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二次形式を平方完成で標準形にする演習と慣性法則

から交差項を消します。 について平方完成するだけ。

、 と置けば 。固有値を求めなくても標準形になりました。

以下 11 問。平方完成でできる場合、工夫が要る場合、符号の個数が変換によらないことまで扱います。

二次形式と対称行列

の形に書くとき、 は対称行列にとります。交差項の係数を半分ずつ分けるのがこつです。

なら、 を と に分けます。

対角成分が 乗の項の係数、非対角成分が交差項の係数の半分。ここを間違えると以降がすべてずれます。

標準形とは

変数変換 ( は正則)で交差項を消し、 乗の項だけにした形を標準形といいます。

やり方は 2 通り。直交行列で対角化すると係数が固有値になり、平方完成なら固有値を求めずに済みます[1]。

係数の値は方法によって変わります。ところが、正の係数の個数、負の個数、 の個数は変わりません[1]。

この 3 つ組を符号数と呼び、変換によらないという主張がシルベスターの慣性法則です[1,3]。

問題 1

次を標準化してください。

平方完成すると 。、 と置けば です。

対応する行列と固有値は次のとおりです。

直交変換なら になります。

係数は と で違いますが、正が 1 個、 が 1 個という個数は同じ。符号数は です。

問題 2

について平方完成します。。

係数がどちらも正なので正定値。符号数は です。

対応する行列の固有値は と 。直交変換なら で、こちらも正が 2 個です。

問題 3

冒頭で見たとおり 。符号数は で不定値です。

固有多項式は で、。 が負になります。

係数は と で違うのに、正 1 個・負 1 個という内訳は一致しました。

問題 4

すべての交差項の係数が なので、対称行列は成分がすべて の 次行列になります。

まとめると 。 と置けば です。

階数が なので固有値は 。符号数は で半正定値になります。

問題 5

が他と混ざっていないので、 と だけを平方完成します。

係数がすべて正なので正定値。符号数は です。

首座小行列式でも確かめられます。、、 で、すべて正になります[2]。

問題 6

乗の項がないので、そのままでは平方完成できません。ここで変数変換をはさみます。

、 と置きます。この変換の行列を書くと、行列式が で正則だと分かります。

符号数は 。対応する行列は非対角成分が の対称行列で、固有値は です。

乗の項がまったくないときは、この置き換えを先に入れる。手順の分かれ目になります。

問題 7

を含む項をまとめます。 なので、残りは 。

と置き、残りを について平方完成します。。

、 と置くと 。符号数は です。

が の正則な変換になっているかを確かめます。、、 の係数行列は行列式が で、正則です。

問題 8

の項をまとめます。。

符号数は で不定値。 変数のうち 方向で値が負になります。

対応する行列の行列式は です。 次で正の値ですが、 でも積は正になるので、行列式だけでは判定できません。

問題 9

標準形 について、階数と符号数を答え、定値性を判定してください。

でない係数が 個なので階数は 。正が 2 個、負が 1 個で、符号数は です。

正と負の両方があるので不定値。 方向へ動けば値が負になり、 方向なら正になります。

正定値になるのは、符号数が のとき。半正定値は の形です[2]。

問題 10

問題 3 の を、、 という別の変換で標準化し、符号数を確かめてください。

代入して整理します。、 なので、問題 3 の結果を使えます。

展開すると 。交差項が残ってしまいました。

この変換では標準形になりません。ただし符号数を変える力もない。どんな正則変換を選んでも、正と負の個数は のままです[3]。

問題 11

を標準化し、正定値かどうか判定してください。

平方完成します。。

係数が両方とも正なので正定値。符号数は です。

固有値でも確かめられます。

どちらも正なので、正定値という判定と合います。

平方完成

固有値を求めずに済む。係数は変換のとり方で変わる

直交変換

係数がそのまま固有値になる。固有多項式を解く手間がかかる

対称行列に直す

平方完成か直交変換で交差項を消す

係数の符号を数える

と は、同じ二次形式を別の変換で標準化したものになりえますか。

  • なりえる
  • なりえない
  • 係数が違うので別の形
__RESULT__

符号数がどちらも で一致しています。慣性法則は係数の値ではなく、正・負・ の個数だけを保証するので、この 2 つは同じ二次形式の標準形になりえます。

平方完成が使えない場合も確かめます。

を平方完成するとき、最初にすることはどれですか。

  • について平方完成する
  • 、 のような置き換えを入れる
  • 標準化できないと結論する
__RESULT__

乗の項が 1 つもないので、そのままでは平方完成の形が作れません。正則な置き換えで 乗の項を作ってから進めます。標準形にできない二次形式はありません。

交差項を消して 乗の和にする。係数の値は道具によって変わりますが、正と負の個数だけは動きません。判定に使うのはその個数のほうです。

参考

Sergei Treil. *Linear Algebra Done Wrong*, Chapter 7. Brown University.
Positive definite matrix. StatLect.
Markus Schweighofer. *Reelle quadratische Formen*. Lineare Algebra II, Universität Konstanz.
$x^2 - 4xy + 3y^2$ は $x$ について平方完成するだけで $(x-2y)^2 - y^2$ になります。固有値を求める必要はありません。11 問で、$2$ 変数から $3$ 変数まで、$2$ 乗の項がない $xy$ をどう扱うか、変換が正則かをどう確かめるかを追いました。平方完成と直交変換では係数が違って出ますが、正・負・$0$ の個数だけは一致する。これがシルベスターの慣性法則で、符号数が $(n,0,0)$ なら正定値という判定もここから読めます。$2u^2 - 3v^2$ と $u^2 - v^2$ が同じ二次形式の標準形になりうる理由まで。