ヒルベルト空間の定義と内積

ヒルベルト空間は内積が定義されたバナッハ空間であり、量子力学や偏微分方程式の理論で中心的な役割を果たします。

内積の定義

複素ベクトル空間 上の写像 が次の条件を満たすとき、内積 といいます。

線形性(第1成分)

共役対称性

正値性

かつ

実ベクトル空間の場合は、共役対称性が単に となります。

内積から定まるノルム

内積から でノルムが定義できます。これがノルムの公理を満たすことは、次のコーシー・シュワルツの不等式から従います。

等号成立は が線形従属のときに限ります。

ヒルベルト空間の定義

内積空間が、その内積から定まるノルムに関して完備であるとき、ヒルベルト空間 といいます。

, 標準内積
内積
内積

平行四辺形の法則

内積から定まるノルムは、次の 平行四辺形の法則 を満たします。

逆に、この法則を満たすノルムは内積から定まることが知られています(ヨルダン・フォン=ノイマンの定理)。

)や (sup ノルム)はこの法則を満たさないため、ヒルベルト空間ではありません。

内積の復元

ノルムが平行四辺形の法則を満たすとき、内積は 偏極恒等式 で復元できます。

実空間では虚数単位の項が消えます。