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複素の世界で長さを保つ変換は何か?ユニタリ群と SU(2)

複素ベクトル空間でエルミート内積を保つ変換の全体が、ユニタリ群 です[1]。

実の直交群を複素に置き換えたものにあたります。ところが直交群と違って連結で、しかも は 次元球面そのものになる。

定義

が を満たすとき、 をユニタリ行列といいます。 は転置して各成分の複素共役をとった行列です。

条件は内積の保存と同じです。標準的なエルミート内積を とすると

がすべての で成り立つことと が同値になります。列ベクトルが正規直交系をなす、と言い直してもよい。

行列式が のものを集めたものが特殊ユニタリ群 です[1]。

固有値の絶対値は 1

()とします。ノルムが保たれるので

だから です。固有値は複素平面の単位円の上に並びます。

行列式についても同じことが言えます。 なので、。

写像 ができました。対角行列 を考えると全射で、核が です。

は絶対値 の複素数の全体で、円周です。

は 3 次元球面

の場合を書き下します[1]。

、 と置くと、条件は になります[1]。

つまり は の中の単位球面 と微分同相です[1]。群が球面という、めずらしい例になっています。

から への 対 の準同型があります。核は で、 は の 重被覆です。

対角行列が極大トーラス

の中で対角行列の全体 をとります。対角成分が絶対値 の複素数なので、 は 次元トーラス と同型です[2]。

これが極大トーラスになります[2]。より大きいトーラスがあれば、 のすべての元と可換な元が の外に見つかるはずです。ところが には固有値がすべて異なる対角行列があり、そういう行列と可換な行列は対角行列に限る[2]。

スペクトル定理を使うと、 の元はどれも の元に共役になります[2]。ユニタリ行列はユニタリ行列で対角化できるためです。

同じ形の分解が、コンパクト連結リー群一般で成り立ちます[2]。Cartan の定理です。

線型代数のスペクトル定理が、リー群の一般論では極大トーラスによる被覆として現れる。 はその原型になっています。

中心

の中心はスカラー行列の全体です。 がユニタリになる条件は なので、中心は と同型になります。

では行列式の条件が付きます。 なので、 が要る。

中心で割ったものを と書きます[2]。

次元とリー環

という条件は、左辺がエルミート行列なので、実数の方程式として 本にあたります。 の実次元が なので、差をとると

単位元での接空間がリー環です。 を で微分して を入れると

つまり は歪エルミート行列の全体です。 はさらにトレースが のものに限られます。

はトレース の 次歪エルミート行列で、実次元 です。

直交群 O(n)

行列式が の 2 通りあるので、連結成分が 2 つに分かれる

ユニタリ群 U(n)

行列式は単位円をすべて動けるので、全体が連結になる

コンパクトで連結

の元は各成分の絶対値が 以下なので、 の中で有界です。 は閉条件なので閉集合。よってコンパクトになります。

連結性はスペクトル定理から出ます。任意の を と書き、 を連続に へ動かせば、単位元まで道がつながる。

も同じ議論でコンパクト連結です。さらに単連結になります。 がその最初の例で、球面は 次元以上で単連結です。

有限体版

同じ形の群を有限体でも作れます。 の 上の共役をとる自己同型を、複素共役の代わりに使う。

そこから出るのが有限ユニタリ群で、中心で割ると になります。有限単純群の分類に現れる Lie 型の系列のひとつです。

複素数体の上で連続な群を作る道具立てが、有限体の上ではそのまま有限単純群を作る道具になっている。

の中心はどれと同型ですか。

  • 自明群
__RESULT__

中心はスカラー行列 からなり、 が要ります。 の 乗根が 個あるので、中心は位数 の巡回群です。 のほうは行列式の条件がないので、中心が になります。

長さを保つという 1 つの条件から、コンパクト性も連結性も対角化も出てきます。 が球面になるのはその副産物で、群としての構造と多様体としての構造が同じ 1 つの条件から決まっている例になっています。

参考

Alexander Kirillov, Jr., *Introduction to Lie Groups and Lie Algebras*, Stony Brook University
Zuoqin Wang, *Cartan's Theorem of Maximal Tori*, Lie Groups lecture notes, USTC
複素ベクトル空間でエルミート内積を保つ変換の全体が、ユニタリ群です。実の直交群を複素に置き換えたものですが、直交群と違って全体が連結になります。行列式の絶対値が 1 になること、固有値がすべて単位円の上に並ぶことを証明つきで扱いました。$SU(2)$ は 2 つの複素数のノルムが 1 という条件で書けるので、4 次元空間の中の球面そのものになります。対角行列の全体が極大トーラスで、線型代数のスペクトル定理が Cartan の定理の原型として現れる。中心が $U(n)$ では $U(1)$、$SU(n)$ では位数 $n$ の巡回群になること、リー環が歪エルミート行列になることまで。