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主小行列式を左上から順に見る - 正定値性の判定練習

左上 、左上 、左上 と切り出して、それぞれの行列式を見る。全部正なら正定値です[1]。

固有値を求めるより速い。3 次でも、 次と 次の行列式を 1 回ずつ計算するだけで終わります。

以下 12 問。判定だけの問題から、文字を含む範囲を求めるもの、判定法が通らない場合まで並べました。

判定の道具は 2 つ

実対称行列 が正定値であるとは、 のすべてで になることをいいます[2]。

1 つ目の判定法は固有値です。実対称なら固有値はすべて実数で、正定値とすべての固有値が正であることが同値になります[2]。

2 つ目が首座小行列式です。左上から を切り出した行列の行列式を と書きます。

がすべて正であることと、 が正定値であることが同値です。シルベスターの判定法と呼びます[1,3]。

負定値なら符号が交互になります。、、、という並び。 が正定値だと考えれば出てきます。

問題 1

次の行列が正定値かどうか判定してください。

、。どちらも正なので正定値です。

固有値でも確かめられます。固有多項式は で、。どちらも正です。

問題 2

ですが、。ここで判定が終わります。

固有値は 。負の固有値があるので、正定値でも負定値でもありません。この状態を不定値と呼びます。

を入れると 。負になる方向が実際に見つかります。

問題 3

、。

を第 1 行で展開します。

なので正定値ではありません。二次形式を平方完成すると、正体が見えます。

乗の和なので 以上。 で になります。半正定値です。

問題 4

対角行列なので、対角成分がそのまま固有値。 はすべて正で、正定値です。

首座小行列式でも 、、 と正が並びます。

問題 5

、。

3 つとも正なので正定値。差分の行列としてよく出てくる形で、固有値は 、、 です。

問題 6

とします。次の行列が正定値になる の範囲を求めてください。

は仮定から成り立ちます。 より または 。

と合わせて です。 のときは で、半正定値になります。

問題 7

、。正定値です。

平方完成でも確かめられます。 で、 乗の和が になるのは のときだけ。

問題 8

次の行列を判定してください。

、。符号が負・正と交互になっています。

これは負定値の並びです。 を作ると 、 でどちらも正なので、 が正定値。よって は負定値です。

問題 9

、。

正定値です。 と、値まで同じになりました。

問題 10

次の行列で、首座小行列式が 、 になることを確かめ、半正定値かどうか判定してください。

、。どちらも 以上です。

ところが を入れると 。半正定値ではありません。

首座小行列式が 以上なら半正定値、という言い換えは成り立たない。この点は誤用として繰り返し指摘されています[3]。

半正定値を判定するには、左上に限らないすべての主小行列式を見る必要があります。 では 成分だけの小行列式が で負になり、そこで引っかかります。

正定値の判定

首座小行列式だけで足りる。 個の行列式を順に見ればよい

半正定値の判定

すべての主小行列式が要る。 個あり、 が大きいと実用的でない

問題 11

次の行列が正定値になる の範囲を求めてください。

はいつでも成り立ちます。 より 。

より 。3 つの条件のうちいちばん厳しいものが残るので、答えは です。

では で、半正定値。、 だけ見て と答えると誤りになります。

問題 12

を任意の実行列とするとき、 が半正定値であることを示し、次の で判定してください。

一般の証明は 1 行です。。

正定値になるのは のとき、つまり の列が一次独立なときです。

この では第 2 列が第 1 列の 倍なので、一次独立ではありません。積を計算します。

、。正定値ではなく、半正定値です。

から順に計算する

以下が出たら打ち切る

最後まで正なら正定値

検算

固有値でもう一度判定します。首座小行列式が全部正なら、固有値も全部正になるはずです。

問題 1 の なら固有値 と 。トレース が固有値の和、行列式 が積と一致します。

トレースと行列式だけでも 次の判定ができます。積が正で和も正なら、固有値は両方とも正だからです。

次以上では、二次形式を平方完成する方法が確かめになります。問題 3 のように 乗の和で書けたら半正定値、係数がすべて正で変数が全部現れていれば正定値です。

次の実対称行列で 、、 でした。この行列はどれですか。

  • 正定値
  • 半正定値
  • 不定値
__RESULT__

が負なので、固有値の積が負です。 個の積が負になるのは、負の固有値が 個か 個のとき。どちらでも正の値と負の値の両方をとるので不定値になります。

判定法の使える範囲も確かめます。

首座小行列式がすべて 以上なら、その行列は半正定値ですか。

  • 半正定値になる
  • 半正定値とは限らない
  • 正定値になる
__RESULT__

では ですが、 で値が になります。半正定値の判定には、左上に限らないすべての主小行列式が必要です。

左上から切って、行列式の符号を並べる。それだけで正定値かどうかが決まります。 が出た瞬間に判定法が使えなくなる点だけ、覚えておくと迷いません。

参考文献

Sergei Treil. *Linear Algebra Done Wrong*, Chapter 7. Brown University.
Positive definite matrix. StatLect.
Clarence C. Y. Kwan. *Remedies for Misapplications of Sylvester's Criterion: A Pedagogic Illustration*. Spreadsheets in Education 12 (2021).
左上 $1 \times 1$、$2 \times 2$、$3 \times 3$ と切り出して、行列式の符号を並べる。全部正なら正定値です。固有値を求めるより速く、$3$ 次でも行列式を 2 回計算すれば終わります。判定だけの問題から、$k$ を含む行列が正定値になる範囲を求めるもの、$B^{\mathsf{T}}B$ が半正定値になる証明まで 12 問。$\operatorname{diag}(0, -1)$ のように首座小行列式が $0$ 以上でも半正定値にならない例も入れました。半正定値の判定には左上に限らないすべての主小行列式が要る、という区別が要点になります。