de Rhamの定理は、滑らかな多様体上のde Rhamコホモロジーと特異コホモロジーが同型であることを主張します。ここでは層コホモロジーを用いた証明の概略を解説します。
定理の主張
を滑らかな多様体とする。実係数特異コホモロジーとde Rhamコホモロジーの間に自然な同型
が存在する。この同型は積分によって与えられる。
証明の戦略
証明は層の理論を用います。de Rham複体と特異コチェイン複体がともに定数層 の分解を与え、層コホモロジーの一意性から同型が従います。
層の準備
上の前層 は、各開集合 にアーベル群 を対応させ、制限写像を持つものです。層は貼り合わせ条件を満たす前層です。
定数層 は \underline{\mathbb{R}}(U) = {\text{U 上の局所定数関数}} で定義されます。 が連結なら です。
de Rham複体の層
を -形式の層とします。 は 上の滑らかな -形式全体です。
外微分 は層の準同型を与え、de Rham複体
が得られます。 は定数関数の埋め込みです。
Poincaréの補題(局所版)
の任意の凸開集合 上で、閉形式は完全形式です。すなわち ならば となる が存在します。
これは de Rham 複体が茎(stalk)において完全であることを意味します。
de Rham複体は分解
Poincaréの補題から、列
は完全列であり、 の分解(resolution)を与えます。
軟層と非輪状分解
層 が軟層(soft sheaf)であるとは、任意の閉集合 に対して (茎の直積への写像)が全射となることです。
は1の分割が存在するため軟層です。滑らかな関数を好きな場所で切り取れます。
軟層は非輪状(acyclic)、すなわち ()を満たします。
層コホモロジーの計算
層 の非輪状分解 に対して、層コホモロジーは
で計算されます。右辺は大域切断の複体のコホモロジーです。
de Rhamコホモロジーとの同一視
de Rham複体は の非輪状分解なので、
が得られます。
特異コホモロジーとの比較
特異コチェインの層 を、( 上の特異コチェイン)で定義します。
も軟層であり、
は の非輪状分解を与えます(局所的に特異ホモロジーが自明であることから)。
同型の証明
2つの非輪状分解から得られるコホモロジーは同型なので、
が得られます。
積分による同型の明示
同型は具体的に積分で与えられます。 と (-サイクル)に対して
Stokesの定理から、これはコホモロジー類とホモロジー類のみに依存します。
この対応が非退化であることがde Rhamの定理の内容です。
Stokesの定理との関係
が完全形式 ならば、( がサイクルなら )。
が境界 ならば、( が閉形式なら )。
したがって積分はコホモロジーとホモロジーの間の well-defined なペアリングを与えます。
抽象的だが統一的。非輪状分解の一意性を利用。代数幾何への一般化が容易。
積分を直接使う。幾何的に明快。Whitney や de Rham 自身による方法。