部分群と生成元とは?定義・判定法・巡回群・ラグランジュの定理を具体例でわかりやすく解説
偶数全体 は足し算で閉じている。偶数どうしを足しても偶数のままだ。
奇数全体はそうならない。 で、たちまち外へ出てしまう。
この差が部分群という概念である。群の部分集合のうち、それ自身が群として完結しているものだけを部分群と呼ぶ。そして多くの群は、ごく少数の元から組み上がる。
部分群の定義
群 の部分集合 が の演算のもとで群をなすとき、 を の部分群といい、 と書く。
条件を書き下せば次の 3 つになる。
結合法則は から受け継ぐので確かめる必要がない。判定はこの 3 点に尽きる。
判定条件を 1 つにまとめる
実用上は 1 本の条件で足りる。 であり、任意の に対して が成り立てばよい。
は空でないから元 が取れる。 と置けば となり、単位元が入る。
次に とすれば 。逆元で閉じることが出た。
最後に に対し が使えるので、。積でも閉じ、3 条件がそろう。
有限なら積だけ見ればよい
が有限集合なら条件はさらに緩む。空でなく積で閉じてさえいれば、それだけで部分群になる。
を取り、 を並べる。 は有限なのでどこかで重複し、()となる。
両辺に を掛けて ()を得る。 が言えた。
なら で逆元は自分自身。 なら となる。逆元の条件は有限性から自動的に従うのだ。
積で閉じているのに部分群でない例
有限性を外すと話が変わる。加法群 の中で、自然数全体 を見よう。
足し算で閉じており、結合法則も成り立つ。それでも は部分群ではない。
の逆元である が入っていないからだ。無限集合では、積で閉じることと逆元をもつことは別の話である。
自明な部分群
どんな群 にも と 自身という部分群がある。前者を自明部分群という。
この 2 つ以外の部分群を真の部分群と呼ぶ。群の構造を調べるとは、多くの場合その真の部分群を数え上げる作業になる。
例: の部分群は に限る
とする。 なら として話は終わる。
そうでなければ は正の元をもつ。 なら だから、正負のどちらかは必ず現れるためだ。正の元のうち最小のものを と置く。
任意の を で割り、()と書く。 なので となる。
の最小性から 、すなわち 。よって である。
整数の除法定理だけで、 の部分群がすべて決まってしまった。
部分群の共通部分
部分群の族 に対し、共通部分 はふたたび部分群になる。
証明は一瞬だ。 がすべての に属するなら もすべての に属し、単位元はどの にもある。
族が無限個でも成り立つ。この事実が、あとで見る「生成される部分群」の定義を支えている。
例:
具体的に計算しよう。 の倍数であり、かつ の倍数である整数とは、 の倍数のことにほかならない。
一般には となる。共通部分を取る操作は、最小公倍数を取る操作である。
和集合は部分群にならない
共通部分と違い、和集合はあっさり壊れる。 を見よう。
と はどちらもこの集合に入る。ところが は偶数でも の倍数でもない。積で閉じていない。
そもそも が部分群になるのは、 または のときに限る。
どちらの包含も成り立たないとすれば、 と が取れる。このとき はどちらにも入らない。
なら となって矛盾する。 なら で、やはり矛盾だ。
和集合が部分群になるのは、一方が他方を丸ごと含む退屈な場合だけなのである。
積集合
2 つの部分群から新しい部分群を作りたい。積集合 が候補になる。
有限群なら要素数が計算できる。
ただし は一般に部分群ではない。部分群になるのは が成り立つとき、そのときに限られる。
例: で が壊れる
、 と置く。どちらも位数 2 で、共通部分は だけだ。
公式に入れると になる。ところが で、 は を割らない。
あとで見るラグランジュの定理により、位数 4 の部分群は に存在しえない。したがって は部分群ではない。実際 を書き下すと で、 が欠けている。
例: の部分群をすべて求める
は位数 12 の巡回群である。部分群は の約数と 1 対 1 に対応する。
約数は の 6 個。それぞれを位数とする部分群がちょうど 1 つずつある。
が位数 2、 が位数 3 になる。
が位数 4、 が位数 6 である。
