ファトゥの補題は、非負可測関数列の下極限に関する不等式である。等号が成り立つとは限らないが、積分の下からの評価を与える基本的な道具として、優収束定理の証明などに用いられる。
定理の主張
を測度空間とし、 を非負可測関数の列とする。このとき
が成り立つ。
証明
とおく。 は非負可測関数で、列 は単調増加である。また
が成り立つ。
各 について ()なので、 である。 について下限をとれば
単調収束定理を に適用すると、
が得られる。
等号が成り立たない例
ファトゥの補題で等号が成り立つとは限らない。
, をルベーグ測度とし、 とする。各 の積分は
一方、各点 について、十分大きい では なので となる。したがって
であり、
となる。質量が無限遠へ「逃げる」現象が等号不成立の原因である。
上極限に対する類似
上極限に対しては、一般に逆向きの不等式
は成り立たない。ただし、可積分な上界が存在する場合は優収束定理により等号を含む強い結果が得られる。
逆ファトゥの補題
可積分な上界 で a.e. を満たすものが存在するとき、
が成り立つ。これは にファトゥの補題を適用することで証明できる。
ファトゥの補題と逆ファトゥの補題を組み合わせると、優収束定理が導かれる。