 点を取り出す射にあたります。1 点だけを抜き出す操作は族としては最悪の跳びで、平坦性は望めません。
有限生成イデアルによる閉埋め込みが平坦になるのは、そのイデアルが冪等元で生成されるとき、つまり開かつ閉の場合に限られます。閉部分スキームを取る操作は一般に平坦ではありません。
基底変換と完全性
が平坦射のとき、-加群の完全列は へ移しても完全なままです。
-加群の短完全列 に を施すと、次の列が完全になります。
これが平坦射のもっとも使われる帰結です。係数環を取り替えても、部分加群や商加群の関係が崩れません。
Tor の言葉では ()にあたります。基底変換で余計な項が出ない、というのが平坦性の実務的な意味です。
ファイバーが跳ぶ例
、 とし、 で を作ります。この射は平坦ではありません。
を -加群として見ると、-基底は と です。 なので、 たちはすべてねじれ元になります。
は単項イデアル整域なので、ねじれがある時点で平坦ではありません。
<svg viewBox="0 0 700 322" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" style="max-width:100%;height:auto;display:block;margin:0 auto"><line x1="150" y1="118" x2="580" y2="118" stroke="#1f1f1f" stroke-width="1.5"/><line x1="300" y1="34" x2="300" y2="190" stroke="#1b81e0" stroke-width="3"/><circle cx="300" cy="118" r="4" fill="#1f1f1f"/><circle cx="450" cy="118" r="4.5" fill="#1f1f1f"/><line x1="150" y1="266" x2="580" y2="266" stroke="#1f1f1f" stroke-width="1.5"/><circle cx="300" cy="266" r="4.5" fill="#1b81e0"/><circle cx="450" cy="266" r="4.5" fill="#1f1f1f"/><line x1="300" y1="196" x2="300" y2="258" stroke="#8a8a8a" stroke-dasharray="4 4" marker-end="url(#fm-gray)"/><line x1="450" y1="128" x2="450" y2="258" stroke="#8a8a8a" stroke-dasharray="4 4" marker-end="url(#fm-gray)"/><text x="600" y="122" font-size="12" fill="#1f1f1f">Spec S</text><text x="600" y="270" font-size="12" fill="#1f1f1f">Spec k[x]</text><text x="300" y="24" font-size="12" fill="#1b81e0" text-anchor="middle">y 軸</text><text x="300" y="290" font-size="12" fill="#1b81e0" text-anchor="middle">x = 0</text><text x="450" y="290" font-size="12" fill="#1f1f1f" text-anchor="middle">x = a</text><text x="196" y="212" font-size="12" fill="#1b81e0" text-anchor="middle">ファイバーは y 軸</text><text x="196" y="230" font-size="12" fill="#1b81e0" text-anchor="middle">(次元 1)</text><text x="524" y="150" font-size="12" fill="#1f1f1f" text-anchor="middle">ファイバーは 1 点</text><text x="524" y="168" font-size="12" fill="#1f1f1f" text-anchor="middle">(次元 0)</text><text x="365" y="312" font-size="12" fill="#8a8a8a" text-anchor="middle">x = 0 の上だけ次元が跳ぶので平坦でない</text></svg>幾何ではこうなります。 は 軸と 軸の和集合で、それを 軸へ射影しています。
の上のファイバーは 1 点ですが、 の上では 軸まるごとです。次元が から へ跳びました。
代数の側でねじれとして現れたものが、幾何の側では次元の跳びとして見えています。2 つの直観が同じ現象を指していることがわかります。
ブローアップは平坦でない
原点でのブローアップ も平坦ではありません。
原点以外の点の上のファイバーは 1 点です。ところが原点の上のファイバーは射影直線 で、次元 1 になります。