これに と全体を加えて、部分群は全部で 6 個。多くも少なくもない。
例:位数 4 の 2 つの群
位数が同じでも部分群の姿は変わる。位数 4 の群は、同型を除いて 2 つしかない。
生成元 の位数は 4。部分群は 、、全体の 3 個だけ。
単位元以外の 3 元はすべて位数 2。部分群は 、位数 2 のもの 3 個、全体の 5 個。
は 1 つの元では生成できない。どの元も 2 乗すれば に戻ってしまうからだ。
と書けば で、2 元あれば足りる。 の中では として姿を現す。
例: の部分群をすべて求める
は位数 6 なので、部分群の位数は 1, 2, 3, 6 のいずれかになる。
位数 2 の部分群は互換の個数だけあり、位数 3 のものは 3 元巡回置換が作る ただ 1 つ。合わせて 6 個である。
位数 4 の部分群は存在しない。 が を割らないためだ。
例: の部分群
正方形の対称性のなす群 は位数 8 である。 度回転 と鏡映 で生成され、、 を満たす。
位数 2 の部分群は 5 個ある。 度回転が生む が 1 つ。
残りの 4 つは、正方形の 4 本の対称軸に対応する 、、、 だ。
位数 4 の部分群は 3 個。巡回群 と、クライン型の 、 である。
自明な 2 つを足して、部分群は合計 10 個。位数 8 の群としては賑やかな部類に入る。
例:行列群の部分群
(正則行列の全体)の中で、行列式が のものを集めると特殊線型群 になる。
行列式は 、 と振る舞う。 という条件はこの演算で保たれるので、 は部分群である。
直交行列全体 も部分群で、そのうち のものが回転群 になる。可逆な対角行列の全体、対角成分が でない上三角行列の全体も、それぞれ部分群をなす。
一方、行列式が の行列全体は部分群ではない。積を取れば行列式が になり、条件から外れてしまう。
例:円周群の有限部分群
乗法群 の中で、絶対値 の複素数の全体 は部分群である。積も逆数も絶対値を変えないからだ。
の有限部分群は、 の 乗根の全体 に限られる。
は位数 の巡回群で、 が生成元になる。連続的な無限群の内側に、あらゆる有限巡回群が住んでいるわけだ。
生成される部分群
部分集合 を含む部分群のうち、最小のものを考えたい。
部分集合
を含む部分群すべての共通部分
が生成する部分群
共通部分が部分群であることはすでに示した。 自身が を含むので、共通部分を取る族は空ではない。
定義は明快だが、これだけでは中身が見えてこない。具体的な姿を与えるのが次の記述である。
語による記述
は、 の元とその逆元を有限個並べて掛けたもの全体に一致する。
の空の積は と約束する。右辺が部分群であること、 を含むこと、 を含むどの部分群にも含まれることを確かめれば、両辺の一致が出る。
こうした積を語と呼ぶ。群の元を、生成元で綴った文字列として扱う見方だ。
例: を求める
の中で と が生成する部分群を計算する。 なので である。
さえあれば何でも作れる。よって 。
はどうか。 から が入り、 も も の倍数なので となる。
一般に が成り立つ。生成は最大公約数を取る操作であり、共通部分(最小公倍数)とちょうど裏返しの関係にある。
巡回群
1 つの元で生成される群 を巡回群という。 と書ける。
の位数が なら で、。位数 の巡回群は同型を除いてただ 1 つしかない。
の位数が無限なら 。生成元は と の 2 つだけである。
巡回群はすべて可換だ。 が成り立つからである。
逆は正しくない。クラインの四元群は可換だが、1 元では生成できないので巡回群ではない。
例:元の位数を計算する
で元 の位数を求める。 を何回足せば に戻るか、という問いだ。
答えは で与えられる。 なら なので、位数は 。
実際 、、 と 3 歩で戻る。 なら で位数 12、つまり は生成元である。
例:生成元を数える
の生成元とは、位数が 12 の元、すなわち を満たす のことだ。
該当するのは の 4 つ。オイラー関数で書けば に一致する。
位数 の巡回群には、生成元がちょうど 個ある。 なら で、 以外のすべての元が生成元になる。
巡回群の部分群
巡回群の部分群は、ふたたび巡回群になる。 の部分群 に対し、 となる最小の正の を取れば が成り立つ。
