導来列が止まるのは単純非可換群に当たったとき(可解群の定義と性質)
交換子群をとる操作を繰り返して単位元に届く群が可解群です[3]。
では 3 歩で届きます。 では で止まる。この差が、4 次方程式に解の公式があって 5 次以上にはないことの正体になっています。
交換子群
に対して を交換子といいます[3]。定義から が成り立つので、交換子は「可換からのずれ」を測る量です。
交換子全体が生成する部分群を交換子群、または導来部分群といい と書きます。 の特性部分群、つまりどんな自己同型でも保たれる部分群になります[3]。
部分群 について、次の 2 つは同値です[3]。
証明を書きます。 とします。、 に対して で、 だから 。正規です。剰余類の積では となるので、 は可換になります。
逆に が正規で が可換なら、 なので、すべての交換子が に入る。生成される群も入るので です。
したがって は の最大の可換商になります[3]。
導来列
同じ操作を繰り返します[3]。
という減少列ができます。
ある で になるとき、 は可解であるといいます。そうなる最小の が可解類です[3]。
可解類 は 、可解類 以下は が可換であることと同じです。
4 つの言い換え
について、次は同値です[3]。
1 番目から 2 番目は と置くだけです。 は内部とは限らないすべての自己同型で保たれるので、 は の正規部分群になります[3]。
2 番目から 3 番目は明らかです。3 番目から 1 番目は帰納法で を示せばよい。 は等号で、 なら になります。最後の包含は が可換であることそのものです。
1 番目から 4 番目は ととる。4 番目から 1 番目は、 の列を へ引き戻し、末尾に をつなげば 2 番目の形になります[3]。
受け継がれ方
部分群と商群は可解性を受け継ぎ、可解類も増えません[3]。 なら 、全射 なら が成り立つためです。
拡大でも閉じます。 で と がともに可解だとします。 が可解類 なら で、 が可解類 なら 。 は可解類 以下です。
ここが冪零性との分かれ目になります。冪零群では拡大が閉じません。 も も可換なのに は冪零でない、という例がある。
部分群、商群、拡大のすべてで閉じる
部分群と商群では閉じるが、拡大では閉じない
組成列で見る
有限群 の Jordan-Hölder 列を とします。 が可解であることは、すべての因子 が素数位数の巡回群であることと同値です[3]。
理由は短い。単純かつ可解な群 をとると、 は正規部分群なので か です。 が可解だから はありえず、。つまり は可換で、可換単純群は素数位数の巡回群です[3]。
組成因子は単純で、可解群の組成因子は可解。だから素数位数の巡回群になります。逆向きは、その列自体が可解列だからすぐ出ます。
非可換な単純群は可解ではない[3]。可解性を壊すのは、この 1 種類だけです。
が可解なのは まで
対称群の交換子群は交代群です。互換どうしの交換子を計算すると 3 サイクルが出るので、 になります[1]。
具体的に計算します。 では 、これが可換なので 。可解類 です。
では 、、 は可換なので 。位数で追うと で、可解類 になります。
で止まります。 で、 は非可換な単純群だから は か のどちらか。 が可換でないので です。
以降ずっと のまま。 では が単純非可換なので、同じことが起きます[3]。

上三角行列は可解
体 上の 次元空間に完全旗 をとり、旗を保つ元の全体を とします[3]。旗に合わせた基底では、 は上三角行列の群になります。
で、 は対角成分が の上三角行列です。ここで が成り立ちます[3]。
の場合を見ると にしかなりませんが、実は です。対角成分の積が交換子で打ち消し合うためで、対角部分が可換だからこうなる。
そこから 、 と進み、 に届きます。 は可解です[3]。
のほうは冪零になります。可解群と冪零群の典型的な例が、同じ行列の並びから 2 つ出てくる形です。
群と、位数が 2 つの素数だけの群
群は冪零なので可解です[2]。中心が自明でないことから上中心列が伸び続けるためでした。
素数が 2 つになっても可解のままです。位数が の群はすべて可解になる[3]。Burnside の定理です。
証明は指標の理論を使います[3]。群論の言葉だけでは届かない、というのが長いあいだの状況でした。
Hall の定理を経由すると、形の上ではすっきり書けます。素数の集合 に対して、位数が の素数だけからなり指数が の素数で割れない部分群を 部分群といいます[3]。
可解群はどんな についても 部分群を持ち、それらは互いに共役です[3]。逆に、どんな についても 部分群を持つ有限群は可解になります[3]。
位数が の群では、 として意味があるのは 、、 の 3 つだけ。前の 2 つは Sylow の定理が答え、最後は群そのものが 部分群です。だから逆向きの定理から可解性が出ます[3]。
ただし、この逆向きの定理の証明のほうが Burnside の定理を使います[3]。短く見える道筋も、指標の理論を迂回してはいません。
素数が 3 つ以上になると
素数を 3 つに増やすと可解とは限りません。 が反例です。
代わりに効くのが偶奇です。奇数位数の有限群はすべて可解になる[3]。Feit と Thompson が 1963 年に証明しました。
論文は 255 ページありました[4]。当初は 25 ページ程度と見積もられていたそうです。
裏返すと、非可換な有限単純群の位数は必ず偶数になります[3]。可解性を壊す群を探すなら、位数 の元があるところしか見なくてよい。
奇数位数なら可解(Feit と Thompson)
可解でない群には位数 2 の元がある
その元の中心化群から群を絞り込む
次のうち可解群でないものはどれですか。
- 位数 の対称群
- 位数 の交代群
- 位数 の四元数群
可解性を壊すものは非可換な単純群だけです。組成列に非可換単純群が 1 つでも現れれば導来列はそこで止まり、現れなければ必ず単位元に届く。5 次以上の対称群で起きているのは、 という単純群が組成因子に居座ることでした。











A5 は非可換な単純群なので D(A5)=A5 となり、導来列が A5 で止まります。S4 の導来列は S4⊃A4⊃V4⊃{1} で、3 歩で届く。四元数群は 2 群で冪零なので可解です。