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ℓp 空間の包含関係と完備性(ℓ2 だけが内積から来る理由)

を で測ると、 が発散します。 で測れば で有限。

同じ数列でも、 を替えると入る空間と入らない空間に分かれる。 が大きいほど条件はゆるくなります。

空間の定義

実数列 に対して、 のときのノルムを次で定めます。

これが有限になる数列の全体が です。 では、和のかわりに上限をとる。

有界な数列の全体が になります。

例: を 3 通りで測る

が発散し、
で
で

が から へ動いただけで、外にいた数列が中に入りました。

を大きくすると空間は広くなる

なら が成り立ち、この 1 本から包含 が導けます。

とし、 とおきます。 だから、どの成分も 、つまり 。

以下の数は、指数を大きくすると小さくなります。 なので で、和をとると次のようになる。

です。 に戻せば になる。

右辺が有限なら左辺も有限。だから の数列は にも入ります。

でも同じ形になる。 から が導けます。

例:すき間に入る数列

包含は真です。 とおくと、 には入らないのに には入る。

乗すると で、和は発散します。 乗すると になり、 だから収束する。

なら 、 なら です。冒頭の数列は、 と のすき間にいました。

だけが内積から来る

には内積が入ります。

コーシー・シュワルツの不等式から和は絶対収束し、 になる。

ほかの では、この形が置けません。内積から来るノルムは中線定理 を満たすので、 と で試します。

、 で、どちらも ノルムは 。左辺と右辺を並べます。

等しくなるのは 、つまり のときだけです。 では左辺が 、右辺が で合わない。

中線定理が破れればノルムは内積から来ません。 のノルムを与える内積は、 以外には存在しない。

は完備

のどれでも は完備です[1]。有限 で確かめます。

を のコーシー列とします。成分ごとに が成り立つ。

を止めると は のコーシー列です。 は完備だから極限が決まり、それを とおく。

次に、この が行き先になることを見ます。 をとり、 なら となる を選ぶ。

どの についても、有限個の和は次で押さえられる。

とすると、左辺は になる。 は何でもよいので、無限和にしても を超えません。

つまり です。 と書けば、右の 2 つがどちらも の元だから も に入る。

行き先が同じ空間の中にあり、 はバナッハ空間になります。

双対空間

のとき、 上の有界線形汎関数は の数列との内積の形に書けます[2]。

空間双対空間
()()

の双対は 自身、 の双対は です。 と は、足して になる逆数の組で対応する。

表に がないのは、そこだけ形が違うためです。 の双対は より真に大きく、 の数列では書けない汎関数があります。

が入るのはどれですか。

__RESULT__

乗すると になり、和が収束するのは 、つまり のときです。 には入り、 と には入りません。

のノルムを与える内積が存在しないのは、なぜですか。

  • が完備でないから
  • と で中線定理が破れるから
  • の双対が でないから
__RESULT__

左辺が 、右辺が で食い違います。 は完備ですし、双対が自分自身でない空間にも内積が入ることはあるので、ほかの 2 つは理由になりません。

まちがえやすい点

が大きいほど空間が狭くなると思う。数列の空間では逆で、広くなります。
有限次元の感覚で と を同じ集合だと思う。住んでいる数列が違います。
のどれにも内積が入ると思う。ノルムを与える内積があるのは だけです。
の双対を だと思う。表の対応は でだけ成り立ちます。

を動かすと、ノルムの値だけでなく空間の中身が入れかわります。どこまでゆるめるかを が決めていて、 のところにだけ内積が乗る。

参考

Christian Clason. *Einführung in die Funktionalanalysis*. Universität Graz.
J. K. Hunter, B. Nachtergaele. *Applied Analysis*, Chapter 5: Banach Spaces. University of California at Davis.
$x = \left(1, \frac{1}{2}, \frac{1}{3}, \dots\right)$ は $\ell^2$ に入りますが $\ell^1$ には入りません。$p$ が大きいほど条件はゆるみ、$\|x\|_q \le \|x\|_p$ から包含 $\ell^p \subset \ell^q$ が導ける。すき間を埋めるのは $x_n = n^{-1/p}$ で、$p$ 乗すると $\sum 1/n$ になって発散する。$e_1$ と $e_2$ で中線定理を計算すると左辺が $2^{1+2/p}$、右辺が $2^2$ になり、等号は $p = 2$ のときだけ成り立ちます。完備であることの証明と、双対が $\ell^q$ になる対応まで。