行列式で切って中心で割る、一般線型群と特殊線型群から PSL へ
体 上の 次正則行列の全体が一般線型群 、そのうち行列式が のものが特殊線型群 です。
有限体上なら位数が数えられ、中心で割ると単純群が出てきます。有限単純群の系列のうち、いちばん手前にあるのがこの群です[1]。
位数を数える
を 元体とします。 の位数は、行列を「基底の行き先」と見れば数えられます。
正則行列は、標準基底 を別の基底へ送る写像です。だから位数は、順序つき基底の個数と同じになります。
1 本目は でないベクトルなら何でもよく、 通り。2 本目は 1 本目の張る直線の外にあればよいので 通り。 本目は、それまでの 本が張る部分空間の外にあればよく、その部分空間の元は 個です。
のべきをくくり出すと、次の形にも書けます。
小さい場合を確かめます。 です。位数 の非可換群は しかないので、 になります[1]。

行列式で切る
行列式は準同型 です。 の行列式が なので全射になります。
核が なので、第一同型定理から次が出ます。
有限体では なので、位数の関係が決まります。
は核なので正規部分群です。
中心はスカラーだけ
の中心を求めます。 が中心にあるとします。
について は正則なので、 はこれと可換です。 とも可換だから、 は と可換になります。
成分で書きます。、 です。
、 とすると 。、 とすると になります。
対角成分がすべて等しく、非対角成分がすべて 。 はスカラー行列です。
でも同じ計算が通ります。 の行列式は なので の中にいるためです。あとは行列式の条件が付くだけ。
有限体では が位数 の巡回群なので、 の解は 個です。
射影化する
中心で割ったものを射影線型群といいます。
有限体上の位数はこうなります。
に落とすと見やすい形になります。
で 、 でも 、 で 、 で です。

基本行列が生成する
、 に対する を基本行列といいます。行列式は なので に入ります。
のとき、これらが を生成します[1]。
掃き出し法がその中身です。 の元に行基本変形を当てて単位行列にできる、という手続きを行列の積として読み替えると、生成することが出ます。
幾何では、基本行列は超平面を各点で止めたまま空間をずらす写像です。これを transvection と呼びます[2]。 の像が 1 次元で、 になる元として特徴づけられます[2]。
実数体では連結成分が 2 つ
は 2 つの連結成分を持ちます。行列式が正の部分と負の部分です。
は連続で、 は つの連結成分を持つので、成分は つ以上になります。
つで済むことは、基本行列が生成することから出ます。 を基本行列の積 と書き、各因子の を に替えて を から へ動かせば、 から までの道ができます。
行列式が正の部分は と ()の積で書けるので、こちらも連結です。
複素数体では が連結なので、 も も連結になります。
Sylow 部分群が見える
とします。 の の部分は、上で書いた形からすぐ読めます。
はどれも で割り切れないので、 の部分は です。
対角成分が の上三角行列の全体を とすると、自由に動く成分は対角より上の 個。各成分が 通りなので になります。
位数が一致するので、 は の Sylow 部分群です[3]。
有限 群が上三角の形に埋め込めるのは、この事実の帰結です[3]。どの 群も十分大きい で に埋め込め、Sylow の共役性から の中に入る。
行列式が自由に動く。可換な商 を持つので単純にならない
行列式を に固定し、中心で割る。ここで単純群になる
は単純になる
と体 について、 は単純群です[1]。例外は かつ または の 2 つだけ。
Galois が 1831 年に の素数について の単純性を主張しましたが、証明は付けていません[1]。 を外したのは、 と がどちらも単純でないためです。
証明は 1870 年から 1901 年にかけて仕上がりました[1]。有限素体で Jordan、 の有限体で Moore、残りを Dickson が埋めています。
いま標準になっている筋道は、岩澤の判定条件を使うものです[1]。
この 4 つが成り立てば は単純です[2]。 を射影空間 に作用させると 2 重可移になり、作用の核がちょうど中心になる[1]。
安定化群の中の可換正規部分群として transvection の群をとると、条件がそろいます。除外される 2 つは、最後の条件 が崩れる場合です[1]。
小さいところでの一致
位数が一致する場所では、実際に同型になります。
| GL2(F2) = PSL2(F2) | 位数 6、S3 と同型 |
| PSL2(F3) | 位数 12、A4 と同型 |
| PSL2(F4) | 位数 60、A5 と同型 |
| PSL2(F5) | 位数 60、A5 と同型 |
| PSL2(F7) | 位数 168、PSL3(F2) と同型 |
| PSL2(F9) | 位数 360、A6 と同型 |
は、 の次に小さい非可換単純群の位数です。 の位数を上で数えたときに出た が、それにあたります。
次以上でも同じ形の一致があります。 で、位数はどちらも です。
はいくつですか。
行列式で切り、中心で割る。この 2 手だけで、線型代数の道具が有限単純群の系列に変わります。位数の公式を書き下せることが、この系列が分類の中で扱いやすい理由になっています。











正則行列は標準基底を別の基底へ送る写像なので、順序つき基底の個数を数えればよい。1 本目は 0 でないベクトルで 8−1 通り、2 本目は 1 本目の張る直線の外で 8−2 通り、3 本目は 2 本が張る平面の外で 8−4 通りです。q=2 では q−1=1 なので GL3(F2)=SL3(F2) で、中心も自明なため PSL3(F2) も位数 168 になります。