可測空間とは、集合とその上の σ 加法族の組のことである。測度論では、まず「どの部分集合を測れるものとして扱うか」を決める必要があり、その枠組みを与えるのが可測空間である。
可測空間の定義
集合 とその上の σ 加法族 の組 を可測空間という。 の元を可測集合と呼ぶ。
σ 加法族 は次の 3 条件を満たす の部分集合族である:
可測空間はまだ「測度」を備えていない段階であり、どの集合が測定の対象になりうるかだけを規定している。
可測写像の定義
2 つの可測空間 と が与えられたとき、写像 が可測写像であるとは、 の任意の元の逆像が に属することをいう:
この条件は、 側で「測れる」と決めた集合を で引き戻したとき、 側でも「測れる」ことを要求している。
可測性の判定
可測写像であることを示すには、 のすべての元について逆像を調べる必要はない。 を生成する集合系について確認すれば十分である。
と生成されているとき、 が可測であることと、すべての に対して が成り立つことは同値である。
この事実は実用上重要である。たとえば でボレル集合族 を考えるとき、 は開集合全体から生成される。したがって、すべての開集合 に対して を示せば、 の可測性が従う。さらに、 は 型の区間全体からも生成されるので、
を示すだけでも十分である。
可測写像の合成
可測写像の合成は再び可測写像になる。, , を可測空間とし、 と がともに可測ならば、合成 も可測である。
証明は逆像の性質から直ちに従う。任意の に対し、 である。 の可測性から であり、 の可測性から が得られる。
実数値可測関数
測度論で最も頻繁に現れるのは、可測空間 から への可測写像である。これを可測関数と呼ぶ。
可測関数 とスカラー に対し、次の関数もすべて可測である:
- ,
また、可測関数の点ごとの極限も可測性を保つ。可測関数列 が各点で収束するとき、
で定まる も可測関数である。この性質は、 や を用いて
と表せることから証明される。上限・下限の操作が可測性を保存することがポイントである。