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「辺は区間でなくてよい」から始める積 σ 加法族と積測度

2 つの可測空間 と から、直積の上の可測空間を作ります[1]。

出発点は可測長方形です。 と をとって の形に書ける集合のこと。

これを積 σ 加法族といいます。名前に長方形とありますが、辺は区間である必要がありません[4]。

でボレル集合族をとると、 も可測長方形です。辺がどんな可測集合でもかまわない。

長方形の族は σ 加法族ではない

可測長方形を集めただけでは σ 加法族になりません。2 つの長方形の合併が長方形にならないから。

そこで生成をとります。可算合併と補集合を許すと、階段状の領域も、曲線で囲まれた領域も入ってくる。

切り口はいつも可測になる

を積 σ 加法族の元とします。 を固定して縦に切った切り口を 、 を固定して横に切った切り口を と書きます[3]。

が積 σ 加法族に属していれば、 は に、 は に属します[4]。

証明は生成の議論です。切り口をとる操作が補集合とも可算合併とも交換するので、切り口が可測になる集合の族はそれ自体 σ 加法族になる。可測長方形を含むので、生成した族まで丸ごと含みます。

積測度をどう載せるか

長方形の測度は掛け算で決めます。 が満たすべき等式はこれ[3]。

片方が でもう片方が のときは、 と約束します。

問題は、この式だけでは長方形の上でしか値が決まらないこと。積 σ 加法族の全体へ広げる手続きが要ります。

手順は測度を作るときの定石どおりです。長方形の有限合併がなす有限加法族の上に前測度を定め、そこから外測度を作り、カラテオドリの条件で可測集合を切り出す[4]。

長方形に掛け算で値を割り当てる

有限合併の上の前測度に広げる

外測度を作ってカラテオドリで切り出す

σ 有限なら一意に決まる

と がともに σ 有限なら、上の等式を満たす測度は積 σ 加法族の上でただひとつです[1]。

このとき積測度は切り口の測度の積分としても書けます[3]。

右の 2 つが等しいこと自体が定理の内容で、これがフビニ・トネリの土台になります。

σ 有限でないと一意でなくなる

条件を外すと壊れます[1]。 とし、 をルベーグ測度、 を数え上げ測度にとる。

は の上で σ 有限ではありません。 を可算個の有限測度の集合で覆えないから。

対角線 を見ます。長方形の掛け算の規則を満たす測度が複数あって、 に与える値が食い違う[1]。

いちばん小さい積測度をとると の測度は 、いちばん大きい積測度をとると になります[1]。σ 有限性は、こういう食い違いを封じるための条件です。

有限な場合

積測度は一意。切り口の積分としても書け、フビニ・トネリの定理がそのまま成り立つ

有限でない場合

長方形の規則を満たす測度が複数ある。対角線のような集合で値が食い違い、積分の順序交換も崩れる

ボレル集合族では積がそのまま合う

と にボレル集合族を入れると、積 σ 加法族が高次元のボレル集合族と一致します[4]。

証明は両向きの包含です。高次元の直方体が低次元の直方体の積で書けることから片方が出て、 が可測になる の族を作ると、それが σ 加法族になることからもう片方が出ます。

第二可算公理を満たす空間なら一般に成り立ちます[2]。可算な基底があるおかげで、生成元を可算個にそろえられるから。

ここから 上のルベーグ測度を、1 次元のルベーグ測度の積として作り直せます。直方体から直接作る道と、積をとる道が同じ場所に着く。

ルベーグ σ 加法族では完備性が落ちる

ボレルではうまくいったのに、ルベーグ σ 加法族では包含が真になります[3]。

理由は完備性です。 の中で は 2 次元測度が なので、その部分集合はすべて に属します。

ところが を が非可測集合になるようにとると、切り口が可測でない。積 σ 加法族の元なら切り口は必ず可測だったので、この集合は左辺に属しません[1]。

完備な測度どうしの積が完備とは限らない。それがこの現象の正体です。 は積 σ 加法族の完備化として得られます[3]。

ボレル集合族

積 σ 加法族と高次元のボレル集合族が一致する。完備でないので、この不一致が起きない

ルベーグ σ 加法族

積 σ 加法族は 2 次元のルベーグ可測集合族より真に小さい。完備化してはじめて一致する

単調族定理という道具

積測度の議論では、可測長方形で成り立つ性質を積 σ 加法族の全体へ広げる場面がくり返し出ます。

そこで使う道具が単調族定理。有限加法族を含む最小の単調族が、その有限加法族が生成する σ 加法族に一致する[4]。

長方形の有限合併がなす有限加法族の上で性質を確かめ、単調な極限で閉じていることを示す。すると性質が積 σ 加法族の全体で成り立ちます。

可測長方形だけを調べれば済むのは、生成元で確かめれば足りるという型の議論が効くからです。

性質が成り立つ集合の族が σ 加法族か単調族になっていれば、生成元を含む時点で全体を含む。

quiz で確かめる

が と一致しないのはなぜですか。

  • 可測長方形の辺が区間に限られるから
  • 積 σ 加法族の元は切り口が必ず可測だが、完備化で入る集合はそうとは限らないから
  • 2 次元のルベーグ測度が平行移動不変でないから
__RESULT__

は 2 次元測度が なので、その部分集合はすべてルベーグ可測です。 を非可測な でとると切り口が可測にならず、積 σ 加法族には属しません。

よくある誤り

可測長方形の辺が区間だと思う。どんな可測集合でもかまいません。
可測長方形の全体が σ 加法族だと思う。合併で閉じないので生成が要ります。
積測度がいつでも一意だと思う。σ 有限でないと食い違う例があります。
完備な測度の積が完備だと思う。 は完備化してはじめて得られます。
切り口が可測でない場合があると思う。積 σ 加法族の元なら必ず可測です。
と が違うと思う。こちらは一致します。
積測度の値を長方形以外で直接定義しようとする。前測度から拡張する手続きを踏みます。

参考文献

Product measure. Wikipedia(英語).
Produkt-σ-Algebra. Wikipedia(ドイツ語).
Mesure produit. Wikipédia(フランス語).
J. K. Hunter. *Measure Theory*. University of California at Davis, 2011.
$A \times B$ の形の可測長方形から生成した σ 加法族が積 σ 加法族です。辺は区間でなくてよく、可算合併と補集合だけで円の内部まで届く。切り口がいつも可測になること、長方形の掛け算から前測度を経て積測度を作る手順、σ 有限でないと対角線の測度が $0$ と無限大に割れることを見ます。ボレルなら積がそのまま高次元と一致するのに、ルベーグでは完備化しないと足りない理由まで。