ハーン・バナッハの定理は、有界線形汎関数の拡張に関する定理です。双対空間の理論において中心的な役割を果たします。
定理の主張(ノルム空間版)
をノルム空間、 を部分空間とします。 上の有界線形汎関数 に対して、 全体に拡張された有界線形汎関数 で
を満たすものが存在します。
つまり、部分空間上の汎関数はノルムを保ったまま全空間に拡張できます。
実ベクトル空間の場合(劣線形汎関数版)
より一般に、次の形で述べられます。
を実ベクトル空間、 を劣線形汎関数(, ())とします。部分空間 上の線形汎関数 が ()を満たすならば、 上の線形汎関数 で
を満たすものが存在します。
重要な系
汎関数の存在
がノルム空間で ならば、, を満たす が存在します。
点の分離
がノルム空間で ならば、 となる が存在します。
最初の系は、 上で と定義し、ハーン・バナッハで拡張することで得られます。
応用:部分空間と閉包
ノルム空間 の部分空間 に対して、次が成り立ちます。
ハーン・バナッハの定理によって が十分に「大きい」ことが保証されるため、このような特徴づけが可能になります。
注意
ハーン・バナッハの定理の証明には選択公理(またはツォルンの補題)が必要です。構成的に拡張を与えるわけではありません。