<svg viewBox="0 0 700 288" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" style="max-width:100%;height:auto;display:block;margin:0 auto"><line x1="130" y1="226" x2="580" y2="226" stroke="#1f1f1f" stroke-width="1.5"/><circle cx="350" cy="226" r="5" fill="#1b81e0"/><circle cx="210" cy="226" r="4" fill="#1f1f1f"/><circle cx="280" cy="226" r="4" fill="#1f1f1f"/><circle cx="440" cy="226" r="4" fill="#1f1f1f"/><circle cx="510" cy="226" r="4" fill="#1f1f1f"/><circle cx="210" cy="102" r="4" fill="#1f1f1f"/><circle cx="280" cy="102" r="4" fill="#1f1f1f"/><circle cx="440" cy="102" r="4" fill="#1f1f1f"/><circle cx="510" cy="102" r="4" fill="#1f1f1f"/><line x1="350" y1="56" x2="350" y2="148" stroke="#1b81e0" stroke-width="3"/><line x1="210" y1="110" x2="210" y2="216" stroke="#8a8a8a" stroke-dasharray="4 4"/><line x1="280" y1="110" x2="280" y2="216" stroke="#8a8a8a" stroke-dasharray="4 4"/><line x1="440" y1="110" x2="440" y2="216" stroke="#8a8a8a" stroke-dasharray="4 4"/><line x1="510" y1="110" x2="510" y2="216" stroke="#8a8a8a" stroke-dasharray="4 4"/><line x1="350" y1="154" x2="350" y2="216" stroke="#8a8a8a" stroke-dasharray="4 4"/><text x="600" y="106" font-size="12" fill="#1f1f1f">ブローアップ</text><text x="600" y="230" font-size="12" fill="#1f1f1f">平面</text><text x="350" y="42" font-size="12" fill="#1b81e0" text-anchor="middle">例外因子 P^1(次元 1)</text><text x="350" y="256" font-size="12" fill="#1b81e0" text-anchor="middle">原点</text><text x="180" y="80" font-size="12" fill="#1f1f1f" text-anchor="middle">1 点</text><text x="540" y="80" font-size="12" fill="#1f1f1f" text-anchor="middle">1 点</text><text x="355" y="278" font-size="12" fill="#8a8a8a" text-anchor="middle">原点の上だけファイバーが膨らむので平坦でない</text></svg>1 点だったものが突然 に膨らんでいます。ファイバーの次元が跳ぶ典型例で、平坦性の条件をはっきり破ります。
ブローアップは幾何の道具として有用ですが、族としては平坦ではありません。有用であることと平坦であることは別だ、という点は押さえておくとよいでしょう。
変形の枠組みとしての平坦性
平坦性が族の正しい条件だとされる理由は、数値的な不変量が保たれる点にあります。
射影的な平坦族では、ファイバーの Hilbert 多項式が一定になります。次元・次数・算術種数といった量が動きません。
逆に、連結なネーター基底の上では Hilbert 多項式が一定な族は平坦になります。平坦性は「連続的に変形している」ことの代数的な定式化だとみなせます。
Hilbert スキームが平坦族の分類として構成されるのも、この事実があるからです。跳びを許さないという条件が、そのまま良いモジュライの条件になっています。
平坦性が生まれるまで
平坦性の概念は代数幾何の必要から生まれました。抽象的な定義が先にあったわけではありません。
代数幾何と解析幾何を比較する論文で、テンソル積が完全性を保つ加群として平坦加群を導入した。
EGA で平坦射を族の基本条件として据え、降下理論や Hilbert スキームの土台に置いた。
Serre が取り出したのは、局所環とその完備化を比べるための技術的な条件でした。それが Grothendieck の手で、族と変形を扱う中心概念になります。
現在の平坦性は、可換環論とホモロジー代数と代数幾何を貫く共通の語彙です。名前の由来だった幾何的な直観も、そのまま生きています。











Q は Z の局所化なので平坦です。一方、階数 1 なら Q=Zq となる q が要りますが q/2 が入らず、階数 2 以上なら任意の 2 元が従属になるので自由ではありません。射影でもありません。