圏論から見る位相幾何学

圏論は位相幾何学の構造を整理し、異なる理論間の関係を明確にする言語です。ここでは圏論の基本概念と位相幾何学への応用を解説します。

圏の定義

圏(category) は次のデータからなります。

対象(object)の集まり
対象 の間の射(morphism)の集まり
射の合成
各対象 に恒等射

合成は結合律を満たし、恒等射は単位元として働きます。

位相幾何学に現れる圏

位相空間の圏 は、対象が位相空間、射が連続写像です。

基点付き空間の圏 は、対象が基点付き空間 、射が基点を保つ連続写像です。

アーベル群の圏 は、対象がアーベル群、射が群準同型です。

函手の定義

函手(functor) は、圏から圏への「構造を保つ写像」です。

対象 を対象 に送る
を射 に送る
および

共変函手と反変函手

上の定義の函手は共変函手です。射の向きを保存します。

反変函手は射の向きを逆転させます。 となり、 です。

ホモロジーは函手

次ホモロジー は共変函手です。

位相空間 をアーベル群 に、連続写像 を群準同型 に送ります。

が成り立ちます。

コホモロジーは反変函手

次コホモロジー は反変函手です。

連続写像 を誘導します。向きが逆転していることに注意してください。

基本群も函手

基本群 は共変函手です。

基点付き空間 を群 に、基点を保つ連続写像 を群準同型 に送ります。

自然変換

函手 の間の自然変換(natural transformation) は、各対象 に射 を対応させ、任意の に対して図式

が可換となるものです。

自然変換の例:Hurewicz準同型

Hurewicz 準同型 は、函手 から への自然変換です。

任意の連続写像 に対して が成り立ちます(両辺の は異なる函手の誘導写像)。

圏同値

函手 が圏同値を与えるとは、 かつ (自然同型)が成り立つことです。

被覆空間の圏と -集合の圏が同値であることは、被覆空間の分類定理の圏論的表現です。

随伴函手

函手 が随伴()であるとは、自然な全単射

が存在することです。 を左随伴、 を右随伴といいます。

懸垂とループ空間の随伴

懸垂函手 とループ空間函手 は随伴です。

ホモトピー類の集合の間の自然な全単射があります。

ホモトピー圏

ホモトピー圏 は、対象が位相空間、射がホモトピー類 です。

ホモトピー同値な空間はこの圏で同型となります。Whitehead の定理は、CW 複体の間で弱同値が同型となることを主張します。

普遍性と表現可能函手

対象 が普遍性を持つとは、 または が特定の函手と自然同型になることです。

完備化の普遍性、自由群の普遍性などが例です。

具体的構成

完備化、商空間などを直接構成。存在と具体的な形がわかる。

普遍性による特徴づけ

射の性質で対象を特徴づける。一意性が自動的に従う。異なる構成が同じ普遍性を満たせば同型。