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English

数をひとつ返す写像を集める〜双対空間と有界線形汎関数

ノルム空間 からスカラーへの線形写像 を線形汎関数といいます[3]。有界であるとは、定数 がとれて次が成り立つこと。

有界な線形汎関数をすべて集めたものが双対空間 です[1]。値域が という特別な場合の作用素空間、という位置づけになります。

代数的双対と位相的双対

線形性だけを課した汎関数の全体を代数的双対、連続性まで課したものを位相的双対と呼び分けます[4]

有限次元なら両者が一致します。線形写像が無条件で有界になるから。

無限次元では大きく食い違う[3]。連続でない線形汎関数が、いくらでも作れてしまいます。

関数解析で と書くときは、ふつう位相的双対のほう。連続なものだけを相手にします。

汎関数を幾何で見ると、値が等しい点の集まりが平行な超平面の族になります。核が原点を通る超平面で、そこからどれだけ離れているかが値。

双対空間はいつでもバナッハ空間

は、 が完備でなくてもバナッハ空間になります[4]

理由は値域が だから。作用素の空間 が完備なら完備で、ここでは が完備です[3]

だから双対をとる操作は、完備性を勝手に補ってくれる。もとの空間の欠点にかかわらず、双対側は扱いやすくなります。

有限次元では自分自身と同型

次元なら、 次元です[3]。基底 に対し、座標をとり出す汎関数を並べる。

の基底で、双対基底と呼ばれます[4]。どの汎関数も と書けます。

ただし同型の作り方は基底の選び方に依存します[3] は同じ次元なのに、自然な対応がない。

ヒルベルト空間では事情が変わり、内積を使った自然な同一視ができます。これがリースの表現定理の内容です[3]

の双対が になるのも、この絵の延長です[4] を満たす指数の組で、ヘルダーの不等式がノルムの一致を与えます。

のときは なので、 は自分自身と双対になる[3]。自己双対と呼ばれる状態です。

例:連続関数の空間の双対

の双対は、簡単な形には収まりません[3]

密度 を掛けて積分する汎関数は、確かに有界です。

ところがこの形で尽きません。1 点での値を返す評価汎関数 も有界線形汎関数で、密度では書けない[3]

の双対の正体は、区間上のラドン測度の空間です[3]。関数では足りず、測度まで広げてはじめて全部が書ける。

の双対

なら で、関数のまま書ける。ヘルダーの不等式がノルムを与える

の双対

関数では足りず、ラドン測度になる。ディラック測度に対応する評価汎関数がその代表

例:連続でない線形汎関数

無限次元では、有界でない線形汎関数が作れます[3]

で単項式の集まり をとり、ハメル基底へ延ばします。各 は有限個の基底の 1 次結合で一意に書ける。

の係数を返す汎関数 を作り、 と定めます。各 では有限個の項しか残らないので、値は定まる。

ところが なのに なので、有界ではありません[3]。無限次元の線形空間には、必ずこの種の汎関数があります。

選択公理を使ってハメル基底をとるところが、この構成の要点。具体的に書き下すことはできません。

無限次元では、線形なだけの汎関数有界な汎関数が大きく違います。

ハメル基底で作った汎関数は線形だが連続でない。位相的双対はずっと小さい。

二重双対への自然な埋め込み

もバナッハ空間なので、その双対 が作れます[3]。二重双対と呼びます。

から への自然な対応はなかった。ところが から へは、自然な対応があります。

を「 を返す機械」と読み替えただけ。基底を選ぶ必要がありません。

この は単射で、しかもノルムを保ちます[2]。ハーン・バナッハの定理が、ノルムを実現する汎関数の存在を保証するからです。

反射性

が全射のとき、 を反射的といいます[2] が等長同型になる状態です。

ヒルベルト空間はすべて反射的で、 も反射的[2]。有限次元の空間はもちろん反射的です。

反射的でない例も基本的なものばかりです。 がそれにあたる[2]

バナッハ空間が反射的であることと、その双対が反射的であることは同値になります[2]。反射性は双対をとる操作で保たれる性質です。

反射的ヒルベルト空間、、有限次元
反射的でない

双対をとって を作る

もう一度とって を作る

が全射かどうかで反射性が決まる

quiz で確かめる

が完備でないとき、双対空間 はどうなりますか。

  • も完備でない
  • は必ずバナッハ空間になる
  • が定義できない
__RESULT__

にあたり、値域の が完備なので完備になります。定義域の完備性は要らない。双対をとる操作が、完備性を補ってくれる形です。

よくある誤り

代数的双対と位相的双対を区別しない。無限次元では大きく違います。
に自然な同型があると思う。有限次元でも基底の選び方に依存します。
の双対が だと思う。評価汎関数が入らないので、ラドン測度まで広げます。
が単射でない場合があると思う。ハーン・バナッハの定理から常に単射です。
がいつも一致すると思う。 は反射的でありません。
の双対が だと思う。 より真に大きい空間になります。
双対をとるのに の完備性が要ると思う。 は無条件でバナッハ空間です。

参考文献

Dual space. Wikipedia(英語).
Reflexive space. Wikipedia(英語).
J. K. Hunter, B. Nachtergaele. *Applied Analysis*, Chapter 5: Banach Spaces. University of California at Davis.
Dualraum. Wikipedia(ドイツ語).
ベクトルを入れると数がひとつ返る。線形汎関数はそれだけの道具で、有界なものを全部集めたものが双対空間です。等高線の束としての幾何から入り、$X$ が完備でなくても $X^*$ がバナッハ空間になること、有限次元での双対基底、$\ell^p$ の双対が $\ell^q$ になることを見ます。$C[a, b]$ の双対にラドン測度まで要ること、ハメル基底で作る非有界な汎関数、二重双対への埋め込みと反射性まで。