射影定理と最良近似

射影定理はヒルベルト空間の閉凸集合への最良近似の存在と一意性を保証します。直交射影の理論的基礎を与えます。

定理の主張(閉凸集合版)

をヒルベルト空間、 を空でない閉凸集合とします。任意の に対して、一意の が存在して

が成り立ちます。この への 最良近似 といいます。

閉部分空間の場合

が閉部分空間のとき、最良近似 は次の条件で特徴づけられます。

つまり (すべての )です。

この条件を満たす は直交射影 に他なりません。

証明の概略

とおき、 となる列 をとります。

平行四辺形の法則を使うと

の凸性から なので です。ここから がコーシー列であることがわかり、完備性から極限 が存在します。

一意性も平行四辺形の法則から従います。

バナッハ空間との違い

一般のバナッハ空間では、閉凸集合への最良近似が存在しないことや、存在しても一意でないことがあります。平行四辺形の法則がないためです。

直交射影の性質

は線形、有界()、冪等()、自己共役()を満たします。

応用例

において、三角多項式全体 への最良近似は、フーリエ級数の部分和です。

関数 への射影は

となります。これが ノルムの意味で を最もよく近似する 次以下の三角多項式です。