パンもハムもチーズも 1 回で半分に、ハム・サンドイッチ定理
パン、ハム、チーズがどんな形でどこに置かれていても、1 回のまっすぐな切り込みで 3 つとも同時に半分にできます。積み重なっていても、ばらばらでも変わりません。
これがハム・サンドイッチ定理です[1]。 次元では、 個の対象を 1 枚の超平面で同時に二等分できる。
以下では 次元の回転ナイフの議論から始め、ボルスク・ウラムへの帰着、離散版、そして計算の難しさまで扱います。
主張
の中に、有限な測度を持つルベーグ可測集合が 個あるとします。
このとき、 個すべてを同時に二等分するアフィン超平面が存在します[1,3]。
ならパン・ハム・チーズを 1 枚の平面で、 なら 2 枚のパンケーキを 1 本の直線で。
使う仮定は少ない
形についての仮定がありません。凸でなくてよく、連結でなくてよい。
重なっていても差し支えありません。3 つが同じ場所にあっても、離れていても同じ主張。
要るのは測度が有限であることだけです[3]。
の回転ナイフ
次元で考えます。角度 を 1 つ決めると、その向きの直線で 1 枚目を二等分するものが存在します。中間値の定理から。
その直線が 2 枚目をどう分けるかを見ます。 を から まで回すと、直線は同じ位置に戻りますが表裏が入れ替わる[1]。
したがって 2 枚目の片側の量は、始めと終わりで大小が逆転します。途中で等しくなる角度がある。
回転させて追いかける
角度を回しながら、両方の片寄りを見ます。
直線はどの角度でも青を二等分しています。赤の片寄りだけが動く。
右のグラフが端で符号を変えるので、途中で を通ります。そこが両方を二等分する角度[1]。
ボルスク・ウラムへの帰着
一般次元では、超平面を球面でパラメータ表示します。単位ベクトル と定数から超平面 を決める。
ごとに、 番目の対象を二等分する を選びます。残る 個について片寄りを並べると、 ができる[1,3]。
対蹠点 は同じ超平面を裏返したものに当たり、片寄りの符号が反転します。ボルスク・ウラムから となる が存在し、そこで全部の片寄りが 。
超平面の向きを球面でパラメータ表示する
1 個を二等分するように位置を決める
残りの片寄りを並べて写像を作る
ボルスク・ウラムで零点をとる
歴史
シュタインハウスがスコットランドの書に問題として書き、バナッハが 1938 年にボルスク・ウラムを使って解きました[1,3]。
一般次元はストーンとタキーが 1942 年に扱っています。ストーン・タキーの定理とも呼ばれる。
数学の定理に食べ物の名前が付いた例として、よく引かれます。
ストーン・タキーの一般化
切る道具を超平面に限らなくても成り立ちます。
個の線型独立な可測関数の線型結合で書ける曲面なら、同じ主張が通る[1]。
たとえば 次元で をとれば、直線だけでなく円でも切れます。3 つの図形を 1 つの円で同時に二等分できる。
例:円で切る
平面上の 3 つの領域を、1 本の円周で同時に二等分できます。
の形の曲線を考え、 をパラメータにする。直線は半径無限大の場合として含まれます。
道具を増やせば、同時に切れる対象も増える、という構図です[1]。
離散版
点の有限集合でも同じことが言えます。赤い点と青い点が平面にあれば、両方を同時に二等分する直線が存在する[1]。
点が直線の上に乗る場合の扱いを決めておきます。どちら側に数えてもよい、とするか、除くとするか。
奇数個のときは正確に半分にできないので、「どちら側も半分未満」という形に読み替えます。
例:離散版を図で見る
赤と青の点を平面に置き、両方を同時に二等分する直線を探します。
直線はつねに赤を 2 対 2 に分けています。青の分かれ方だけが角度で変わる。
対 から 対 まで動くので、途中で 対 を通ります[1]。
例:3 つの立体を切る
の元の形が、パン・ハム・チーズの話です。
平面の自由度は 3 で、二等分の条件も 3 つ。数が釣り合っているので解が出る。
サンドイッチが崩れていても、材料が飛び散っていても成り立ちます。位置の仮定が一切ないところが定理の強み。
例:赤 5 点と青 4 点
赤が 5 点なら、直線上に 1 点を乗せて両側 2 点ずつ、とできます。
青が 4 点なら両側 2 点ずつ。同時に達成する直線が必ずある。
離散版は連続版から極限で出せます。点を小さな円板に太らせてから縮める[1]。
の中の 4 つの立体を、1 枚の平面で同時に二等分できるか。
- 必ずできる
- できないことがある
- 立体が凸なら必ずできる
- 立体が交わらなければ必ずできる
何個までなら切れるか
次元で 個、というのが上限です。超平面のパラメータが 個の自由度しか持たないため。
向きが で 個、位置が 個。合わせて 個の条件まで課せます。
自由度と条件の数がちょうど釣り合っている、というのがこの定理の形。
自由度と条件が釣り合い、必ず解が存在します。
条件のほうが多く、一般には解がありません。切る道具を増やす必要があります。
ネックレス分割との関係
色のビーズを並べたネックレスを 2 人で分けるとき、 回の切断で足ります[4]。
連続版はハム・サンドイッチとほぼ同じ形で、区間上の 個の測度を 回の切断で二等分する主張。
離散版は連続版から丸めて出します。どちらもボルスク・ウラムが土台[4]。
計算の難しさ
存在は保証されても、見つける手続きは別の話です。
次元では 時間の最適な算法があります[1]。 次元でも を固定すれば多項式時間。
を入力の一部にすると難しくなります。ネックレス分割と同値で、PPA 完全と呼ばれる複雑性クラスに入る[1]。
多項式時間の算法は期待されていません。存在証明が非構成的であることが、そのまま計算の難しさに現れています。
存在証明と構成の隔たり
ボルスク・ウラムの証明は、矛盾を導くか位相不変量を使う形です。切る場所を教えてくれません。
タッカーの補題を使う証明は有限の手続きに落ちますが、三角形分割の細かさが必要なぶん、計算量が跳ね上がります。
「あることは分かるが探せない」という状況の代表例になっています。










n 次元で同時に切れるのは n 個までです。3 次元で 4 個は超えているので、一般には切れません。