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直交群と回転群|O(n) と SO(n) の定義から、Euler の回転定理と正多面体まで

の標準内積を保つ線型変換の全体を、 次直交群 といいます。

条件 は、 の列が正規直交基底をなすことと同じ。行列式が のものだけを集めると、回転の全体 になる。

長さを保つことと同じ

内積を保つことと、長さを保つことは同じ条件です。長さから内積を で復元できるから。

だから、原点を動かさず距離も変えない線型写像を集めれば、それが になる。

内積を保つ

が、すべての と で成り立つ。

長さを保つ

がすべての で成り立つ。内積の条件と同値である。

列が正規直交

と書ける。列ベクトルが長さ で、たがいに直交する。

どれか 1 つを確かめれば、残りも自動的に付いてくる。

例:2 次の直交行列を書き下す

で条件を解いてみます。1 列目を とおけば、長さ の条件は自動的に満たされる。

2 列目はこれと直交して長さ なので、 か の 2 通りしかありません。

前者が行列式 の回転、後者が行列式 の鏡映。 はこの 2 系列だけでできている。

行列式は 1 か -1 になる

の両辺の行列式をとります。

だから は か に限られる。逆行列も簡単で、 になる。

行列式が でないので、 は の部分群。

特殊直交群と 2 つの連結成分

行列式 の元だけを集めた は、行列式という準同型の核です。だから正規部分群で、指数は になる。

位相の側から見ると、 は連結成分をちょうど 2 つ持つ。 が単位元を含むほうの成分で、もう一方は群になりません。

向きを保つ。回転にあたり、 をなす

向きを変える。鏡映を含み、それだけでは群にならない

はコンパクトになる。列が単位ベクトルなので成分が 以下に収まり、しかも閉集合だからです。

SO(2) は円周

の元は角度 1 つで決まります。

掛け算は角度の足し算になり、 が成り立つ。

だから は円周 と同型で、可換群です。 と書いても同じもの。

O(2) は半直積

には、鏡映が加わります。鏡映を 1 つ選んで とすると、 の元は か の形に書ける。

しかも になる。鏡に映すと回転の向きがひっくり返る、という関係です。

だから という半直積。直積にはならない。

鏡映で生成される

の元は、鏡映だけで作れます。しかも高々 個で足りる。

これが Cartan-Dieudonné の定理です。 なら、鏡映 2 つの積が回転になる。

2 枚の鏡のなす角を にすると、合成は の回転になる。 の元は偶数個の鏡映の積で、 が の偶数乗として になる。

Euler の回転定理

3 次元の回転は、かならず軸を持ちます。 が固有値 を持つ、という主張。

証明は行列式の計算だけで済む。 から と書けます。

行列式をとると、 なので次のようになる。

最後の等号は と、 が奇数であることから出ます。あわせて 。

固有値 の固有ベクトルが、そのまま回転軸になる。

奇数次元であることと の両方が効いています。 の回転には軸がなく、 でも同じ議論は通らない。

例:回転行列から軸と角を出す

を へ、 を へ、 を へ送る行列をとります。

行列式は で、たしかに の元。 を解くと が出る。

角は跡から出ます。軸のまわりの の回転は、適当な基底で と 次の回転ブロックに分かれるので、跡が になる。

なので は 度です。立方体を対角線のまわりに 度まわす操作が、ちょうどこれにあたる。

の元 の跡が のとき、回転角はいくつですか。

  • 30 度
  • 60 度
  • 90 度
  • 120 度
__RESULT__

跡は です。 から となり、 は 度になります。

SO(3) の位相と 2 重被覆

回転は、軸の向きと角で指定できます。半径 の球体の点にその 2 つを詰め込むと、表面の対蹠点どうしが同じ回転を表す。

だから は 3 次元実射影空間と同相です。連結ではあるものの、単連結ではない。

基本群は位数 の群になります。単位四元数のなす から への 2 対 1 の全射があり、これが普遍被覆にあたる。

行列式が の直交変換を 回反 といいます。回転と鏡映を合わせたもので、集めても群にはならない。

回転のあとに、その軸と垂直な面で折り返す変換のこと。

SO(3) の有限部分群

の有限部分群は、5 系統に分かれます。

群位数対応する立体
角錐
角柱
12正四面体
24立方体と正八面体
60正十二面体と正二十面体

巡回群と二面体群の 2 系統が無限にあり、あとは正多面体の回転群が 3 つ。双対な立体は回転群が同じなので、5 種類の正多面体に対して 3 つの群しか現れません。

のほうは事情が違う。鏡映が入るぶん系統が増え、点群として 14 系統に分かれます。

リー環は反対称行列

単位元の近くを見ると、 の形に書けます。 に入れて の 1 次までを残すと、 が出る。

反対称行列の全体が のリー環です。対角成分は に決まり、上三角の 個だけが自由に動く。

だから次元は で、 なら になる。軸の向きに 2 つ、角に 1 つという内訳と合う。

よくある誤り

行列式 の直交行列が群をなす、とは言えません。単位元の行列式は なので、その集合に入りません。
が可換、とは言えません。可換なのは と、位数の小さい場合だけです。
回転がいつでも軸を持つ、とは言えません。軸が出るのは奇数次元で行列式が のときで、 には軸がありません。
が単連結、と思うと外します。基本群は位数 の群で、 が普遍被覆になります。
の有限部分群の分類を の分類と混ぜると誤りです。 は点群として 14 系統に分かれます。
正多面体 5 種類に回転群が 5 つある、とは言えません。双対な組が同じ群を与えるので 3 つです。
直交行列の逆行列を掃き出しで求める必要はありません。転置がそのまま逆行列です。

参考文献

Jean Gallier, The Cartan-Dieudonné Theorem(ペンシルベニア大学)
Orthogonal group - Wikipedia
3D rotation group - Wikipedia
Orthogonale Gruppe - Wikipedia(ドイツ語)
Groupe orthogonal - Wikipédia(フランス語)
直交群は行列式で 2 つに割れ、1 のほうが回転、-1 のほうが回反になります。SO(2) は円周そのもので可換ですが、SO(3) は事情が違う。det(A - I) = 0 から回転はかならず軸を持ち、跡を見れば角も出ます。正多面体 5 種類からは、3 つの群しか生まれません。