van Kampenの定理

van Kampenの定理は、空間を部分空間に分解して基本群を計算するための強力な道具です。複雑な空間の基本群を既知の空間から求められます。

定理の主張

とし、 がすべて弧状連結な開集合とします。基点 を固定すると、

が成り立ちます。右辺は融合積(amalgamated free product)です。

融合積とは

と共通部分群 (準同型 , が与えられている)に対して、融合積 は次の普遍性を持つ群です。

からの準同型が 上で一致するような任意の群 への写像が、 を経由して一意に分解されます。

直感的には、 の元を自由に並べた語全体から、 の元を でも でも同じとみなす関係で割った群です。

共通部分が単連結の場合

が単連結ならば なので、融合積は自由積になります。

楔和への応用

(8の字)の基本群を計算します。

を一方の円周を含む近傍、 を他方の円周を含む近傍とし、 を接点の近傍(可縮)とします。

, , なので

となり、2元生成の自由群が得られます。

トーラスへの応用

(トーラスから一点を除いた空間)と (小さな円板)で覆います。

なので は可縮で なので

の生成元は (交換子)に対応します。van Kampenの定理から

種数 の閉曲面

種数 の向き付け可能閉曲面 の基本群は

です。 は交換子です。 でトーラス、 で非アーベル群となります。

実射影平面

は円板の境界を2対1で貼り合わせた空間です。van Kampenの定理を適用すると

クラインの壺

クラインの壺 の基本群は

です。これは非アーベル群であり、 です。

一般化:複数の開集合

3つ以上の開集合で覆う場合にも van Kampen の定理は一般化できます。神経(nerve)と呼ばれる組み合わせ的構造を用いて記述されます。

共通部分が単連結

(自由積)。楔和の計算に有効。

共通部分が非自明

(融合積)。関係式が追加される。曲面の計算に有効。