ファイバー束の定義と例

ファイバー束は空間を局所的に積空間とみなせる構造です。多様体論や位相幾何学で基本的な役割を果たし、ベクトル束や主束など重要な特殊ケースを含みます。

ファイバー束の定義

ファイバー束(fiber bundle)は次の組 です。

:全空間(total space)
:底空間(base space)
:ファイバー(fiber)
:射影(projection)

任意の に対して開近傍 が存在し、 と同相であり、この同相が への射影と両立します。

局所自明性

ファイバー束は局所的には積 と同じ構造を持ちますが、大域的には「ねじれ」があり得ます。

底空間を覆う開被覆 上で となる同相(局所自明化)が存在します。

自明束

, となる場合を自明束といいます。

すべてのファイバー束が自明とは限りません。自明でない束は「ねじれ」を持ちます。

メビウスの帯

メビウスの帯は円周 上の ファイバー束です。

で、 です。

メビウスの帯は自明束ではありません。帯を一周するとファイバーの向きが反転します。

被覆空間

被覆写像 は離散ファイバーを持つファイバー束とみなせます。

をファイバーとするファイバー束です。

Hopf束

Hopf束は から へのファイバー束で、ファイバーは です。

で定義されます。これは非自明な束であり、 です。

変換関数

重なり 上で2つの局所自明化を比較すると、変換関数 が定まります。

変換関数はコサイクル条件 を満たします。ファイバー束は変換関数で分類されます。

主束

ファイバーが群 で、 が右からファイバーに自由かつ推移的に作用する束を主 -束といいます。

主束は対称性を持つファイバー束であり、ゲージ理論の数学的基礎となります。

切断

ファイバー束 の切断(section)とは、連続写像 を満たすものです。

自明束は常に切断を持ちますが、非自明束は切断を持たないことがあります。

切断の存在と障害

ベクトル束の零でない切断の存在は、特性類によって判定されます。

の接束には零でない切断が存在しません(毛玉定理)。これはEuler類が非自明であることから従います。

自明束

。大域的切断が常に存在。ねじれなし。

非自明束

局所的には積だが大域的にはねじれを持つ。切断の存在に障害がありうる。メビウスの帯、Hopf束など。