()は単純群であり、非可換単純群の最も基本的な例である。この事実は Galois 理論において5次以上の一般代数方程式が解けないことの証明に使われる。
単純群の定義の復習
群 が単純群であるとは、 の正規部分群が と のみであることをいう。
の単純性()
のとき、 は単純群である。
は可換単純群(素数位数)である。 は単純群でない( が正規部分群)。
定理の証明の準備
証明の鍵となる事実は、()においてすべての3-巡回置換が共役であることと、 が3-巡回で生成されることである。
3-巡回は共役
()において、任意の2つの3-巡回 と は 内で共役である。
で , , となるものを取る。 となる。 が奇置換なら、 より 以外の元 が存在し、 は偶置換かつ同じ共役を与える。
証明の概略
, とする。 が3-巡回を含むことを示せば、 はすべての3-巡回を含み(共役で閉じているため)、 となる。
恒等置換でない元の分析
, を取る。 の巡回分解を考える。
が3-巡回なら証明終わり。そうでない場合、 の形に応じて が3-巡回を含むことを示す。
場合分け
が長さ3以上の巡回を含む場合、または互いに素な互換の積である場合に分けて考える。
例えば のとき、 として を計算すると、 に含まれる新しい元が得られる。
交換子を用いた議論
, に対して である( が正規だから)。
適切な を選ぶことで、 が3-巡回となるか、より単純な形になることを示す。
の場合の例
とする。 を取ると、
計算を進めると が3-巡回を含むことが示せる。
の位数
である。 は位数60の単純群であり、非可換単純群として最小である。
Galois 理論との関係
5次以上の一般代数方程式が代数的に解けないことの証明において、 の単純性が本質的に使われる。
可解群の列を作れないことが、べき根による解法が存在しないことを意味する。
有限単純群の分類との関係
()は無限系列をなす単純群の代表例である。有限単純群の分類において、交代群は「リー型」でも「散在型」でもない第三のクラスを形成する。