置換の符号とは|互換への分解・転倒数・交代群と行列式への現れ方
つの番号だけを入れかえる置換を互換といいます。どの置換も互換の積に書けるものの、書き方は一通りではない。
それでも必要な互換の個数の偶奇は置換ごとに決まっていて、これを符号と呼びます。偶なら 、奇なら 。
互換への分解
巡回置換は互換の積にほどける。
右から順に掛けていくと、 が へ、 が へと送られていく。長さ の巡回に要る互換は 個です。
どの置換も交わらない巡回の積なので、全体としても互換の積に書ける。
例:巡回置換を互換に分ける
を分けてみます。
互換は 3 個で、長さ 4 の巡回だから に合う。別の分け方もあります。
こちらも 3 個。式の形はまるで違うのに、個数は変わっていない。
分け方は一通りではない
個数そのものが変わる分け方もある。
右の 2 つが打ち消し合うので、どちらも同じ置換。個数は 1 個と 3 個で違いますが、どちらも奇数です。
偶奇だけは動かない。ここを示すのが次の節になります。
転倒数による定義
の行き先を と一列に並べます。 なのに となる組を転倒といい、その個数を転倒数という。
転倒数を と書くと、符号は次のように定まります。
は そのものから決まる量なので、分解の仕方が入りこむ余地がない。

図にすると、上下を結んだ線の交差の本数がそのまま転倒数になる。
例:転倒数を数える
| 置換 | 転倒数 | 符号 |
|---|---|---|
| 0 | 偶 | |
| 1 | 奇 | |
| 1 | 奇 | |
| 3 | 奇 | |
| 2 | 偶 | |
| 2 | 偶 |
の 6 個を並べると、転倒数と符号の対応が見えます。恒等置換は 、互換は か 、3 次巡回は 。
偶置換が 3 個、奇置換が 3 個で、ちょうど半分に割れる。
互換を掛けると偶奇が変わる
まず隣どうしの互換を考えます。並びの中で隣り合う つを入れかえると、その組だけが転倒になったり転倒でなくなったりする。
ほかの組の大小関係はいっさい変わらないので、転倒数はちょうど だけ増減する。
一般の互換 も、隣どうしの互換だけで作れる。 と のあいだにある番号を 個とすると、 回でできる。
奇数回なので、どの互換を掛けても転倒数の偶奇はかならず変わる。互換を 個掛けて を作れば、 の偶奇は の偶奇に一致します。
分解の仕方によらず の偶奇が決まる理由が、ここにある。
数え方が分かりやすい。ただし分け方によらないことを別に示す必要がある
置換そのものから決まる。一意性が最初から付いてくる
積の形の定義
転倒数を使わない書き方もあります。
分子と分母に現れる数は、符号を除けば同じ集まり。だから比は か になり、 の組の個数だけ が掛かる。
つまり転倒数による定義と同じものです。
偶数個で書けるなら偶、奇数個なら奇。分け方によらない。
で となる組の個数。その偶奇が符号になる。
固定点まで数えた巡回の個数を として、 で決まる。
符号は準同型になる
符号は から への準同型です。
を 個、 を 個の互換で書けば、 は 個で書ける。指数の足し算がそのまま積になる、という仕組み。
なら互換が存在するので、この準同型は全射になる。
巡回型から符号を読む
長さ の巡回の符号は です。互換は奇、3 次巡回は偶、4 次巡回は奇、5 次巡回は偶と交互になる。
固定点まで数えた巡回の個数を とすると、符号はまとめて書けます。
長さが偶数の巡回が奇数個あるときだけ奇置換になる、と言いかえてもよい。
並びの中で 転倒 を数えると、符号が置換そのものから決まります。互換の分解を経由しないので、一意性を別に示す手間がいらない。
なのに となる番号の組のこと。
交代群
符号の核が交代群 です。核なので、 の正規部分群になる。
なら符号は全射なので、指数は で位数は 。 のときは奇置換がなく、 になります。
An は 3 次巡回で生成される
なら、 は 3 次巡回だけで作れます。偶置換は互換を偶数個並べた形なので、前から 2 つずつ組にする。
組の中身は 3 通りに分かれる。同じ互換が 2 つ並ぶなら積は恒等置換で、 と書ける。
番号を 1 つ共有するときは、3 次巡回の 2 乗になる。
番号を共有しないときは、3 次巡回 2 つの積。
どの場合も 3 次巡回だけで書けるので、 が 3 次巡回で生成されると言えます。
例:A3 と A4
は 、、 の 3 個です。位数 3 の巡回群で、 と同型になる。
は位数 12。二重互換 3 つと単位元がクラインの四元群 をなし、これが の正規部分群になります。
には位数 6 の部分群がない。位数が約数でも部分群があるとは限らない、という有名な例です。
の中では と が共役になりません。 になると、すべての 3 次巡回が の中で共役になる。
商は位数 2 の群
を で割ると、位数 2 の群になります。
剰余類は と の 2 つで、 はどの奇置換でもよい。奇置換の全体は部分群にならない。
単位元が偶置換なので、そもそも部分群の条件から外れています。
行列式に現れる符号
行列式の定義に、符号がそのまま出てきます。
個の項に符号が付き、足し合わせる形。置換行列 の行列式も になる。
行を 2 つ入れかえると行列式の符号が変わるのは、互換を 1 つ掛けたことに対応します。
で、互換 と 4 次巡回 の積の符号はどちらですか。
- 偶置換
- 奇置換
- 掛ける順番によって変わる
- 定まらない
15 パズルが解けない理由
の盤に から までのタイルと、空きマスが 1 つあります。正しい並びから と だけを入れかえた配置を考える。

この配置には、どうやってもたどり着けません。タイルを 1 枚動かす操作は、そのタイルと空きマスの互換にあたる。
だから 1 手ごとに置換の符号が変わります。同時に、空きマスの行と列の和の偶奇も 1 手ごとに変わる。
2 つの偶奇の組み合わせが動かないので、そこが不変量になります。 と の入れかえは互換 1 つで、符号だけが変わり空きマスは元の位置。
だから届かない。到達できる配置は全体の半分で、 通りです。
Sam Loyd がこの配置に ドルの懸賞を出しましたが、賞金は誰のものにもなりませんでした。不可能であることは、懸賞が出る 10 年以上前に示されている。










符号は準同型なので、積の符号は符号の積になります。互換が −1、長さ 4 の巡回も (−1)3=−1 なので、掛けると +1 で偶置換です。