証明は のときと同じ除法の議論だ。指数を で割り、余りを見ればよい。
有限の場合はもっと強いことが言える。位数 の巡回群では、 の各約数 に対して位数 の部分群がちょうど 1 つ存在する。
の部分群が 6 個だったのは、 の約数が 6 個だからにほかならない。
例: を 2 元で生成する
、 と置く。置換は右から順に作用させる約束にする。
の冪から 、、 の 3 元が出る。ここに を掛けると残りが埋まる。
は 、、 となり 。同様に である。
これで が の 6 元すべてになった。 であり、非可換な群も 2 元から立ち上がる。
隣接互換で を生成する
は互換の全体で生成される。どんな置換も、2 つずつの入れ替えを繰り返せば実現できるからだ。
さらに絞れる。隣り合う要素の互換 だけで 全体が生成される。
任意の互換 は、 を隣まで運び、入れ替え、もとの位置へ戻せばよい。これは隣どうしの交換だけで配列を並べ替える操作、つまりバブルソートそのものである。
位数は もあるのに、生成元は 個で足りる。生成元の個数と群の大きさは、まったく釣り合わない。
二面体群の生成元
正 角形の対称性のなす群 は位数 で、回転 と鏡映 の 2 元で生成される。
関係式は 、、 の 3 本だ。この 3 本から、群全体の掛け算が復元できる。
任意の元は または ()と一意に書ける。生成元 2 個と関係式 3 本、これが の設計図である。
行列群の生成元
は基本行列で生成される。行の入れ替え、行の定数倍、ある行の定数倍を別の行に足す、という 3 種類の行列だ。
任意の正則行列は、行基本変形を繰り返して単位行列に変形できる。これは掃き出し法にほかならない。
各段階が基本行列を左から掛ける操作に当たるので、逆にたどれば元の行列が基本行列の積として書ける。 のほうは、第 3 種(他の行への加算)だけで生成される。
線型代数でおなじみの計算手続きが、そのまま群の生成元の主張になっている。
有限生成群
有限集合 によって と書けるとき、 を有限生成群という。
、、、 はいずれも有限生成だ。有限群は自分自身を生成集合に取ればよいので、当然すべて有限生成である。
有限生成であるとは、群を有限の情報で書き下せる見込みがあるということだ。だからこそ、有限生成でない群の存在が目を引く。
例: は有限生成でない
加法群 が有限個の元 で生成されたと仮定する。
と置く。生成元はどれも に属し、その和と差もこの中に留まる。
つまり生成される部分群は に含まれてしまう。ところが はそこに入らない。
有限個の分数をどう集めても、分母をいくらでも大きくしたいという要求には追いつけない。 は有限生成ではないのだ。
ラグランジュの定理
有限群では、部分群の位数が全体の位数を割り切る。
が有限群なら が成り立つ。これが ラグランジュの定理 である。
剰余類 がどれも同じ大きさ をもち、重なりなく を覆うことから従う。
この定理は部分群を探す手間を劇的に減らす。位数 6 の を調べるとき、位数 4 や 5 の部分群は最初から候補外になる。
元の位数も群の位数を割る。 に対し が部分群だからだ。系として、位数が素数の群は巡回群になり、真の部分群をもたない。
逆は成り立たない
の約数 に対し、位数 の部分群は必ず存在するか。答えは否である。
交代群 は位数 12 だが、位数 6 の部分群をもたない。 は を割るにもかかわらず、である。
の元は、単位元 1 個、3 元巡回置換 8 個、 型の元 3 個からなる。位数 6 の部分群 があれば指数は 2 なので、任意の について となる。
3 元巡回置換 は と書けるので、8 個すべてが平方元である。すると は少なくとも 9 元を含むことになり、 に反する。
極大部分群
真の部分群 が極大であるとは、 ならば となることをいう。 と のあいだに何も挟まらない、という意味だ。
の極大部分群は ( は素数)に限る。 は と挟まれてしまうので極大ではない。
有限群には極大部分群が必ず存在する。真の部分群のうち位数が最大のものを取ればよい。
無限群では話が違う。 には極大部分群が 1 つもなく、どんな真の部分群も、さらに大きな真の部分群に呑み込まれてしまう。
