冪零群の定義と性質

冪零群は可解群より強い条件を満たす群のクラスである。-群はすべて冪零群であり、冪零群は可解群の重要な部分クラスをなす。

冪零群の定義

が冪零(nilpotent)であるとは、正規部分群の列

が存在して、 となることをいう。

各段階で「中心」を取り出していくと 全体に到達する、という条件である。

上中心列

で帰納的に定義される列

を上中心列(upper central series)という。 である。

が冪零 ある となる。

下中心列

で帰納的に定義される列

を下中心列(lower central series)という。 である。

が冪零 ある となる。

冪零類

上中心列が に到達する最小の の冪零類(nilpotency class)という。

可換群は冪零類1である。冪零類が小さいほど「可換に近い」群である。

可換群と冪零群

可換群は冪零群である。 となるからである。

-群は冪零群

-群は冪零群である。

類等式から なので である。-群なので帰納法により が冪零であることが示せる。

冪零群の性質

冪零群の部分群は冪零群である。

冪零群の商群は冪零群である。

がともに冪零であっても、 は冪零とは限らない(可解群との違い)。

冪零群は可解群

冪零群は可解群である。

上中心列 に対して は可換群なので、可解群の定義を満たす。

有限冪零群の構造定理

有限群 が冪零であるための必要十分条件は、 が Sylow 部分群の直積として表せることである。

ここで の Sylow -部分群である。

証明の概略

が冪零ならば、すべての Sylow 部分群が正規である(冪零群では極大部分群は正規なので)。異なる素数の Sylow 部分群の共通部分は なので、直積に分解される。

逆に、-群は冪零であり、冪零群の直積は冪零である。

二面体群の冪零性

が2べきのときのみ冪零群である。

は2-群なので冪零。 だが Sylow 2-部分群と Sylow 3-部分群が直積にならないので冪零でない(可解ではある)。