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リーマン積分ができる条件は不連続点の測度で決まる|測度論

の上でリーマン積分できる関数は、必ずルベーグ積分もできて、値も一致します[1]

逆は成り立ちません。ルベーグ積分できてもリーマン積分できない関数がいくらでもある[3]

つまりルベーグ積分はリーマン積分の拡張。計算の結果が変わることはなく、扱える関数の範囲だけが広がる。

リーマン可積分になる条件

どこまで広がるのかは、はっきり書けます。ルベーグとヴィタリが 1907 年に独立に示した判定条件[2]

有界な関数 がリーマン可積分であることと、 の不連続点全体の集合がルベーグ測度 であることは同値になります。

条件は 2 つです。有界であること、そして不連続点が測度 しかないこと。どちらが欠けてもリーマン積分できません。

有界であることを確かめる

不連続点の集合の測度を測る

0 ならリーマン可積分

上下のダルブー和で挟む手続きを思い出すと、条件の意味が見えてくる。細分を細かくしたとき、上和と下和の差が残るのは関数が振れている場所です。

振れている場所が測度 しかなければ、差の総量は に落ちる。振れが正の測度にわたって残ると、差は消えません。

例:ディリクレ関数

で考えます。どの区間にも有理数と無理数が両方いるので、上和はいつも 、下和はいつも [3]

細分をどれだけ細かくしても差が のまま残り、リーマン積分できません。不連続点の集合は 全体で、測度は 。判定条件を満たしていない。

ルベーグ積分なら から値は です。可算個の点の寄与が測度で消える。

ここで言葉に気をつけたいところがあります。 は「ほとんどいたるところ連続」ではありません[1]。連続な関数と a.e. で等しいだけ。

「ほとんどいたるところ連続」は不連続点が測度 という意味で、「連続関数と a.e. で等しい」とは別の条件です。リーマン可積分の判定に効くのは前者のほう。

ほとんどいたるところ連続

不連続点の集合の測度が 。リーマン可積分の判定条件はこちら

連続関数と a.e. で等しい

値を測度 の集合の上で書き換えれば連続になる。ディリクレ関数はこちらだけを満たす

例:トマエ関数とカントール集合

不連続点が無限個あってもリーマン可積分になる例を並べます。

トマエ関数は、既約分数 、無理数で をとります。不連続点は有理数全体で可算個、測度は 。有界でもあるので、リーマン可積分です。

積分の値は 。連続点の集合が無理数全体で、そこでは値が だからです。

もっと極端な例もあります。測度 のカントール集合 の指示関数 は、 の各点で不連続[1] は非可算なので、不連続点は非可算個。

それでも なので判定条件を満たし、リーマン可積分になります。不連続点の個数ではなく測度が問題だ、という点がはっきり出る例。

逆に、抜く幅を縮めて作った測度 の太ったカントール集合を使うと、 の不連続点の測度が になってリーマン積分できません。同じ手順で作った集合なのに、測度の違いだけで結果が分かれます。

広義積分では逆転が起きる

ここまでは有界閉区間の話でした。広義リーマン積分まで広げると、包含関係が崩れます[4]

この積分は広義リーマン積分として収束します。ところが絶対値をとると発散する[4]

ルベーグ積分の可積分性は で定義されていました。だから でルベーグ可積分にならない。

正の部分と負の部分が打ち消し合って収束する、という条件収束の型です。ルベーグ積分は打ち消し合いに頼らない定義なので、この型を拾えません。

条件収束する広義積分をルベーグの枠で扱いたいときは、区間を切って極限をとる形に書き直します。 と書けば、各段はルベーグ積分として意味を持つ。

極限をとると差がはっきりする

2 つの積分の差がいちばん出るのは、関数列の極限を扱うところです[3]

の有理数を と並べ、 を最初の 個の点でだけ をとる関数とします。各 はリーマン可積分で積分は 、しかも増加列で有界。

ところが極限はディリクレ関数で、リーマン積分できません。増加する有界なリーマン可積分列の極限が、枠の外へ出てしまう。

ルベーグ積分ならこの心配がありません。可測関数の族が各点極限で閉じているので、極限も枠の中に残る。単調収束定理も優収束定理も、この閉じ方の上に立っている。

観点リーマン積分ルベーグ積分
刻む向き定義域値域
極限で閉じるか閉じない閉じる
条件収束広義積分で拾える拾えない

どちらが広いか

有界閉区間に限れば、ルベーグ積分のほうが真に広い。広義積分まで含めると、どちらにも相手が扱えない関数があります。

はルベーグだけが扱えます。 で見ると、広義リーマンだけが扱える。

両方を含む枠組みも作られていて、ヘンストック・クルツヴァイル積分がそのひとつ[4]。ただし収束定理の扱いやすさでは、ルベーグ積分に分があります。

リーマン積分の強み

条件収束する広義積分を素直に扱える。定義が初等的で、計算の道具立てが軽い

ルベーグ積分の強み

各点極限で閉じている。収束定理が書け、 空間が完備になる。積分できる関数の範囲も広い

quiz で確かめる

測度 のカントール集合 について、 でリーマン積分できますか。

  • できない。不連続点が非可算個あるから
  • できる。不連続点の集合の測度が だから
  • できない。 が閉集合だから
__RESULT__

判定条件が見ているのは不連続点の個数ではなく測度です。 の不連続点は の全体で非可算個ありますが、 なので条件を満たします。

よくある誤り

ルベーグ積分の値がリーマン積分と違うことがあると思う。リーマン可積分なら必ず一致します。
不連続点が可算個なら可積分、非可算個なら不可積分だと思う。効くのは測度のほうです。
ディリクレ関数を「ほとんどいたるところ連続」と呼ぶ。連続関数と a.e. で等しいだけです。
広義リーマン可積分ならルベーグ可積分だと思う。 が反例です。
有界性の条件を忘れる。非有界な関数はそもそもリーマン積分の対象になりません。
リーマン積分でも収束定理が同じように使えると思う。増加列の極限が枠の外へ出ます。
ルベーグ積分がすべてを含むと思う。条件収束する広義積分は拾えません。

参考文献

J. K. Hunter. *Measure Theory*. University of California at Davis, 2011.
Riemann integral. Wikipedia(英語).
Riemann-Integral. Wikipedia(ドイツ語).
Dirichlet integral. Wikipedia(英語).
リーマン積分できる関数はルベーグ積分もでき、値も一致します。逆は成り立たず、その境目を決めるのが不連続点の集合の測度。個数ではなく測度なので、不連続点が非可算個あるカントール集合の指示関数はリーマン可積分で、可算個しかないディリクレ関数は不可積分になる。広義積分まで広げると包含が逆転し、$\sin x / x$ はリーマンで拾えてルベーグで拾えない。極限をとったときの振る舞いの差まで並べます。