内積がゼロになる相手を全部集めると閉部分空間になる
ヒルベルト空間 の 2 つのベクトル が直交するとは、内積が になることをいいます[1]。記号は 。
ノルムだけの世界には「垂直」がありません。内積が入ってはじめて、角度という言葉が使えるようになります[4]。
直交するとピタゴラスの定理がそのまま成り立ちます。
展開したときに真ん中の項が消える、というだけの話。有限個に増やしても同じで、互いに直交する について和のノルムの二乗が各項の二乗和になります。
直交補空間
部分集合 に対し、 のすべての元と直交するベクトルの全体を直交補空間といいます[1]。
が部分空間でなくても定義できます。ところが のほうは、いつでも閉部分空間になる。
線形性は内積の線形性から出ます。閉じていることは、内積が連続だから。 で なら、極限でも です。
を作る操作は、 の張る閉部分空間しか見ていません。 が成り立ちます[4]。

交わりは原点だけ
が部分空間なら、 です。
が両方に属すると となり、内積の正定値性から 。ここが「垂直」という言葉の効くところ。
が閉部分空間なら、もっと強い分解が成り立ちます[3]。
どの も (、)と一意に書ける、という主張です。 が閉であることが要ります。
2 回とると閉包になる
を作ると、もとに戻るとは限りません[4]。戻るのは閉部分空間のときだけ。
が閉部分空間なら 。閉でなければ、閉包まで広がったところで止まります。
ここから稠密性の判定が出ます。部分空間 が稠密であることと、 であることが同値。
近似の議論でよく使う形です。「この関数系で全部を近似できるか」を、「この系すべてと直交するものが しかないか」に置き換えられます。
と直交するものを全部集める
それが閉部分空間 になる
もう一度とると の閉包に戻る
例:偶関数と奇関数
を、偶関数の全体 と奇関数の全体 に分けます[3]。
右辺の第 1 項が偶、第 2 項が奇。積分すると偶関数と奇関数の積が奇関数になるので、内積は です。
したがって で、 という直交分解になります。日常的に使う偶奇分解が、そのまま直交分解の例。
例:区間で切る
を可測集合とし、 とします[3]。
は の上で になる関数の全体です。台が交わらないので内積が になる。
分解は指示関数を掛けるだけ。 が、そのまま直交分解になります。
対称性で分ける。 を使う操作で射影が書ける
場所で分ける。指示関数を掛ける操作が射影になる
直交系を作る:グラム・シュミット
1 次独立なベクトルの列から、正規直交系を組み立てられます[4]。
とし、以下は前までの成分を引いてから正規化する。
引いている量は、 をすでに作った空間へ射影したものです。残りが直交補空間へ落ちる、という仕組み。
無限個でも同じ手続きが使えます。可分なヒルベルト空間なら、可算な稠密集合から出発して正規直交系が作れる[2]。
直交系は 1 次独立
正規直交系 は自動的に 1 次独立です。有限個の 1 次結合が になるとして、 と内積をとれば係数が になる。
逆は成り立ちません。1 次独立でも直交とは限らず、そこを直す手続きがグラム・シュミットです。
直交していると、係数を内積ひとつで読み出せます。
の両辺に を当てると、他の項が消えて だけが残る。
quiz で確かめる
が閉でない部分空間のとき、 は何になりますか。
- そのもの
- の閉包
- 全体










M⊥ はいつでも閉部分空間で、2 回とると M の張る閉部分空間に戻ります。M が閉でなければ、閉包まで広がったところで止まります。