交代群 An の単純性|n が 5 以上で単純になる証明と、A4 が例外である理由
のとき、交代群 は単純群です。正規部分群が と しかない、ということ。
は位数 60 で、非可換な単純群のうち最小のものになる。この事実が、5 次以上の方程式がべき根で解けない理由につながります。
単純とは正規部分群がないこと
群 が でなく、正規部分群が と だけのとき、 を単純群といいます。正規部分群があると、そこで割って小さい群に分けられる。
単純群は、それ以上分けられない群です。部分群がないという意味ではない。
実際 には、位数 、、、、、、 の部分群がそろっている。どれも正規にならないだけです。
A3 と A4 は別扱い
なら は自明群で、単純群には数えません。 は位数 3 の巡回群。
素数位数なので単純ですが、可換な単純群です。 は位数 12 で、単純にならない。
二重互換 3 つと単位元がクラインの四元群 をなし、これが正規部分群になる。例外は だけ。
例:A4 と A5 で共役類の和を比べる
正規部分群は共役類の合併で、位数は全体の位数を割る。だから共役類の大きさを並べて、 を含む部分和を調べれば足りる。
の共役類の大きさは 、、、。 が を割るので、ここに正規部分群ができます。
の側を、代表元と大きさで並べておく。
| 代表元 | 類の大きさ | 元の位数 |
|---|---|---|
| 1 | 1 | |
| 15 | 2 | |
| 20 | 3 | |
| 12 | 5 | |
| 12 | 5 |
では 、、、、 になる。、、、 と、どれも を割り切れません。

数え上げだけで の単純性が出る。ただし が大きくなると共役類の個数も増えるので、一般の には別の道が要ります。
証明の骨組み
一般の では、3 つの事実を組み合わせます。
なら成り立つ。互換を 2 つずつ組にして書き直すだけである。
で成り立つ。余った番号を使って、移す置換を偶置換に直せることによる。
いちばん手間がかかるところ。巡回型で場合を分け、共役と積で作り出す。
この 3 つがそろうと、自明でない正規部分群 は 1 つの 3 次巡回を含み、共役ですべての 3 次巡回を含み、生成で 全体になる。難しいのは 3 つ目です。
An は 3 次巡回で生成される
偶置換は互換を偶数個並べた形なので、前から 2 つずつ組にする。同じ互換が 2 つ並ぶなら積は恒等置換で、 と書ける。
番号を 1 つ共有するなら 。共有しないなら になります。
どの組も 3 次巡回で書けるので、 全体が 3 次巡回で生成される。
n が 5 以上なら 3 次巡回はすべて共役
と をとります。
、、 となる をとれば、 になる。
が偶置換なら、それで の中の共役です。奇置換のときに が効いてくる。
、、 以外の番号が つ以上残るので、その つを 、 として とおきます。
は と交わらないので交換し、 による共役も のままになる。 は偶置換なので、共役が の中で起きる。
では残る番号が 1 つしかなく、この手が使えない。
例:A4 では共役にならない
で と を見ます。 の中では共役ですが、移す は奇置換しかとれない。
、、 以外に残る番号が の 1 つだけなので、偶置換に直せません。実際、 の 3 次巡回 8 個は 4 個ずつ 2 つの類に分かれる。
なら と直せて、20 個が 1 つの類にまとまる。
3 次巡回 8 個が 4 個ずつ 2 つの類に分かれる。番号が足りず、偶置換で移し合えない
3 次巡回はすべて 1 つの類にまとまる。余った番号 2 つで偶置換に直せる
正規部分群は 3 次巡回を含む
を の自明でない正規部分群とします。 でない をとる。
の元の巡回型は 、、 の 3 通りです。 が 3 次巡回ならそこで終わり。
残る 2 つの型については、 の中で計算して 3 次巡回を作り出す。
例:二重互換から 3 次巡回を作る
とします。5 番目の番号を とし、 で共役をとる。
番号を で写しただけです。これに を掛けると、 どうしが打ち消し合う。
3 次巡回が出てきた。 は正規なので共役も に入り、積も に入る。
例:5 次巡回から 3 次巡回を作る
とします。今度は で共役をとる。
これに を掛けます。
と が動かず、、、 だけが回る形。どの型から出発しても 3 次巡回に届くので、 になる。
n が 6 以上は帰納法で落とす
では、 の単純性を使う。 を動かさない置換の全体を と書くと、 は と同型になります。
こういう部分群が から まで 個ある。

を自明でない正規部分群とし、 が自明でないような を見つけます。
見つかれば は の正規部分群で、 が単純だから になる。すると で、 は 3 次巡回を含むので も含む。
あとは共役と生成で に届く。
同じ値をとる共役を作る
残るのは、 が自明でない をどう見つけるかです。 を でない元とし、 と違う共役 で、どこか 1 点だけ同じ値をとるものを作る。
の最長の巡回の長さを とし、番号を付けかえて と書きます。 なら をとる。
とおくと で、いっぽう に対して になります。だから 。
このとき は でなく、 を動かさない。 は正規なので も に入り、 が の自明でない元になります。
のとき、つまり が互換の積のときも、互換の個数に応じて同じ形の がとれる。
単純性から出てくること
の単純性からは、 の側の事実も出ます。 なら、 の自明でない真の正規部分群は だけになる。
さらに、指数が と のあいだの部分群は存在しません。指数 の部分群は と同型になる。
剰余類への左からの掛け算で から への準同型を作ると、 では単射になれないためです。
が単純群にならない理由はどれですか。
- 位数 12 が合成数だから
- 単位元と二重互換 3 つが正規部分群をなすから
- 3 次巡回で生成されないから
- 可換群だから
5 次方程式が解けないことへ
可解群とは、商が可換になる正規列を持つ群です。 が で単純かつ非可換なので、そこで列が止まる。
だから は で可解になりません。一般の 次方程式の Galois 群が になることと合わせると、べき根では解けないと分かる。
では が の 交換子部分群 になり、そこから先へ降りられません。可換な商を作る余地が残っていない、ということです。
群の交換子 が生成する部分群のこと。
までは が可解で、4 次までの解の公式が実際にあります。 と のあいだに境目があるのは、 と の差そのものです。











A4 の共役類の大きさは 1、3、4、4 で、1+3=4 が 12 を割ります。単位元と二重互換 3 つを合わせた V が、位数 4 の正規部分群になります。