有限位数の元を集めると部分群になる〜有限生成アーベル群のねじれ部分
アーベル群の中で有限位数の元だけを集めると、それが部分群になります[3]。ねじれ部分です。
なら がそれにあたる。有限生成なら、この部分と残りの自由な部分に群がきれいに分かれます[1]。
ねじれ元
アーベル群 を加法で書きます。 について、 となる正整数 があるとき をねじれ元といいます。位数が有限であることと同じです。
ねじれ元の全体を と書きます。
これが部分群になることを見ます[3]。 は なので入る。 で 、 とすると
なので 。 から です。
途中で と を分けて計算しました。ここで可換性を使っています。
可換でないと崩れる
非可換群では、有限位数の元を集めても部分群になりません。
無限二面体群 をとります。 の位数は 、 の位数も です。
積を計算します。 を使うと
は無限位数なので も無限位数。位数 の元 2 つの積が無限位数になりました。集合として閉じていません。
上の計算で と を入れ替えられたことが、そのまま効いています。
商はねじれ自由になる
の群をねじれ自由といいます。、、 が加法群としてそうです。
どんなアーベル群でも、ねじれ部分で割った商はねじれ自由になります[3]。
証明は短い。 とすると なので、ある で 。つまり で 、すなわち は です。

有限生成なら 2 つに分かれる
有限生成アーベル群 は、ねじれ部分と自由部分の直和に分かれます[1]。
証明の道具は 2 つです。1 つは、PID 上の有限生成ねじれ自由加群が自由になること[1]。 は PID なので、有限生成でねじれ自由なアーベル群は自由アーベル群です。
もう 1 つは、自由な商を持つ完全列が分裂することです。
が有限生成なら商 も有限生成で、上で見たとおりねじれ自由。だから自由アーベル群 です。
の基底 をとり、それぞれの引き戻し を選びます。 で定まる準同型 が切断になるので、列は分裂します。
有限生成を外すと成り立たない
ねじれ自由なら自由、という主張には有限生成が要ります[1]。
が反例です。加法群としてねじれ自由ですが、 上の基底を持ちません。
理由を書きます。 でない自由 加群には、指数が有限の真部分加群があります。 なら が指数 です。
一方 には、そういう部分群がない。 の指数が だとすると ですが、 は で割り切れるので 。よって になります。
分裂のほうも、有限生成を外すと崩れます。 をすべての素数にわたる直積とすると、 は の直和因子になりません[2]。
ねじれ部分は一般には直和因子にならない、というのが正しい形です[3]。有限生成が効いています。
ねじれ部分と自由部分に分かれる。 は有限群になる
商がねじれ自由になることは変わらないが、直和には分かれない
ねじれ部分は有限になる
が有限生成なら は有限群です。
まず が有限生成であること。有限生成アーベル群の部分群は有限生成になります[1]。 の部分加群が階数 以下の自由加群になる、という事実から出ます。
次に、有限生成のねじれアーベル群は有限であること。生成元 の位数を とすると、どの元も ()と書けます。個数は 以下です。
だから有限生成アーベル群は と有限アーベル群の直和になります[1]。
自由部分は一意でない
分解 で、 は一意に決まります[1]。 は零化イデアルが でない元の全体なので、分解のとり方に触れずに書ける。
のほうは一意ではありません。 で見ます[1]。
生成系として をとれば 。 をとれば です。どちらも と同型で、 は同じ になります。
数論にも同じ形が出ます。 の単数はすべて の形で、単数群は有限生成アーベル群です[1]。
ねじれ部分は で、どちらの分解でも同じ。自由部分は の冪と の冪という別々の部分群になります[1]。
素数ごとに分ける
ねじれ群は素数成分の直和に一意に分かれます[3]。 成分を次で定めます。
の位数を とし、 と置きます。 の最大公約数は なので、 となる整数がとれる。
各項について なので です。和になりました。
直和であることも出ます。 と、ほかの素数成分の和との共通部分にいる元は、位数が のべきであり、同時に と互いに素になる。そんな元は だけです。
階数
の を階数といいます。自由部分のとり方は一意でなくても、 は決まります。
で割ると が残り、自由アーベル群の階数は一意だからです。一般のアーベル群でも、線型独立な元の最大個数として階数が定まります[3]。ねじれ群の階数は です。
例を並べます。 は 、階数 。 は 、階数 。有限アーベル群は 、階数 です。
分解のうち ねじれ部分だけが一意 で、自由部分はとり替えがきく。
零化イデアルという内在的な条件でねじれ部分が書けるのに対し、自由部分は補いかたに自由度が残るため。
何を測っているのか
ねじれ部分は、群の中で「有限で閉じている部分」を全部集めたものです。可換性がないと集めた先が閉じないので、この操作はアーベル群に固有のものになります。
有限生成という条件が付くと、残りが自由アーベル群になり、群がねじれと自由の 2 枚に分かれる。 や無限直積を持ち込むと、この 2 枚に分かれる性質だけが先に壊れます。
アーベル群 について正しいのはどれですか。
- ねじれ部分は だけで、階数は である
- ねじれ部分の位数は で、階数は である
- ねじれ自由なので、ねじれ部分は自明である
有限位数の元を集める、という操作だけで群が 2 つに割れる。割れることのほうが特別で、有限生成という条件がその特別さを支えています。










有限位数の元は Z/4Z×Z/9Z の部分から来るので、ねじれ部分の位数は 4×9=36 です。素数成分に分けると 2 成分が Z/4Z、3 成分が Z/9Z になります。残る自由部分は Z2 なので階数は 2 です。