有界作用素を「拡大率に上限がある写像」として理解する

有界作用素の「有界」とは、出力の大きさが入力の大きさに比例して抑えられるという意味です。言い換えると「拡大率に上限がある」ということです。

有界性の意味

線形作用素 が有界であるとは、ある定数 があって

がすべての に対して成り立つことです。

これは「 はベクトルの長さを最大でも 倍にしかしない」という意味です。 の最小値が作用素ノルム です。

行列による例

上の線形写像を行列で考えます。

この行列は 方向に2倍、 方向に3倍します。どんなベクトルも最大で3倍にしかならないので、 です。

有限次元では、すべての線形写像が有界になります。行列は常に有界作用素です。

無限次元での違い

無限次元では、有界でない線形作用素が存在します。微分作用素 , を考えます。

とすると ですが、 なので です。

拡大率がいくらでも大きくなるので、 は有界ではありません。

有界性と連続性

線形作用素では「有界」と「連続」が同じ意味になります。

有界 → 連続

より、 なら です。

連続 → 有界

原点で連続なら、 のとき となる が存在します。線形性から が従います。

有界作用素だけを考えるのは、連続写像だけを考えるのと同じことです。連続性がないと解析学的な議論が困難になるため、有界作用素が基本的な研究対象となります。