部分群の格子
の部分群の全体は、包含関係によって順序集合になる。2 つの部分群 に対し、 が下限、 が上限を与える。
上限に和集合ではなく生成部分群を使うところが要点だ。和集合は部分群にならないので、それを含む最小の部分群で代用する。
この順序集合を部分群の格子といい、ハッセ図に描くと群の骨組みが目に見えてくる。
<div class="cont">
<svg viewBox="0 0 480 270" xmlns="http://www.w3.org/2000/svg" role="img" aria-label="Z/12Z と S3 の部分群の格子">
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<line x1="100" y1="32" x2="55" y2="100"/>
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<text x="100" y="36" fill="#3468d6">Z/12Z</text>
<text x="55" y="104">⟨2⟩</text>
<text x="145" y="104">⟨3⟩</text>
<text x="40" y="172">⟨4⟩</text>
<text x="120" y="172">⟨6⟩</text>
<text x="85" y="232" fill="#8a8f98">{0}</text>
<text x="350" y="36" fill="#3468d6">S₃</text>
<text x="258" y="134">A₃</text>
<text x="320" y="134">⟨(1 2)⟩</text>
<text x="382" y="134">⟨(1 3)⟩</text>
<text x="444" y="134">⟨(2 3)⟩</text>
<text x="350" y="232" fill="#8a8f98">{e}</text>
</g>
<g font-family="ui-sans-serif, system-ui, sans-serif" font-size="11" text-anchor="middle" fill="#6b7280">
<text x="100" y="258">Z/12Z(約数と同じ形)</text>
<text x="350" y="258">S₃(非可換)</text>
</g>
</svg>
</div>.cont { margin: 0; text-align: center; }
.cont svg { width: 100%; max-width: 460px; height: auto; }左の の格子は、 の約数の格子とそっくり同じ形をしている。巡回群の部分群が約数と 1 対 1 に対応する事実が、そのまま図の形に現れた。
右の は様子が違う。位数 2 の部分群 3 個が横一列に並び、 と合わせて 4 つが極大部分群になる。可換でない群の格子は、こうして横に広がっていく。
理解の確認
の部分群はいくつあるか。
- 4 個
- 6 個
- 12 個
生成元は群の設計図
生成元と関係式を並べれば、群は有限の情報で書き下せる。 のような書き方を、群の表示という。
表示があれば、生成元を辺のラベルにしたグラフを描ける。ケイリーグラフと呼ばれ、群を図形として眺めるための入口になる。 なら一直線、 なら格子、自由群なら木が現れる。
有限生成群をこの図形の形で調べる分野が、幾何的群論である。群を元の寄せ集めとしてではなく、少数の生成元から組み上がる構造として見ること。部分群と生成元は、その視点への最初の一歩だ。











巡回群の部分群は、群の位数の約数と 1 対 1 に対応する。12 の約数は 1,2,3,4,6,12 の 6 個なので、部分群も 6 個である。書き下せば {0}、⟨6⟩、⟨4⟩、⟨3⟩、⟨2⟩、そして全体。生成元の個数 φ(12)=4 と混同しないように注意したい。