位数 60 で初めて単純群が現れる - Sylow の定理で小さい群を分類する
Sylow 部分群の個数には 2 つの条件しか付きません。 と、 が の を除いた部分を割ること[1]。
それだけで、位数 の群に単純なものがないことも、位数 の単純群が しかないことも決まります。
使う道具
第 3 定理は、より使いやすい形にも書けます[1]。
を Sylow 部分群とすると、その個数は正規化群の指数です。ここから が を割ることが出ます。
は、Sylow 部分群が正規部分群であることと同じです[1]。共役で移り合うものが 1 つしかないので、自分自身へしか移らない。
もう 1 つ、 を Sylow 部分群の集合に共役で作用させると、準同型 ができます。この核が効きます。
型 1:個数が 1 に決まる
いちばん素直なのは、条件から しか残らない場合です。
位数 の群を見ます[1]。 かつ なので、 しかありません。Sylow 部分群は正規です。
位数 も同じです[1]。 かつ から 、 かつ から 。
両方が正規で共通部分が自明なので、 は Sylow 部分群の直積になります[1]。位数 の群も位数 の群も可換なので、位数 の群はすべて可換です[1]。
位数 の群が可換であることは、類等式から出ます。中心が自明でないので は か 。 だとすると は位数 で巡回群になり、そこから が可換だと出てしまって に反します。
型 2:元を数える
位数 の部分群が 個あれば、位数 の元は 個です[1]。位数が素数の部分群どうしは、共通部分が単位元しかないためです。
位数 で使います[1]。 かつ なので は か 。 かつ なので は か 。
両方が より大きいとします。位数 の元が 個、位数 の元が 個。合わせて 個で、群の大きさ を超えます。
だから か のどちらかが成り立ちます。片方が正規だと分かれば、そこから両方が正規だと出ます[1]。
たとえば とします。Sylow 部分群 が正規なので、 は位数 の部分群です。位数 の群は巡回群なので、その中の位数 の部分群は 1 つだけ。
の指数は なので正規で、その中で唯一の位数 の部分群は でも正規になります。同じ議論が の側にも通る[1]。
位数 の群は、この結果として 4 つに分類されます[1]。、、、 です。
型 3:対称群に埋める
のとき、共役作用から準同型 ができます。像は 点に可移に作用するので自明ではありません。
もし が単純なら核は自明で、 が に埋め込めます。すると が を割らなければならない。
割らなければ矛盾です。つまり なら は単純ではありません。
位数 で使います[1]。 かつ は奇数なので か 。 なら ができて、像の位数は 以上、 は を割らないので核は自明でない。
核の指数は の約数で 以上なので か 、つまり核の位数は か です。どちらにしても正規部分群が現れます[1]。
位数 なら は か で、 は を割りません。位数 なら は か で、 は を割らない。どちらも単純ではありません。

位数 12 の群
位数 では かつ なので、 は か です[1]。
とします。位数 の元が 個。残りは 個です。
Sylow 部分群は位数 で、位数 の元を含みません。だから残りの 個がちょうど Sylow 部分群になり、 です[1]。
か のどちらかが必ず成り立つ。位数 の群は単純ではありません。
分類すると 5 つになります。可換なものが と の 2 つ、非可換が 、、位数 の二重巡回群の 3 つです。
になるのは だけです。ほかの 4 つでは Sylow 部分群が正規になります。
位数
一般の形でも同じ手が効きます。( は素数)なら、 は正規な Sylow 部分群を持ちます[1]。
()でも、正規な Sylow 部分群があります[1]。
素因数が 2 種類のうちは、この種の議論で押し切れます。3 種類になると難しくなり、位数 でついに単純群が現れる。
位数 105
素因数が 3 つでも、数え上げが効く場合があります[1]。
とします。 かつ なので か 。 かつ なので か 。
両方が より大きいと、位数 の元が 個、位数 の元が 個で、合計が を大きく超えます。
そこから両方が正規だと出て、位数 の群は 2 つに決まります[1]。どちらも と位数 の群の直積の形です。
位数 60
ここで初めて非可換単純群が現れます。 です。しかも位数 の単純群は しかありません[2]。
を位数 の単純群とします。まず の側を確かめると、共役類の大きさが で、 とそのいくつかの和が を割るのは全部足したときだけ。だから正規部分群は自明なものしかなく、 は単純です[2]。
の側を絞ります。 かつ なので か 。単純性から で、位数 の元が 個。
かつ なので 。 は単純性に反し、 は から落ちます。よって で、位数 の元が 個[2]。
なので 。 は単純性に反し、 は から落ちます[2]。
とします。Sylow 部分群どうしが共通部分を持たなければ、 個の元が出て、上の 個と単位元を合わせて 個。 を超えます。
だから位数 の元 を共有する Sylow 部分群 があります。位数 の群は可換なので となり、 で の倍数。 の約数だと 、、 しかありません。
なら が中心にいて単純性に反する。 が だと で落ちる。残るのは指数 です。
の場合は、正規化群の指数がそのまま です。どちらにしても指数 の部分群があります[2]。
その剰余類への作用から ができます。単純性から核は自明で、像の位数は 。符号写像を像に制限すると、単純性から自明にしかならないので像は に入り、位数が等しいので一致します[2]。
が出ました。
Sylow の個数条件と数え上げだけで、非可換単純群がないと分かる
条件が全部そろってしまい、実在する。しかも 1 つだけ
どこまで届くか
Sylow の定理は、群の中に部分群があることと、その個数に制限がかかることしか言いません。それでも、位数を 1 つ決めると選択肢が数個に絞られる。
素因数が 2 種類のうちは、正規な Sylow 部分群がほぼ必ず見つかります。3 種類になると余裕が出て、位数 で最初の非可換単純群が入る隙間ができました。
分類の入口が になっているのは、数え上げが まで持ちこたえたからです。
位数 の群が単純でないことを示すのに使える議論はどれですか。
- しかありえないので、Sylow 3 部分群が正規になる
- が のとき が に埋め込めるはずだが、 は を割らない
- 位数 の元が 個を超えるので矛盾する
個数の条件は 2 行しかありません。それでも位数を 1 つ決めれば、候補が数個まで削れる。定理そのものより、削り方の型を覚えるほうが実用になります。











n3≡1(mod3) かつ n3∣4 から n3 は 1 か 4 です。n3=4 のとき共役作用で G→S4 ができ、単純なら核が自明で ∣G∣=36 が 4!=24 を割ることになりますが、割りません。よって核が自明でなく、単純ではない。n3=1 の場合はそのまま正規部分群が現れます。